物価動向は日銀の追加緩和を正当化するほど弱いーSG証券チーフエコノミスト・会田氏

物価動向は日銀の追加緩和を正当化するほど弱いーSG証券チーフエコノミスト・会田氏
物価動向は日銀の追加緩和を正当化するほど弱いーSG証券チーフエコノミスト・会田氏(写真=Thinkstock/Getty Images) (ZUU online 編集部)

 9月の消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.1%と2ヶ月連続(8月同-0.1%)の下落となり弱い結果となった。10月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮食品)も-0.2%と、4ヶ月連続(9月同-0.2%)の下落となり弱い。確かに、これまでの円安によるコストプッシュの価格転嫁の進展が、物価の押し上げに働いているのだろう。

 しかし、昨年後半から年初までの原油価格の急落の影響が前年同月比で強く残っており、2%の物価上昇の日銀のコミットメントに反し、コアCPI前年同月比は下落している。7月以降、原油価格は再び下落してしまい、その後のリバウンドも弱い。

 4-6月期の実質GDPのマイナス成長の大きな原因となったのが消費の弱さであった。昨年4月の消費税率引き上げによる消費者心理の萎縮がまだ残ってい中で、食料品を中心とした値上げが続き、消費者が防衛的になってしまっているようだ。

 2017年4月に再度の消費税率の引き上げがあることも、消費者心理を抑制している可能性もある。今後の更なる値上げが需要を大きく減少させるリスクを企業は感じ始め、値上げに慎重になっていくだろう。
 
■物価上昇のモメンタムは日銀の想定よりかなり弱い

 黒田日銀総裁は、「物価の基調は着実に高まってきている」と述べている。日銀は、これまでの円安や内需回復の影響が強い食料品の値上げの動きを強調して、消費者物価指数(除く生鮮食品とエネルギー)で物価上昇率が順調に高まってきていると指摘している。しかし、需要拡大がついてこなければ、コストプッシュのみによる物価上昇は継続しないだろう。

 実際に、その見方のよりどころとなっていた設備・雇用の不足感を基にした日銀推計の需給ギャップは、4-6月期に-0.7%(GDP対比)となり、3四半期ぶりの需要不足となってしまっている。そして、新興国経済の弱さや人民元切り下げなどにより、被服と食料を中心とした値上げが鈍くなる可能性もある。前年同月比はゼロ%近辺での推移からしばらくは脱することができず、物価上昇の加速はしばらく感じられないだろう。

 原油価格の下落の影響が剥落していく1-3月期以降は、前年同月比は持ち直すとみられる。しかし、現在の物価の弱さは原油価格下落だけが原因ではなく、2016年度前半までに+1%程度まで戻るのが精一杯であり、物価上昇のモメンタムは「2016年度前半頃」までの2%到達という日銀の想定よりかなり弱いとみられる。
 
 グローバルなマーケットと景気の不確実性が高まったままであれば、企業の収益見通しが不安定になることにより、来年の春闘での賃金引上げ幅も小さくなり、2016年度中に需要拡大により2%の物価上昇を達成するというシナリオが不可能になるリスクが高まる。

■追加金融緩和見送りは日銀コミットメントに対する信任低下のリスクに

 アベノミクスの政策は、期待に働きかけて、企業活動を押し上げ、その力を使ってデフレ完全脱却に向かう枠組みである。景気の気(センチメント)の部分が、政策などに支えられて堅調なことが、デフレ完全脱却への動きの原動力となっている。

 堅調な景気の気の部分に対して実体経済や物価の動きが弱いにもかかわらず、政府が補正予算による景気対策、日銀が追加金融緩和に動かず、2%の物価目標達成までの果断な政策コミットメントが疑われてしまうと、マーケットと企業の失望などにより期待が悪化し、デフレ完全脱却への原動力が失われてしまうリスクとなろう。

 アベノミクスは期待に働きかける政策であることを考えれば、2013年4月の量的・質的金融緩和で大軍を投入した後は、グローバルなマーケットの不安定化や拙速な消費税率引き上げなどにより、期待が悪化する恐れがある時は、機動的に戦力を逐次投入し、無尽蔵な大軍の力で、敵の戦意(デフレ期待)を失わせ、期待を好転させ続ける必要がある。

 10月30日の日銀金融政策決定会合では、展望レポートで成長率・物価シナリオが下方修正され、「2%の物価安定の目標」を「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」には景気回復と物価上昇のペースが弱すぎることを確認し、追加金融緩和が実施されると考える。そして、目標の達成時期を「2016年度前半頃」から、2017年度の前半も視野に入れた「2016年度後半頃」へ正式に後ずれさせ、その実現をより確かにするための追加金融緩和という位置づけを明確にするだろう。

 同日の日銀金融政策決定会合に関して、追加緩和の是非を検討という報道があったことは、日銀執行部は緩和提案をする考えがあることを示していると言える。政策委員会で過半数を取れる確信が持てるかが、結果を左右するとみられる。
 
 確信が持てれば、緩和提案がなされ、追加緩和が決定すらだろう。一方、確信が持てなければ、総裁提案が否決されることは望まないため、提案は見送られることになろう。もし、緩和の必要性があるという認識にも関わらず、緩和が見送られれば、デフレ完全脱却への政策調整は躊躇しない日銀のコミットメントに対する信任が低下してしまうリスクとなろう。
 
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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