【少子化問題まとめ】をめぐる世の中の動きを振り返る
日本は、世界の国々のなかでも、群を抜いて「少子化」が進行しています。問題が指摘されてから30年近くたつものの、少子化をめぐる問題は解決どころか拡大し続けています。今回は、これまでエキサイトニュースで掲載された記事を通して、少子化問題に対する政府の施策や、子育て世代の意識などについて振り返っていきたいと思います。
そもそも【少子化問題】とは?
社会問題として、ニュースでもよく目にする「少子化問題」。日本の子どもの数は、第2次ベビーブームの1973年をピークに減少し続けています。それが「少子化」としてクローズアップされたのは1992年のことでした。
その年の11月に公表された「国民生活白書」によると、少子化とは「出生率の低下やそれにともなう家庭や社会における子ども数の低下傾向」のことで、少子化は家庭をはじめ地域社会や教育、産業、就業にさまざまな影響をおよぼすと指摘されています(参考:平成4年版「国民生活白書」)。
少子化問題の内容は、大きく「経済的影響」と「社会的影響」に分けられます。
・経済的影響
現役世代の減少により労働生産性が低下することや、現役世代の社会保障(年金など)の負担が増えることを指す。
・社会的影響
介護など、社会的扶養の需要が増えることや子ども同士の交流が減って「健やかな成長」が懸念されること、過疎化によって住民向けのサービスが困難になるなどの問題が含まれる。
このように少子化問題には、さまざまな原因があると考えられており、なかなか一筋縄ではいきません。
少子化という言葉が使われ出した当初は、「女性の社会進出」や「個人の価値観の変化(晩婚化や結婚しても子どもを持たないなど)」が大きな要因とされていましたが、最近では「保育園の数が少ない」とか「産後休業制度が企業内で十分に機能していない」といった問題を指摘する声も目立っています。少子化問題を解消するため国や自治体もさまざまな対策を打ち出しているものの、今日に至るまで決定的な解決策は見つかっていないのです。では、ニュースを見ていきましょう。
政府の少子化対策に欠けている視点は?
2014年に生まれた子どもの数は、100万1000人(記事掲載当時)。集計を開始して以来最低となる数字は関係者に大きな衝撃を与え、「いよいよ大台割れか?日本はどうなる?」と注目を集めました。そして、2019年には86万4000人まで低下しています。
もちろん、政府としても手をこまねいていたわけではありません。1994年の「エンゼルプラン」に始まり、1999年の「新エンゼルプラン」、2003年の「少子化社会対策基本法」、2004年の「少子化社会対策大綱」、2007年の「ワーク・ライフ・バランス憲章」、2008年の「新待機児童ゼロ作戦」など、立て続けに対策を打ち出しています。
それでも少子化に歯止めがかからないのは、出産以前の問題として「結婚しない・できない若者たち」への対策がないためであるそうです。「個人の自由」とのバランスに配慮しつつ、若者の結婚を促すことはとても難しい問題です。
参考記事:なぜ少子化対策がうまくいかないのか? 日本の出生数が2014年過去最低になった理由を考える
専業主婦を増やすことは少子化対策になる?
元フジテレビのアナウンサー・長谷川豊氏が、2014年12月12日のブログで「子どもを増やすには、専業主婦・専業主夫を増やすべき」との持論を展開したニュースを覚えていますでしょうか。保育環境の整備に力を注ぐ政策への反対意見として提示されたものです。
これに対して、Twitter上では現役の子育て世代から、
「家事育児より仕事のほうが楽ですよ!」
「育児休暇明けの初勤務、あー大人相手に喋れる仕事って何て幸せなんだろう、もう帰りたくない」
「子どもを背負ってでも仕事に戻りたい」
「仕事の事、自分の事だけしっかりこなしていれば良いのだから、本当に仕事の方が何倍も楽」
といった意見が殺到。長谷川氏の「20代の女性の過半数は、働くよりも専業主婦になって子どもや家族と過ごしたい、と思っている」という主張に対しても、
「家事育児をしながら仕事をするのがキツいんだよ。だから専業主婦か、もしくは独身で食いっぱぐれない仕事したいんだよ」
「フルタイムで働いた上に専業主婦並みの家事と育児をこなすことを要求されるなら、働かずに専業主婦になりたいんですよ」
などの反論が寄せられました。
参考記事:「専業主婦になりたいわけじゃない!」 元フジ長谷川豊アナの少子化対策案に現役ママから反論が殺到
非正規雇用に向けた少子化対策も必要
政府の少子化対策は「待機児童問題の解消」に力が入れられています。しかしこれに対して、待機児童の解消は主に正規雇用の人たち向けの対策であって、非正規雇用の女性はそれ以前の問題を抱えているとの指摘もあるのです。
一例を挙げると、
「働く女性の多くが非正規なのに正社員しか産休育休の恩恵を受けられない」
「低すぎる非正社員の賃金で“子どもを大学に行かせられるのか”が不安!」
といった意見があります。
政府の統計(2016年版『国民生活基礎調査の概況』)によると働く女性の6割は非正規雇用だというから、これは政策の根本に関わる大問題だといえる。実効性のある少子化対策を行うには、雇用形態による格差の解消も必要なのではないでしょうか。
参考記事:正社員だけズルい? 非正規で働く人が少子化対策に求めているものとは
少子化対策には「お金」を含む総合的な対策が必要
少子化の一因としてあげられるのが「子育てにかかるお金」の問題。実際に現役子育て世代から寄せられる意見の中にも、
「2人、3人と産むほど、生活や時間、お金は苦しくなります」
「働いても働いても、子どもにお金がかかり生活に余裕がもてません」
「保育料、働けば働くだけ高くなり、何のために働いているのか感がとても強いです」
など、お金をめぐる訴えが少なくないようです。
もちろん、少額の給付金などでは一時しのぎにしかなりません。少子化問題に正面から取り組むには、「働く女性への安定した賃金」や「子どもが成人するまでのサポート」「パパの育児休暇が取りやすい環境」といった総合的な対策が必要です。
参考記事:少子化は「子育てのお金が足りない」のが原因? 求める対策は?【パパママの本音調査】 Vol.238
議員連盟が「街コン」を主導
2013年に結成された「婚活・街コン推進議員連盟」。少子化対策として「結婚」に注目し、「もっと結婚しやすい世の中に変えよう!」という国民運動を目指す団体です。
会長の小池百合子衆議院議員(当時)らによるパネルディスカッションにはブライダル関係や政治に興味のある100名ほどの人たちが集まり、同団体への期待の高さを伺えます。すでに活動の一環として「池袋七夕コン」(2014年7月)というイベントを開催し、今後もさまざまな「○○コン」を開きたいそうです。全国には「出会いを求めている」20代~30代が500万人いると言われる。街コンのようなイベントによって、どれだけの出会いをサポートできるか注目です。
リンク:政界でも注目の“街コン”! 未婚・少子化対策パネルディスカッションに小池百合子衆議院議員が登場!!
「18歳からの選挙権」は少子高齢化対策か?
2016年、公職選挙法の一部改正によって選挙権の年齢が18歳に引き下げられました。
とはいえ今年18歳、19歳になる人の数は有権者全体の2%程度に過ぎず、若者の声が今すぐ政治に影響するとは考えにくいものです。今回の制度改正は、将来に向けて若者が政治に関心を持つ機会を広げることが主な目的です。各政党も「新たな支持者」を囲い込むためにさまざまなアプローチを行っているそうです。
一方で、選挙権年齢の引き下げには別の意図も見え隠れしています。それが「成人年齢」の引き下げと、それによる少子高齢化対策です。成人年齢が18歳になれば、国民年金保険料を納める義務も18歳からとなる。納税者の数を一気に増やすことで、少子化(および高齢化)による労働力不足と社会保障制度の財源不足を補おうというわけなのです。
リンク:「18歳からの選挙権」スタート! 本当の目的は少子高齢化対策?
少子化問題の一助として期待される「産後ケア法案」
2019年12月6日付で公布された、「産後ケア法案(母子保健法の一部を改正する法律)」。
具体的には、
・出産後1年以内の女性と赤ちゃんに対して、産後ケア事業をおこなうように努める
・産後ケア事業をおこなう際には、厚生労働省令で定める基準に従う
・関連機関や母子保健に関するその他の事業との連携を図り、妊産婦さんや赤ちゃんに対する支援の一体的な支援や措置をおこなう
といった内容が含まれています。
そもそも「産後ケア」とは、産院退院直後の母親が心身ともに回復し、不安なく育児をおこなえるよう支援することだ。この法案を通して、産後うつなどの危険からひとりでも多くの母親が救われることが期待されます。
参考記事:少子化対策の一助となるか? 「産後ケア法案」が可決成立!
最後に
少子化問題が指摘されてから、間もなく30年です。政府や自治体、有志団体による取り組みが行われているものの、今のところ目立った効果は得られていないといえるでしょう。少子化の解消には、官民を問わず関係者全員のさらなる努力が必要ではないでしょうか。若い世代を含め、全ての世代が少子化問題に関心を持ち、解決の方法を模索することが望まれています。