2016・2017年度経済見通し~15年10-12月期GDP2次速報後改定

2016・2017年度経済見通し~15年10-12月期GDP2次速報後改定
2016・2017年度経済見通し~15年10-12月期GDP2次速報後改定(写真=PIXTA) (ZUU online)

■要旨

<実質成長率:2015年度0.7%、2016年度1.2%、2017年度0.0%を予想>

◆2015年10-12月期の実質GDP(2次速報値)は、設備投資、民間在庫の上方修正などから1次速報の前期比▲0.4%(年率▲1.4%)から前期比▲0.3%(年率▲1.1%)へと上方修正された。

◆GDP2次速報の結果を受けて、2月に発表した経済見通しの改定を行った。実質GDP成長率は2015年度が0.7%、2016年度が1.2%、2017年度が0.0%と予想する。2015年10-12月期の実績値の上方修正を受けて2015年度の見通しを0.1%上方修正した。

◆2016年1-3月期は前期比年率0.8%のプラス成長を予想するが、うるう年の影響を除けばほぼゼロ成長と考えられる。円安効果の一巡などから好調を続けてきた企業収益が4年ぶりの減益となるなど、アベノミクスは正念場を迎えている。

◆消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)は原油価格の下落を主因として2016年度半ば頃までマイナスが続くだろう。

原油価格下落の影響が一巡する2016年度後半にプラスに転じた後1%程度まで伸びを高めるが、2017年度は消費税率引き上げに伴う景気減速の影響から伸び率が鈍化する可能性が高い。年度ベースでは2015年度が0.0%、2016年度が0.2%、2017年度が0.9%(消費税率引き上げの影響を除く)と予想する。

■2015年10-12月期は前期比年率▲1.1%へ上方修正

3/8に内閣府が公表した2015年10-12月期の実質GDP(2次速報値)は前期比▲0.3%(年率▲1.1%)となり、1次速報の前期比▲0.4%(年率▲1.4%)から上方修正された。

民間消費(前期比▲0.8%→同▲0.9%)、公的固定資本形成(前期比▲2.7%→同▲3.4%)は下方修正されたが、10-12月期の法人企業統計の結果が反映されたことにより、設備投資が1次速報の前期比1.4%から同1.5%へ、民間在庫品増加が1次速報の前期比・寄与度▲0.1%から同▲0.0%へ上方修正されたことが成長率を押し上げた。

成長率は若干上方修正されたが、民間在庫品増加の上方修正は先行きの成長率を見る上ではむしろマイナス材料である。民間在庫品増加(実質・季節調整値)は1次速報の+1.0兆円から+1.6兆円へと積み上がり幅が拡大し、在庫調整の遅れを示すものとなった。2016年1-3月期以降、在庫調整が進展した場合には成長率が大きく押し下げられる可能性がある。

◆企業部門の改善に陰り

3/1に財務省から公表された法人企業統計では、2015年10-12月期の全産業(金融業、保険業を除く)の経常利益が前年比▲1.7%となり、2011年10-12月期以来4年ぶりの減少となった。非製造業(7-9月期:前年比15.2%→10-12月期:同12.7%)は増益を確保したが、製造業(7-9月期:前年比▲0.7%→10-12月期:同▲21.2%)の減益幅が大きく拡大した。

製造業は輸出数量の減少が続く中、円安の一巡により輸出価格も減少に転じたことから売上高が前年比▲1.4%(7-9月期:同▲0.0%)と減少幅が拡大したことに加え、売上高経常利益率が2014年10-12月期の7.6%から6.1%へと2四半期連続で悪化した。

製造業の売上高経常利益率(前年差)を要因分解すると、人件費、変動費、金融費用、減価償却費がいずれも利益率の悪化要因となった。変動費は、原油価格下落などから前年比▲0.6%と5四半期連続で減少したが、売上高の減少幅がそれを上回ったため、利益率の押し下げ要因となった。

一方、非製造業は個人消費を中心とした内需の低迷を反映し、売上高が11四半期ぶりの減少(7-9月期:前年比0.1%→10-12月期:同▲3.2%)となったものの、売上高経常利益率が2014年10-12月期の4.3%から5.1%へと改善したことが増益につながった。

人件費は4四半期連続で利益率の悪化要因となったが、原油価格下落と円安の一巡に伴い変動費の減少幅が7-9月期の前年比▲1.0%から同▲4.6%へと大きく拡大し、変動費要因が利益率を1ポイント以上押し上げた。

企業収益が4年ぶりの減益となったひとつの理由はこれまで収益を大きく押し上げてきた円安効果が縮小したことである。

円/ドルレートは2014年10-12月期から2015年7-9月期まで前年比で10%を超える円安となっていたが、2015年10-12月期は5四半期ぶりに一桁の円安にとどまった。2016年に入ってから円高が一段と進行しているため、2016年1-3月期の円/ドルレートはアベノミクス始動後、初めて前年よりも円高となることが見込まれる。

海外経済の減速や円高の進行を受けて、企業収益を取り巻く環境は製造業を中心に一段と厳しさを増している。安倍政権発足後の好調な企業収益を支えてきた円安基調が止まったことで、アベノミクスは正念場を迎えている。

■実質成長率は2015年度0.7%、2016年度1.2%、2017年度0.0%

◆2015年度の成長率見通しを上方修正

2015年10-12月期のGDP2次速報を受けて、2/16に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2015年度が0.7%、2016年度が1.2%、2017年度が0.0%と予想する(2/16時点ではそれぞれ0.6%、1.2%、0.0%)。2015年10-12月期の成長率が上方修正されたことを受けて2015年度の見通しを0.1%上方修正した。

2016年1-3月期は民間消費が増加に転じることなどから前期比年率0.8%のプラス成長を予想しているが、GDP統計では季節調整をかける際にうるう年調整が行われていないことに注意が必要だ。

当研究所では1-3月期の民間消費はうるう年に伴う日数増で前期比0.4%程度押し上げられる(GDPは前期比0.2%強、前期比年率1%程度)と試算している。1-3月期はうるう年の影響を除けばほぼゼロ成長で、景気が回復基調に戻るのは2016年度入り後までずれ込みそうだ。

2016年前半は年率1%以下の低成長にとどまるが、2016年度後半は2017年4月に予定されている消費税率引き上げ(8%→10%)前の駆け込み需要によって成長率が高まることが予想される。2017年度は駆け込み需要の反動と消費税率引き上げに伴う実質所得低下の影響からゼロ成長となるだろう。

なお、当研究所では2017年4月の消費税率引き上げ前後の駆け込み需要とその反動の規模を実質GDP比で0.3%程度と試算しており、前回(2014年4月)の0.6%程度(当研究所の試算値)よりも小さくなることを想定している、

これは税率の引き上げ幅が前回よりも小さいこと、駆け込み需要が発生しやすい住宅自動車など買い替えサイクルの長い高額品については、前回の税率引き上げ時にすでに前倒しで購入されている割合が高いこと、食品(酒類、外食を除く)などに軽減税率が導入されたこと、などによる。

また、2017年4月の消費税率引き上げによって消費者物価(生鮮食品を除く総合)は1.0%押し上げられると試算される(軽減税率導入の影響も含む)。2014年度に比べて税率の引き上げ幅が小さいこと、軽減税率によって物価の押し上げ幅が縮小することから、消費者物価上昇率への影響は2014年度(2.0%)の半分程度となろう。

設備投資は2015年7-9月期の前期比0.7%から10-12月期には同1.5%へと伸びを高めたが、これは企業収益が好調だった時期に計画された設備投資がようやく実施されたことを反映した動きと考えられる。

2/26に内閣府から公表された「企業行動アンケート調査(2015年度)」によれば、今後5年間の実質経済成長率見通し(いわゆる期待成長率)は1.1%となり、前年度から0.3ポイント低下した。

企業の設備投資意欲を示す「設備投資/キャッシュフロー比率」は期待成長率との連動性が高いため、先行きも企業の投資意欲が大きく高まることは見込めない。設備投資は企業収益の悪化を受けていったん減速する可能性が高く、景気の牽引役となることは当分期待できないだろう。

一方、個人消費は消費税率引き上げから2年近くにわたって低迷が続いているが、先行きは持ち直しに向かうことが見込まれる。2016年度の春闘賃上げ率は前年度を下回る公算が大きい(当研究所では2016年度の春闘賃上げ率を前年から0.08ポイント低下の2.30%と予想)が、原油価格下落に伴う消費者物価の低下が実質購買力を押し上げるためである。

名目雇用者報酬の伸びは頭打ちとなるが、実質雇用者報酬は2015年度が前年比1.4%、2016年度が同1.3%と1%台の伸びを確保し、個人消費の持ち直しに寄与することが予想される。

ただし、2017年度は原油価格の持ち直しや消費税率引き上げの影響から消費者物価上昇率が2%程度まで上昇するため、2014年度と同様に実質雇用者報酬の伸びは大きく低下する可能性が高い。2017年度の個人消費は消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動と物価上昇に伴う実質所得低下の影響が重なることから、大幅な減少となることが避けられないだろう。

◆物価の見通し

消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、原油価格下落に伴うエネルギー価格の低下を主因として2015年8月から10月まで3ヵ月連続で前年比▲0.1%となった後、11月、12月が前年比0.1%、2016年1月が同0.0%とマイナスを脱した。しかし、先行指標である東京都区部のコアCPIは2016年1月、2月と前年比▲0.1%となっており、全国のコアCPIも2015年度末までに再びマイナスとなる可能性が高い。

エネルギー価格の前年比下落率は2015年9月をピークに縮小傾向となっていたが、電気代、ガス代は原油価格下落の影響が遅れて反映されるため、下落ペースは今後加速する公算が大きい。

消費者物価指数の調査対象品目を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、上昇品目数の割合が7割近くなっており、引き続きエネルギー以外の物価上昇圧力は強い。

しかし、2016年夏頃にかけてのエネルギー価格の下落率は2015年夏頃よりも大きくなるため、先行きのコアCPIの下落幅は2015年8月から10月までの前年比▲0.1%を明確に上回る可能性が高い。コアCPI上昇率が再びプラスに転じるのは原油価格下落の影響が一巡する2016年10-12月期までずれ込むだろう。

2016年度末にかけては消費税率引き上げ前の駆け込み需要によって需給バランスが改善することもあり、コアCPIはいったん1%程度まで伸びを高めるが、2017年度入り後は消費税率引き上げに伴う景気減速によって需給面からの物価上昇圧力が弱まるため、2%に達する前に上昇率は鈍化し始めるだろう。

コアCPI上昇率は2015年度が前年比0.0%、2016年度が同0.2%、2017年度が同0.9%(消費税率引き上げの影響を除く)と予想する。

斎藤太郎(さいとうたろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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