「リクルート事件」からITカンパニーへ 平成生まれの働きがいランキング上位独占

 平成生まれの20代を対象にした、企業の働きがいランキングが発表され、リクルートグループが上位3位を独占、トップ10に4社ランク入りした。

 1~3位は順にリクルートライフスタイル(『ホットペッパー』や「ケイコとマナブ」など)、持株会社リクルートホールディングスリクルートキャリア(「リクナビ」など運営)となっている。9位には「ゼクシィ」「受験サプリ」などを手掛けるリクルートマーケティングパートナーズが食い込んだ。

 この調査「平成生まれ版:働きがい企業ランキング」は会社評価の口コミ調査サイト「Vorkers」が行ったもので、社員として1年以上在籍した平成生まれの社員・元社員が対象。「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」の5項目を5段階で数値化し、項目ごとの平均値を合計したポイントで順位を決めた。

■「リクルート事件」の時代、今は昔

 リクルートグループがほかの上位ランク入り企業と比較して目立つのは「20代成長環境」の高評価。リクルートライフスタイルの女性社員は「早いうちから1人前とみられ一人で行動させられるため、ゼロからの成長のスピードは他の会社で過ごすほうと比べると圧倒的に早い」と投稿している。

 同社の社名を聞くと、「リクルート事件」を思い浮かべる人も多いだろう。なぜそんな会社が若者からここまで支持されるようになったのだろうか。

 1960年創業のリクルート。かつては就職情報誌など発行する多くの自社媒体の雑誌に有料の記事広告枠を設け、猛烈な営業活動で「枠」を販売し収益の柱としていた。社員は多くが夜遅くまで残り、休日もいとわず働き、目標売り上げを達成するといったイメージだった。

 同社で全社MVPや年間最優秀経営者賞などを獲得し、現在は経営コンサルティング会社を経営する小原瑞穂氏は、ウェブメディアへの取材で、同社は昔、学生間で「人をボロ雑巾になるまで働かせる」と噂されていたと明かしている。

 しかし、1988年のリクルート事件がきっかけとなり、社会的信用を失ったリクルートは翌89年「ニューリクルートへの提言」を実施する。同社ウェブサイトには、「リクルート事件によって直面した厳しい現実に対して「経営陣がなんとか立て直すだろう」と待っているのではなく、社員一人ひとりが当事者として立ち向かい、考え、提案し、自ら実行していくことで、新しいリクルートになっていく契機としたい、という意思を込めての取り組み」と書かれている。

■故・江副浩正氏の言葉に見る昔からあるリクルートの強さ

 もともと若手社員でも裁量が与えられる環境は、どのようにして生まれたのだろうか。リクルート創業者の故・江副浩正氏はインタビューで、「高い業績を上げた人をどんどん組織のピラミッドの上に上げていく。人望があるより、業績を上げた人が昇進していく」と説明。そのうえで、「一種、公平じゃないですか。恣意的な判断が入らない」などと語っている。

 またある講演会では社内報について「経営批判もどんどんやるんですね。悪い情報もどんどん載せるということが、御用社内報ではないことにつながる」などと話している。こうした自社批判までもできる仕組みがあることがリクルートの強みなのかもしれない。

■ダイバーシティに取り組み 執行役員クラスに女性を登用しているが……

 リクルートをさらに働きやすい職場にしたのは、2006年から始めたダイバーシティへの取り組みだ。ダイバーシティは多様性のことで、社員一人ひとりが性別などの違いに関係なく、活躍できる環境づくりを指す言葉だ。

 長時間労働の改善から始め、2007年からは事業所内保育園の設置など家庭と職場の「両立支援」をテーマに環境整備を実施。2010年以降は女性を管理職や執行役員クラスに登用する「活躍支援」が重点テーマだ。

 2012年のグループ再編後もダイバーシティの流れは各社に引き継がれている。こうして整えられた女性に働きやすい職場環境は、同時に男性にも働きやすい職場になり、リクルートグループを若い社員から広く支持される人気企業に押し上げたといえる。

 とはいえ、上場まで果たしたリクルートだが、ホールディングスの役員には一人も女性、外国人取締役がいない。まだまだ改善する余地はありそうだ。

■営業の会社からITカンパニーへ

 2014年にはついに上場を果たし、今ではグループ連結の売上高は1兆円を超えている。この規模になってなお成長を続けられている背景にあるのが、「ITカンパニー化」だろう。リクルートテクノロジーズがグループ内主要事業会社の事業を、IT、ネットマーケティングのチカラを使って推進する役割を果たしている。

 もともと営業力や、紙媒体の強さで知られていたリクルートだけに、ネット時代に対応できるのかどうかは注目されていた。実際、2000年代後半には主要ビジネス誌の記事でネット時代に同社が勝ち残れるのか検証した記事も掲載されていた。

 その意味では、同社は見事にIT、ネット時代に対応して新たな会社に生まれ変わったといえる。同社のITサービスの中で最近注目されたものだけでも「受験サプリ」、店舗業務支援アプリ「Airレジ」などいくつもある。

 またビッグデータが注目されている現在、リクルートテクノロジーズを中心にグループではさまざまなライフイベントに関する有用な情報を、効果的に消費者に届ける仕組みづくりにも注力している。たとえば『ゼクシィ』の読者に数年後に出産・育児情報を送るといったことも、ビッグデータの活用で可能になる。

 これらの例からも分かるITカンパニー化は、若者から大きく支持されている要因といえるのではないだろうか。

■「自ら機会を創りだし、機会によって自らを変えよ」の精神

 こうした変化を遂げている一方で、変わらない点もあるようだ。

 『リクルートという奇跡』の著書で、江副氏の下で長く働いた藤原和博氏はリクルートの最大の強みを「リクルートマンシップ」といい、「自ら機会を創りだし、機会によって自らを変えよ」の精神が受け継がれていることと言い切る。これは1968年に江副浩正氏によって作られた社訓だが、リクルート事件を経て、1989年に公式な社訓ではなくなった。

 今なお生きているこの精神があってこそ、同社はビジネスの領域を変化、拡大して成長を続けることで大きく変ぼうを遂げることができたのかもしれない。(ZUU online 編集部)

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2015年11月15日の経済記事

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