のん復活作品「この世界の片隅に」が驚異的ヒット SNSや口コミが火つけ役か
芸能界復帰を果たしたのん(能年玲奈)が初めて声優に挑戦した映画「この世界の片隅に」が驚異的ヒットを記録している。今までにない戦争を描いた「この世界の片隅に」はどのような映画なのだろうか。また、ヒットの理由に迫る。
「この世界の片隅に」が驚異的ヒット 資金が集まりすぎる事態も
11月12日から公開されているアニメ映画「この世界の片隅に」が、観客動員数ランキングで2週連続10位を記録した。
「この世界の片隅に」は、全国で63館という小規模な上映であるため、ランクインすることは相当な快挙であるといわれている。
1月12日に公開されたアニメ映画『この世界の片隅に』が土日2日間で初週を大きく上回る興行収入5,679万8,980円、観客動員数3万9,638人を記録し、前週に続いて10位にランクインした。今年は『君の名は。』が興収200億円も視野に入る驚異的ヒットとなっており、2週連続10位など大したことはない……と感じるかもしれない。が、全国63館から始まった小規模公開でランクインしたのは相当な快挙。上映館数で言えば『君の名は。』の約5分の1であり、100館に満たない作品がランキングに入るケースは希少なのだ。
口コミ効果?『この世界の片隅に』ヒットの理由-シネマトゥデイ
また、「この世界の片隅に」の海外上映を支援するためにクラウドファンディングを募ったが、開始からわずか11時間で目標金額である1,080万円を達成し、監督である片渕須直も嬉しい悲鳴を漏らした。
「映画『この世界の片隅に』の海外上映を盛り上げるため、片渕監督を現地に送り出したい」にご支援いただきました皆さまへ
皆様の熱いご支援のおかげで、このプロジェクトは2016年11月22日15時の開始後、わずか11時間で目標金額である1,080万円を達成いたしました。これで無事、片渕須直監督を世界の上映国に送り出すことが可能になります。『この世界の片隅に』スタッフ一同、改めて心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
映画『この世界の片隅に』の海外上映を盛り上げるため、片渕監督を現地に送り出したい-Makuake
たくさんご協力いただいて、ありがとうございます。でも、もう十分な感じです。ここまででもう結構です。 https://t.co/b9wuzdrhWZ
— 片渕須直 この世界の片隅に 上映中 (@katabuchi_sunao) 2016年11月23日
舞台は広島・呉 「この世界の片隅に」が描く戦争とは
「この世界の片隅に」は、第二次世界大戦中の広島・呉が舞台である。
18歳で呉に嫁ぐことになった主人公・すずが、戦況が悪化していく世の中、大切なものを失いながらも日々を前向きに生きる姿が描かれている。
18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。
夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。
配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。
ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。
またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。
1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。
この世界の片隅に公式サイト
物語はあくまですずの日常を描き、観る者に親しみやすさや軽やかさを与える。
しかし、「戦争」を背景として映し出すことで、いかに戦争が残酷で悲劇的なものであるかを雄弁に物語っている。
ただ『この世界の片隅に』の主軸はあくまでもすずの日常であって「戦争」は背景でしかない。しかし親しみやすさや軽やかさを保ちながら、「戦争」が醸す空気の重みをここまで肌身に感じさせる映画も珍しい。
口コミ効果?『この世界の片隅に』ヒットの理由-シネマトゥデイ
「戦時中ものだけど実は新しい。そういうものを求めていた人がたくさんいらっしゃったということだと思うんです」
『この世界の片隅に』片渕須直監督、ヒットの要因を分析-シネマトゥデイ
すずの声優をつとめたのん(能年玲奈)は、物語に対し以下のように語っている。
「これまで、戦争は別世界にあるもので、自分には関係ないという気がしていました。でも、この作品には普通に明るく生きている人たちが出てきます。日常生活がリアルに描かれていて、その暮らしが身近に感じられるから、戦争を自分に引きつけて考えることができるのだと思います」
アニメ映画「この世界の片隅に」主演 のんさん-YPMIURI ONLINE
『花は咲く』のタッグ再び ヒットの理由は原作の忠実さか
「この世界の片隅に」の原作は漫画家・こうの史代によるものである。
こうのはこれまで被爆者の戦後の人生を描いてきたが、今回初めて戦時中を描いたという。
きっかけは呉に住み戦火を生き抜いた、亡き祖母への思いだったそうだ。
「祖父母とか、話をできなくなってしまった人々と、描くことで対話をしているような、そういう人たちのことを追いかけるように丁寧に描ければいいなと思った。」
映画「この世界の片隅に」 こめられた思い-NHK
映画化の監督は片渕須直であり、こうのとはNHK『花は咲く』アニメ版ぶりのタッグとなった。
今更ながら「花は咲く」アニメバージョンを見る。こうのさんと片淵さんのシンクロは良い感じ。映画の方も期待して待ちたいところ
— 甘栗二郎 (@amaguridoh) 2014年5月24日
ヒットの理由として、原作の世界観と映画の奇跡的なマッチングだといわれている。
ではなぜこの映画がそれほどまでに愛されるのか。理由は数多くあれど、原作の世界観と映画という表現が奇跡的なレベルでマッチングしたことは外せない。「原作に忠実」という感想も多いのだが、漫画と決定的に違うのは、映画の特性である「時間」という要素の存在だろう。
口コミ効果?『この世界の片隅に』ヒットの理由-シネマトゥデイ
また、原作からのある変更点が、観る者との距離を一気に縮め、親近感を沸かせているという。
片渕監督がネット上で発表した制作日誌によると、昭和8年の12月23日には今上天皇が皇太子として生まれており、昭和9年1月は皇太子誕生の祝賀ムードに包まれていたはずだという。しかし、その様子を正確に再現するには十分な資料が見つからなかった。原作にも皇太子誕生の影響は描かれておらず、映画ではあえて前年の12月22日に設定したそうだ。
しかもこの変更は、時代考証の正確さ以上の意義を作品にもたらした。冒頭の設定が12月になったことで、年末商戦で沸く広島の繁華街が映し出されるのだが、そこにはサンタクロースの扮装をした呼び込みもいれば、サンタの西洋人形も売られているのだ。実はクリスマスの習慣は大正時代に日本に入り、昭和初期には完全に定着していた。今と変わらぬクリスマスの様子は、戦前の日本と83年後の現代に生きるわれわれの距離を一気に縮めてくれるのだ。
口コミ効果?『この世界の片隅に』ヒットの理由-シネマトゥデイ
「のんの声」に大絶賛の嵐 のんの復活を求める声も
「この世界の片隅に」の主人公・すずの声は、のん(能年玲奈)が担当している。
のんは今回が初めての声優出演になったという。
――声優として主演するのは初めてだそうですね。
「体や表情を使って表現することができないので、難しかったです。すずは広島のことばで話すので、(慣れるために)友だちと話すときなど日常的に方言を使っていました」
アニメ映画「この世界の片隅に」主演 のんさん-YOMIURI ONLINE
のんはこれまでに「あまちゃん」などの明るいキャラクターを演じていたことが多かったが、戦争時代を生きる深みのある陰性の感情表現を見事に演じ、大絶賛されている。
特筆すべきはすずというキャラクターに対するのんの親和性の高さである。というのも、声が完壁といっていい程にマッチしているのだ。すずは、他人を思いやる心、そしてちょっと抜けたところがあるのが魅力的な女性なのだが、のんの高すぎず通り過ぎず、そして少女のような無邪気さを感じさせる伸びやかな声は、女性としてはまだまだ未熟ながらも、その未熟さで人々から愛されるすずという女性を演じる上で、見事にはまっている。
【レビュー】映画『この世界の片隅に』―のんの声がハマりまくり!戦争映画の新たな傑作-T-SITE
これまでののん(つまり能年玲奈)は、『カラスの親指』や『あまちゃん』、『海月姫』など、明るいキャラクターを演じた作品での陽性な感情表現が強く印象付けられていたこともあり、負の感情表現を行うことが少ない、していても浅いというイメージがあった。しかし本作では、ネガティブな状態のすずが発す、まるで感情がどこかに行ってしまったかのように感じさせる空虚な声など、深みのある陰性の感情表現によって、戦争の時代に生きる女性の悲しみを醸し出すことに成功している。
【レビュー】映画『この世界の片隅に』―のんの声がハマりまくり!戦争映画の新たな傑作-T-SITE
のんといえば昨年から今年にかけて、事務所からの独立騒動、能年玲奈から「のん」へと改名により、一時期は「干されているのでは」と話題に。
今回の「この世界の片隅に」出演により、のんの今後の芸能活動に復活を求める声が相次いでいる。
アニメ映画に俳優や女優をあてるなっていう人いるけど、君の名は。でもこの世界の片隅にでも、素晴らしいキャスティングだと思うよ。能年玲奈も色々あるんだろうけど、これを機に復活して欲しいなぁ。
— えふしぃの名はバース (@f_c) 2016年11月20日
能年玲奈復活か。『この世界の片隅に』のんに今年の最優秀主演女優賞を! 演技を支える「こころの遠近法」 - Real Sound|リアルサウンド 映画部 - https://t.co/r9jJyTdX8V
— おさやん (@DJkazma69) 2016年11月20日
主演の能年玲奈の芝居もスゲー良くて、代わりの声優が思い浮かばない。正直、ここまでハマるとは思っていなかった おれの負けです。バーニングなんかにも負けずに復活していただきたい。
— カタカナ (@katakana_now) 2016年11月14日
「絶対見るべき!」SNSの拡散や口コミが熱い!
小規模公開にも関わらず、驚異的なヒットを記録しているのは、作品を観た人のSNSでの投稿や口コミが大きな影響であるといわれている。
Twitterでは「この世界の片隅に」に関連した投稿が、一週間で3万5,000件を超え、中には著名人や批評家らのコメントも見られた。
事前に作品を観た著名人や批評家らが軒並み絶賛してネットに拡散。Twitterでは一週間の投稿数が3万5,000件を超えた。
口コミ効果?『この世界の片隅に』ヒットの理由(1/3)-シネマトゥデイ
今日、#この世界の片隅に を観に行った人が多いようで、「この世界の片隅に」(ハッシュタグなし)でツイッター検索すると、1分間に10ツイートくらいの勢いで書き込まれているのが分かります。もはや社会現象。良いものの良さが良く広がるのは良いことです。
— 達増拓也 TASSO 希望郷いわて (@tassotakuya) 2016年11月23日
「この世界の片隅に」このまま、どんどん口コミで広がって前例のないヒットの形を映画史に残してほしいよなぁ。良い作品が創れれば、必ず大勢の一般の人々がその作品を評価し育ててくれる。その事実はこれからの若いクリエイターの励みになるかもしれないから。
— 平野文鳥 (@hiranobuncho3) 2016年11月23日
今日の朝日新聞朝刊3面に「この世界の片隅に」原作マンガの大きな広告。「大反響 重版出来!」。めでたい。 pic.twitter.com/g1TPrhRT2i
— 小原篤/アニマゲ丼 (@botacou) 2016年11月23日
この世界の片隅に
— Chara (@Chara_xxx_) 2016年11月22日
誰か一緒に観に行かないかしらー
「この世界の片隅に」2時間半前でラスト一席滑り込み。
— きゃんち on ICE (@kyanchiaki) 2016年11月22日
開始3分で優しい雰囲気にほっこりし、同時に不思議と涙が
濁った心を手洗いで洗ってもらい、手押しで脱水され、ふんわり春風で自然乾燥という2時間でした。
今目の前にある物事に感謝して生きたいと思えた。#この世界の片隅に pic.twitter.com/lEzVsnFCTA
昨日、通算4回目の「この世界の片隅に」を鑑賞して、あと何回劇場で観れるんだろうと思った。劇場で性別も年齢も全然違う人たちと一緒に笑ったり泣いたりするって、改めて考えるとすごい体験だ。僕らのライブもそういう体験になれていますように。
— 歌広場 淳 (@junjunmjgirly) 2016年11月22日
気になる上映場所は…
「この世界の片隅に」は、以下の地域で上映されている。
「この世界の片隅に」-劇場情報
映画の大反響から、上映館や上映時間の増加に今後も期待できそうだ。
上映中、上映予定あわせて138館になってる・・・・。おお・・・・。
— 片渕須直 この世界の片隅に 上映中 (@katabuchi_sunao) 2016年11月23日
映画「この世界の片隅に」、都内の映画館は混んでいるようなので、TOHOシネマズ市原に来ています。片道2時間超かかりました。これから鑑賞11回目。
— ぬいぬ (@nuinu) 2016年11月23日