【くら寿司まとめ】逆風を乗り越え躍進する 波乱万丈を経てどこへ行く
くら寿司は、浅草の「グローバル旗艦店」開業に続き、全世界での店舗倍増を発表しました。順調そのものに見える成長の影には、ネット上での炎上や深刻な客離れといった逆風を乗り越えた強さと「新しいこと」への積極的な挑戦がありました。ここでは、くら寿司関連の過去のニュースから、同社の歩みの一部を振り返っていきます。
業界第2位の回転寿司チェーン【くら寿司】とは
日本の伝統建築「なまこ壁」をイメージした外観が特徴の、回転寿司チェーン「無添くら寿司」。1977年に創業し1990年に株式会社化、2005年10月には東証一部上場企業となりました。2019年度の売上高は業界第2位となる1,361億円で、2020年2月には前年同月比12.1%増を記録するなど、躍進が止まりません。
ナスダックから東証二部、東証一部へとテンポの良いステップアップや、アメリカ市場への進出など順調さが目立つ同社ですが、その背景にはさまざまな訴訟や、深刻な客離れに苦しんできた経緯があります。
2005年には週刊誌の記事に信用を落とされたとして、出版社への損害賠償請求訴訟を起こすも敗訴。2010年には内定者を強制的に辞退させたとして、給与の補償と精神的な慰謝料を求める訴訟を起こされました。2016年にはネット上の批判的な書き込みに対してプロバイダーへの個人情報開示請求訴訟を起こすも敗訴し、さらに2019年にはバイト店員が不適切な動画をSNS上に投稿したとして刑事・民事の訴訟手続きに入るなど、さまざまな訴訟が繰り返されています。騒動は店舗の売り上げにも大きく影響し、2018年6月には12ヶ月連続で前月割れをしたほか、2019年2月には「前年同月比6.2%減」となりました。
しかし、こうした逆風をことごとく乗り越えているのがくら寿司の強みです。2020年2月には浅草にグローバル旗艦店を開業し、2030年中には世界中の店舗と売り上げを倍増させるとのこと。同社の勢いはまだまだ続きそうです。
参考:くら寿司の企業情報は、こちらからご確認ください。
くら寿司の「グローバル旗艦店」が浅草にオープン
2020年1月22日、くら寿司のグローバル旗艦店となる「くら寿司浅草ROX店」がオープンしました。店舗をデザインしたのは世界的に活躍するデザイナーの佐藤可士和氏。歌川広重の浮世絵『東都名所 高輪二十六夜待遊興之図』をイメージし、毎日がお祭りのような「食のアミューズメントパーク」を表現したそうです。
店舗の面積は通常の約2倍となる約225坪、座席数は1.3倍の272席で、店舗面積・座席数ともに世界最大とのこと。海外の言語ができるスタッフを配置したり、104カ国の言語に対応する端末を配備するなど「グローバル」ならではの特徴に加え、小型カメラとAIを活用したお皿のセルフチェックシステムのような最先端の設備も備えています。
今後は同様の店舗をアメリカ、台湾、中国へも展開する予定とのこと。「第二の創業期」と呼ぶ今季は、同社にとって大きな節目の年となりそうです。
くら寿司のグローバル戦略とは
くら寿司が2020年1月21日の「グローバル戦略説明会」で、「2030年中に現在の495店舗から1000店舗へ、売上高も現在の1300億円から3000億円へと倍増させる」計画を発表しました。同社の田中社長は「くら寿司をマクドナルドのような世界的な外食チェーンにしたい」と語ります。
一方で2019年の売上は、同年2月に発生したバイト店員の不祥事などをきっかけに、営業利益が前期比20.4%減の54億円、純利益も同26.6%減の37億円と大きく低迷しました。こうした現状に、ネット上には「バイトテロがあったばかりなのに店舗急拡大させて大丈夫か?」「店舗を増やしすぎるのは危険」など、同社のグローバル戦略に対する不安の声も上がっています。
内定者辞退を強要した?「くら寿司問題」
直近10年間のくら寿司の歴史は、発展と訴訟の繰り返しでした。2010年に行われた入社前合宿では、内定者に難易度の高い課題を課した上で内定辞退を迫ったとされ、「大変悪質で内定取り消しと同等」という非難や社会からの反感を買いました(その後、訴訟に発展)。
ネットの書き込みをきっかけにイメージが悪化したくら寿司
2018年6月に12ヶ月連続の前月割れを記録し、大手回転寿司チェーンの中で「ひとり負け」が続いているくら寿司。その原因として挙げられているのが「サイドメニューの優位性の低下」と「ネット掲示板の書き込み」です。特に後者については、その後、訴訟にまで発展しました。
問題の書き込みがあったのは、2016年3月ごろのことです。内容は「無添くら寿司」という表現について「無添という表現はイカサマくさい」というもの。同社はプロバイダー業者に対し書き込んだ人物の個人情報開示を要求する訴訟を起こしましたが、翌2017年4月には裁判所が請求を却下し、一連の騒動によってくら寿司のイメージは大きく悪化してしまいました。
「バイトテロ」によって売上が落ち込むくら寿司
くら寿司のイメージダウンと売上低迷はその後も続きます。2019年5月には大阪の店舗で、当時アルバイト店員だった少年3名が「いったんゴミ箱に捨てた魚をまな板の上で調理する」画像をSNSに投稿し、これがネット上で拡散、炎上しました。
くら寿司側は少年たちを解雇した上で刑事・民事の訴訟手続きを行ったものの、事件が発生した2月の既存店売上高は前年同月比6.2%減。いわゆる「バイトテロ」によって、同社のイメージ悪化に加速がかかった形です。こうした事態に、専門家からは「イメージの管理や従業員教育の面において適切な対応ができていなかった」と厳しい指摘も寄せられています。
回転寿司業界初の取り組みとは
度重なる訴訟とイメージ悪化を乗り越えているくら寿司。その背景にあるのは、まったく新しい取り組みにチャレンジする姿勢です。2020年2月に「国産天然魚サミット」を開催した同社。全国の水産業者40団体と「持続可能な漁業の発展」を目指した共同宣言を行いました。さらに売り上げの一部(年間1000万円を想定)を漁業振興イベントのために寄付する「漁業創生プロジェクト」に取り組むなど、回転寿司業界初となる試みを積極的に推進しています。
働き方改革を推進するくら寿司
くら寿司は「働き方改革」にも積極的です。2020年11月からは、店舗で働く社員を対象に「最大10連休を年2回取得できる」制度を開始するとのこと。すでに2011年から5連休を年2回取得できる「連休ウィーク」という取り組みを進めてきましたが、さらにそれを拡大した形です。
会議やキャンペーンのスケジュール調整や店長不在時に店舗を本部がフォローするといった「店長が安心して休みを取れる仕組みづくり」や、お客に席を案内する自動案内機を導入して「従業員の作業負荷を軽減する取り組み」も、同社の働き方改革の一環。今後もIT技術の導入などによって、長期休暇の取得をますます容易にしていくそうです。
参考記事:くら寿司で年2回の10連休取得が可能に 店長が休みやすくなる工夫とは
最後に
波乱万丈を経験しながらも、くら寿司の成長・拡大はさらに続いています。ネット上を中心にさまざまな批判を浴びながらも、同社が提供するメニューの魅力に加え、新しい試みにも積極的に取り組む姿勢が消費者に評価されている結果と言えるでしょう。これからも、くら寿司の躍進から目が離せません。