なぜ、モスバーガーは愛され続けるのか?

なぜ、モスバーガーは愛され続けるのか?
なぜ、モスバーガーは愛され続けるのか?(写真=The 21 online/櫻田厚(モスフードサービス社長)) (ZUU online)
       

■顧客の心は、あえて「面倒なこと」をしてつかむ

ファストフード業界の明暗が分かれている。期限切れの鶏肉問題などで急失速したマクドナルドを尻目に、安定した成長を続けるモスフードサービスは、顧客からの圧倒的な支持を元に、2015年3月期も増収を記録した。「日本発」のファストフードであるモスバーガーはなぜ、ここまで愛されるのか。櫻田厚会長兼社長にうかがった。

■創業以来あえて「面倒なこと」ばかりしてきた

業績好調のモスフードサービスは、逆風が吹いている外食産業において数少ない「勝ち組」企業の1つだ。しかし、会長兼社長を務める櫻田氏はそうした評価にあまり関心がないようだ。

「褒めていただくのはありがたいのですが、私自身は勝ち組という言い方が好きではありません。企業の評価は2種類あります。1つは、業績など数値化できる定量的評価。もう1つは数値化できない定性的な評価です。たとえば好き嫌い、なんとなく応援したいというのがこれに当たります。本来、この2つの評価が一緒になって企業のブランドが作られるわけです。

ところが、マスコミのみなさんは、わかりやすい定量的な数字だけに振り回されて、やれ勝ち組だ、負け組だと判断してしまう。もちろん数字も大事ですが、より大事なのは、どうしてそのような数字になったのかという根幹の部分です。根幹の方向性が正しければ、一時的に数字が悪くても気にする必要はありませんし、逆に根幹がブレていたら、たとえ業績が好調でも安心はできません」

このような、短期の業績にとらわれない姿勢は、モスバーガーの取り組みを見れば明らかだ。「私たちは創業以来、とにかく『面倒なこと』ばかりしてきました。他社と違うところがあるとしたら、そこだと思います。

ファストフードはもともと生産性重視、効率性重視の業界です。できるだけ短い時間に、いかに多くのお客様に多くの商品を提供するか。それを最優先してきました。

でも、モスバーガーは注文を受けてから調理を開始するので、手間も時間もかかります。でも、手間がかかるからおいしいのだと考えて、面倒なことを面倒くさがらずにやってきたのです。かつて、作業を効率化して調理時間を短くしようとしたのですが、支持が得られずにやめてしまったこともあるくらいです。

必ずしもみんなが同じことをしなくてもいいし、中には逆のことをする会社があってもいい。そう考えて、時間がかかってもいいから、できたてでアツアツの商品を提供することにこだわってきたわけです。

その姿勢が長い目で見たときにお客様の支持につながり、さらには定量的な結果につながってきたのでしょう」

■モスバーガーが「マニュアル」を作らない理由

非効率だと認識しつつも、高いクオリティを追い求めて、あえて手間のかかることをやる。この哲学は、コミュニケーションにも貫かれている。

「モスでは、できるだけダイレクトコミュニケーションを心がけるようにしています。お客様とのコミュニケーションもそうですし、社内でも同様です。

たとえば、我々は他のファストフードチェーンと違い、細かい接客マニュアルを作っていません。というのも、たとえば『お客様が見えたときは、おはようございますと元気よく言いましょう』というマニュアルがあったとします。すると、形式的にあいさつすることだけが目的になってしまう恐れがあるからです。これでは機械と同じです。

お見えになったのが小さなお子様なら、カウンターから身を乗り出して目線を下げ、『何食べる?』と優しく語りかけたほうがいいかもしれません。あるいはご年配のお客様なら、また別の対応があるでしょう。どちらにしても、最適なあいさつはお客様によって違うはず。

もちろん、それぞれのお客に合ったコミュニケーションを考えるのはある意味『面倒』なことですが、だからこそ本当に心と心が通じるコミュニケーションが生まれるのではないかと思います。

直接のコミュニケーションではありませんが、店舗の前のイーゼルに立てかけてある手書きのボード。これもまた、何を書くべきというマニュアルはありません。一人ひとりが毎日考え、書いています。もちろん手間はかかりますが、お客様に何を伝えようかと考える習慣が、コミュニケーション力をつけることになるのです。最近では他の店も真似していますが、最初に始めたのはモスで、今年で19年目になります」

あえて手のかかるコミュニケーションを取るのは、トップである櫻田氏も同様だ。

「実は私は最近、全国各地で『モスバーガータウンミーティング』というものを行ないました。これは全国各地の会場にお客様に集まってもらい、私が直接、ご意見をうかがうというもの。これもお客様と直接お会いして、本音に耳を傾けたいと思ったからです。すべての都道府県で実施するまで4年半もかかりましたが、タウンミーティングを通して気づかされたことは多く、本当にやってよかったと考えています」

■時間をかけても直接会いに行くべき

ただ、「最近はネット社会が広がり、リアルな世界でコミュニケーションをする機会が減りつつあることが心配」だという。

「先日、電車に乗ったら、1つの車両に12人のお客さんがいて、そのうち10人は携帯をいじっていました。残る2人は寝ていたので、実質的にみんなネットに没頭していたわけです。

このように1日の中でネットに費やす時間が増えていけば、人と直接話す経験が乏しくなり、ますます人と話すことが苦手になっていくでしょう。動物の中で言葉を話すのは人間だけなのに、もったいないことです。

もちろんネットはネットで活用すればいいと思います。実際、私自身もフェイスブックを活用してモスの情報を発信していますし、メールももちろん使っています。ただ、私は100回のメールよりも、1回会って話をすることを選びます。やはり直接会うほうが面倒ですが、そのほうが自分の想いも伝わり、より多くの情報を得ることもできるからです。

先日も、伊那食品工業の塚越寛社長の本を読み、どうしてもお会いしたいと考え、片道4時間かけておうかがいし、やはり4時間話し込み、4時間かけて戻ってきました。スケジュールを調整する秘書は大変だったかもしれませんが、やはり直接お会いしたことで、大いに刺激を受けることができました」

■若い男性はとくに、「答え」を探しすぎないほうがいい

ネット社会について櫻田氏がもう1つ危惧していることがある。それは、正解の捉え方だ。「ネットやデジタルの社会では、わからないことがあればネットで検索すれば、答えがどこかに転がっています。それを見つけ出し、最短でそこにたどり着くのが賢いやり方です。

でも、唯一絶対の正解が存在しないリアルな世界で、このやり方は通用しません。状況が違えば、ふさわしい答えも違う。その都度、自分の頭で考えて正解を作っていくしかないのです。

先ほど申し上げたように、モスバーガーのマニュアルは他と比べてごく簡単なことしか書かれていません。ところが最近の若い人はネット社会の影響か、答えが用意されていないと、どうしていいのかわからないようなのです。

先日、20代の男性社員に『彼女はいるの?』と何気なく尋ねたら、押し黙ってあたりをちらちらと見ているのです。どう答えるのが正解なのか、周りの顔色をうかがっているわけです。むしろ女性のほうが、ズバズバと答えますね。

別の言い方をすれば、失敗を恐れすぎているのです。でも、30回失敗した人と3,000回失敗した人がいれば、私は後者を評価します。3,000回の失敗の裏にはもっとたくさんの経験があり、それだけ成功もしているはずだからです。

私自身、プロフィールを見ると成功ばかりしているようですが(笑)、その陰で山のような失敗をしてきているわけです。若い人にはぜひ、自分の頭で考えて、失敗を恐れずにたくさんのチャレンジをしてほしいですね」

■モスバーガーの「家族的」な雰囲気の理由とは?

モスバーガーはよく「家族的な雰囲気」だと称されることがある。これは、櫻田氏の経営哲学によるところが大きいようだ。

「私の使命とは、モスバーガーを永続させ、そこで働く人とその家族を守ることです。最近は仕事とプライベートを明確に分ける風潮が強いですが、私にとって社員やパート、アルバイトは家族です。今、全国のモスで約25,000人の人が働いていますが、経済的な面ややりがいも含め、私はみんなに幸せになってほしい。

だからこそ仕事だけでなく、人間として成長してほしいと思う。人間としての成長なしにいい仕事はできません。私が社員のプライベートにも口を出すのは、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)ならぬ、OFF・JTも重要だと思うからです。

1人ひとりが歩む人生と、モスが目指している道ができるだけ離れずに近いところにあれば、これほど嬉しいことはないですね」

櫻田厚(さくらだ・あつし)〔株〕モスフードサービス代表取締役会長兼社長
1951年、東京都大田区生まれ。72年、創業者である叔父、櫻田慧に誘われてモスフードサービスの創業に参画。77年、モスフードサービスに入社。94年、取締役海外事業部長。98年、代表取締役社長に就任。14年4月より会長職を兼任。

(取材・構成:村上敬 写真撮影:まるやゆういち)(『The 21 online』2016年02月05日公開)

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