今の相場が「リーマン前と類似」している理由とは?

今の相場が「リーマン前と類似」している理由とは?
今の相場が「リーマン前と類似」している理由とは?(写真=Thinkstock/Getty Images) ((ZUU online))

 世界の株式相場は8月後半の中国株急落による「中国ショック」を乗り切り、8月来高値を更新する市場が増えてきている。一方で、原油、金などの主要商品は数年ぶりの
安値に沈んでいる。ハイイールド債(投資非適格債)は売られたままだ。リーマンショック時を連想させる展開となってきている。

■原油40ドル割れの影響

 WTIの原油先物が10月17日一時40ドルを割った。40ドル割れは7年ぶり。2014年7月には100ドル以上していたので1年4ヶ月で60%以上、下げたことになる。WTI原油先物市場の月間取引高は約8400億ドルに達し、ニューヨーク株式市場の月間取引高である約1.5兆ドルの半分に相当するほど巨額である。原油安が直撃している企業があるはずだ。

 11月5日に三菱商事が、2016年3月期連結当期利益の見通しを3600億円から前期比25%減の3000億円に下方修正した。資源価格が予想以上に下落していることが下方修正の要因。下方修正した600億円の約3分の1は資源関連によると発表している。同時発表の2015年4-9月期当期利益は前年比39%減の1549億円。液化天然ガス(LNG)関連を中心とするエネルギー事業が、投資先からの配当や持ち分利益の落ち込みにより前年同期比で790億円減益となったことが響いている。

■グレンコア・ショックの不透明性

 世界に目を向けると、スイスの資源商社グレンコアの「グレンコア・ショック」が世界を震撼させたばかりだ。9月28日に同社の破綻リスクが浮上し、株価がロンドンで29%下まで売り込まれた。同社の下げがリスクオンとなり、資源株安だけでなく世界株安を呼び込み、NYダウは312ポイント安となった。

 商品先物や非鉄金属のトレードで知られるグレンコアは、時価総額では三菱商事を上回る世界最大の資源商社だ。過去10年にわたり中国主導の資源ブームに乗って上場、イギリスのFT100指数にも組み入れられた。しかし資源ブームが終焉した現在、かなり厳しい状況にあると見られている。

 特に同社が世界取引の50%を占めるという銅の取引と石油関係のデリバティブの損失が大きいとの見方が強い。グレンコア・ショックの前に、同社の株価は年初来77%下げ、2011年の上場来最安値となっていた。

 9月28日、南アフリカの大手銀インベステックが商品先物価格の総崩れを背景にグレンコアに対する懸念を表明したのがきっかけで株価は急落した。グレンコアの債務不履行に備えた金融派生商品であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が急騰し、保証料が7%を超えた。

 CDSが7%というのは、5年以内の倒産確率が50%以上ということ。グレンコアは商品の取引量を開示しているが、どのような種類の取引をしているかは明らかにしていない。取引部門はブラックボックスであり、その不透明性が市場での不安をかき立てている。

 グレンコアの債務は約300億ドルだがそれ以外に大量の債務が簿外にあるのではないかとの観測から、グレンコア債の利回りは既にジャンク債並みの水準となっている。エネルギー関連のデリバティブで巨大な損失を不正会計したことで2001年に破綻したエンロンの想起させているようだ。

 ただ、グレンコア・ショックの翌9月29日には多くの株式アナリストが資産売却や増資によってバランスシートが改善している可能性を挙げたことで、29日には株価は大幅反発。29%の下げは4営業日で完全に埋めてしまった。ただ、その後も株価は冴えない展開が続いており、現在でもグレンコア・ショック前より低いレベルで商いされている。

■リーマンショックもきっかけはCDS

 CDSというと、思い出すのはリーマショック時に、米国銀行のCDSが急騰したことや、ギリシャ危機に欧州銀行のCDSが急騰したことだ。

 リーマンショックは、根本的な原因は不動産バブルだった。バブルに乗り、サブプライムローンという低所得者向けのローンが大量に残高を増やした。利回りが高かったことから、その債権は転売され、仕組み債である債務担保証券(CDO)などに大量に組み入れられた。そしてその破綻のきっかけとなったのがCDSだった。CDSの急騰がCDOの急落となり、保有する金融機関に多大な含み損を生んだのだ。

 その状況は、現在の資源関連の含み損に似ているかもしれない。シェール関連企業を中心に、新興エネルギー企業はハイイールド債でかなりの金額を資金調達した。それらのハイイールド債は、マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)というREITのエネルギー版といわれるファンドに大量に組み入れられた。MLPの利回りはREITを上回り世界で大量に販売された。このファンドを金融機関や投信が保有している。

 グレンコアのCDSの急騰が、各付け企業の低い企業のハイイールド債(投資非適格級のジャンク債)の下落を呼び、社債スプレッドが拡大した。投資的格級で最低のBBB格とジャンク債で最上級にあたるBB格の差は、2009年以来で最大を記録している。ジャンク債市場は1.3兆ドルの規模だ。

■ハイイールド債が株、債券に劣後するのは2000年、2007年以来

 ハイイールド債市場では「SPDRバークレイズ・ハイ・イールド債ETF(JNK)」の価格が4年ぶりの安値水準に下落している。売ろうとする投資家は山ほどいるが、買いたい投資家はほとんどいない状況とのことだ。金融機関による与信枠の再評価が進む中で、主要発行体であるシェール関連企業の大半の与信枠は今後削減されると見られている。

 アセットクラスでみれば、ハイイールド債の性格は株式と投資適格債の間に位置するものである。株の上昇時には株には負けるが債券よりはいいパフォーマンスになり、債券の上昇時には債券には負けるが株よりはいいパフォーマンスになるのが通常だ。現在は、株にも債券にもアンダーパフォームする状況となっており、この状況が起きたのは2000年と2007年であるという。ITバブル崩壊時とリーマンショック時だ。

■リーマンショック時も株式市場はサブプライムを先に織り込んだ

 リーマンショック時を振り返ってみよう。2007年中頃にはサブプライムの問題はすでに表面化しており、株式市場は2007年7月末から2008年8月中旬にかけて高値圏から急落、その後で10月にはいったん値を戻した。株式市場はサブプライム懸念を織り込んだとみられていた。

 しかし、11月には再び安値を更新すると、2008年3月ベアスターンが破綻し、9月にリーマンが破綻、リーマンショックとなり2009年まで長いダウントレンドとなったのだ。

 今回の株の戻りも、リーマンショック時の2007年10月の戻りに似ていないとは言い難い。「中国ショック」「グレンコア・ショック」の悪材料をこなしいったん株価は戻っているが、今後大きな悪材料が顕在化してくる可能性を見ていた方がいいかもしれない。

平田和生(ひらたかずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンド、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

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