金融緩和の効果拡大には追加緩和より財政政策かーSG証券チーフエコノミスト・会田氏

金融緩和の効果拡大には追加緩和より財政政策かーSG証券チーフエコノミスト・会田氏
金融緩和の効果拡大には追加緩和より財政政策かーSG証券チーフエコノミスト・会田氏(写真=Thinkstock/Getty Images) (ZUU online)

 11月18、19日の日銀金融政策決定会合は政策の現状維持となった。「2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで」、マネタリーベースを「年間約80兆円」増加させる現行の緩和政策を続ける。

 10月の展望レポートで成長率・物価予想が大きく下方修正され、2%の物価目標到達時期も2016年度前半から後半へ先送りした中で、日銀は追加金融緩和を行わなかった。目標を「できるだけ早期に実現する」には景気回復と物価上昇のペースが弱すぎることは明白であり、日銀のコミットメントは有名無実化している。潜在成長率(0.5%程度)を下回り、需要不足幅が持続的に拡大しない限り、目標はいずれ達成することになり、追加金融緩和は必要ないというスタンスのように見える。
 
 成長率・物価予想の大幅な下方修正でも追加緩和をしなかったことで、現状では、追加緩和のそれより強いロジックを作るのは困難になり、追加緩和のハードルは高くなった。

 グローバルな景気・マーケットの不安定化が続き、株価が大きく下落するとともに円高(企業の想定レートであるドル円で115円を下回る)が進行し、成長率が潜在成長率を下回ることになり、失業率が悪化するような状況になれば、企業心理を支えるためにも、追加緩和が決定される可能性はあるが、今のところその可能性は小さくなったとみるべきだろう。

 7-9月期の実質GDP成長率の2四半期連続のマイナスの結果(前期比年率-0.8%)は、展望レポートの日銀の見通しに既に織り込まれていたと考えられる。11月の日銀の景況判断は「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている」とされ、変更はなかった。
 
■求められるのはネットの国内資金需要拡大

 今回日銀金融政策決定会合で注目されるのは、予想物価上昇率について「このところ弱めの指標もみられているが」という文言が付け加えられたことだ。「やや長い目で見れば、全体として上昇している」との判断が、予想物価上昇率の弱さにもかかわらず追加緩和をしなかった理由であろうが、そうなるとよほど大きな予想物価上昇率の下落がないかぎり、追加緩和のロジックがつくれないことになってしまったことになる。

 日本の内需低迷とデフレの長期化は、恒常的なプラスとなっている異常な企業貯蓄率(デレバレッジ)に対して、財政支出(赤字)が十分ではなく、企業貯蓄率と財政バランスの和(ネットの国内資金需要)がゼロと、国内の資金需要・総需要を生み出す力が喪失していたことが主な原因である。
 
 このネットの国内資金需要が復活し、資金が循環・拡大を始めたことが、今回の景気回復がこれまでよりデフレ完全脱却につながる可能性が高い理由である。このネットの国内資金需要(20兆円程度)をマネタイズする量が出ていればデフレ完全脱却へ向けた金融政策は十分で、日銀のマネタリーベースを「年間約80兆円」増加させる政策はこれを大きく上回る。

 現行の金融緩和の効果を強くするのは、日銀の追加金融緩和ではなく、財政政策によるネットの国内資金需要の拡大であると考えられる。マネタイズすべきものが大きければ大きいほど量的金融緩和の効果も大きくなるが、2000年代のようにネットの国内資金需要が消滅していれば、量的金融緩和の効果は限定的になってしまう。

 アベノミクスは、企業を刺激して、企業活動の回復の力を利用してデフレ完全脱却を目指すものであるので、まず必要なのはマイナスであった名目GDP成長率をプラスにして、企業が前を向いてリスクテイクができる経済環境を整えることが第一段階だ。

 復活したネットの国内資金需要をマネタイズする形の金融緩和の効果もあり、名目GDP成長率が長期金利をバブル期以来はじめて持続的に上回るようになっており、本格的なリフレ局面の入り口に来ている。

 2016年初の通常国会では、デフレ完全脱却への動きを促進する補正予算が決定され、経済政策へのコミットメントを国民に示し、まずは不安感を払拭しようとするだろう。拙速な消費税率引き上げと税収の大幅な増加などにより、財政バランスは急速に改善してしまい、ネットの国内資金需要が縮小し、金融政策の効果が弱くなってしまっている現在、しっかりとした規模と内容を伴う財政政策の実施が重要になってきている。
 
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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