秒読みの米利上げ「ヤバイ」新興国はどこ?

秒読みの米利上げ「ヤバイ」新興国はどこ?
秒読みの米利上げ「ヤバイ」新興国はどこ?(写真=Thinkstock/Getty Images) (ZUU online 編集部)

 米国の利上げがいよいよ秒読み段階に入っている。中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が最も重視する雇用情勢の11月の統計数字が強かったことでお膳立てが整った。15~16日に開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)で判断が下される。

■米利上げは秒読み段階

 世界経済の中心である米国の利上げはこれまでも様々な形で他国に影響を及ぼしてきた。とくに新興国経済への影響は大きく、過去には1997年のアジア通貨危機の引き金となり、2008年のリーマン・ショックの遠因ともされている。
 
 直近では、一昨年5月に当時のFRB議長バーナンキ氏が金融緩和策(QE3)の縮小を示唆しただけで新興国通貨は大幅に下落、日経平均株価も1日で1100円以上急落した。

 今年も米利上げ観測の高まりで年初からドル高、新興国通貨安が進んだ。夏場にはギリシャ債務問題が再燃、中国の景気急減速懸念も加わって世界の株式市場が大きく動揺し、10月初旬時点でマレーシア、南アフリカ、トルコの通貨は対ドルで年初から2割以上低下、ブラジル・レアルに至っては3割以上下落した。
 
 その後市場が落ち着きを取り戻し、これら新興国通貨も大きく値を戻したが、直近では中国人民元が4年4ヶ月ぶりの安値を記録、南ア・ランドも今月だけで8%も下落している。

■ソブリン・リスクは低いが企業負債急増が懸念材料

 それでも、米利上げにより新興国の破綻可能性、いわゆるソブリン・リスクが高まると見る専門家は少ない。その最大の理由はアジア危機以降、各国の外貨準備高が大きく積み上がっていることだ。2000年末から昨年末までの14年間で準備高は中国が23倍、ロシア14倍、インド8倍、南ア6倍など急拡大している。
 
 一国の経済規模を表すGDPに対する割合で見てもこれらの国は14~27%と、英国やドイツの4~5%を大きく上回る。これ以外にも、アジア通貨危機の反省から各国が「チェンマイ・イニシアチブ」など危機時に外貨を融通し合う通貨交換(スワップ)協定を結ぶなど安全網の強化が進んでいる。

 このように、一国が経済破綻する可能性は低くなっているが、問題は新興国の企業部門の負債が急膨張していること。そう警鐘を鳴らすのは国際通貨基金(IMF)である。9月末に発表した世界金融安定報告によると、主要新興国の金融機関以外の企業の借金は2014年に約18兆ドル(1ドル120円換算で2160兆円)と、10年前の約4兆ドルから4.5倍に急増し、これらの国のGDP総計に対する比率も26ポイント上昇して75%近くになっている。

 この全てがドル建てというわけではないが、米国の緩和時代にドルが世界中にあふれ出したことからもその比率は高く、米国の利上げにより金利負担が増えると見込まれる。さらに自国通貨がドルに対して下落すれば、輸入物価の上昇でインフレ率が上がり、金融引き締めで国内金利が上昇するだけにとどまらず、対外債務の絶対額が通貨下落分だけ膨張する。

■「ヤバイ」新興国は、ブラジル、トルコ、南ア

 IMFは、借金を返せなくなる企業が急増するリスクがあるとし、各国が企業倒産に備えて警戒体制を強め、必要に応じて破綻処理の制度を改革すべきだと勧告している。また、新興国では一般に国営企業が多いため、国が借金を肩代わりすることになれば、財政ひいては資本市場が大きなダメージを受けるリスクがあるとも指摘している。

 国別にみると、リーマン・ショック前の2007年以降の借金増加分を対GDP比でみると最も増えたのは中国で25%程度、トルコとチリは20%以上、ブラジルとインド、タイ、メキシコ、韓国、インドネシアなどが10%前後となっている。

 これらのなかで経済のファンダメンタルズが弱いブラジルやトルコ、南アは要注意だ。ブラジルは今年第2四半期以降しばらくマイナス成長が続きそう。
 
 トルコは政権が不安定なことに加え、爆撃機撃墜を境にロシアとの対立が深まり、厳しい経済制裁を受けている。南アは労働争議が収まらないうえ、金など貴金属価格の急落が追い打ちをかけている。ロシアは借金こそ増えていないが、インドネシアと同様、エネルギー価格の下落が響きそうだ。

■比較的安全なのはメキシコ、韓国、マレーシア

 他方、メキシコや韓国、マレーシアは比較的安全といえそうだ。第3四半期の成長率が2.6~4.7%と堅調で、米国と相前後して利上げする可能性もあり、今のところ政治・地政学的なリスクは大きくなさそうだ。

 かといって、この時期にあえてリスク投資を増やす理由も見当たらない。米国の利上げにより中国やインドなど輸入大国の経済が減速し、資源価格が一層下落する可能性がある。
 
 とくに中国経済は複数の大手国有企業の破綻があれば急減速する心配もある。フォルクスワーゲンの不正問題が思わぬ形でドイツ経済にマイナスを及ぼし、ユーロが再び不安定になる可能性も否定できない。

 今後も中国経済は言うに及ばず、新興国を含む主要通貨や資源価格の動向からは目が離せない。米国の来年の利上げペースも現在は2回との見方が多いが、これが増えても減っても市場に動揺を与えることになりそうだ。(上杉光、シニア・アナリスト)

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