【宅建士監修】不動産価格の推移を解説|不動産売却タイミングを見極める

コラム
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不動産をお持ちの方は、売却タイミングを検討するために市況動向を常に気にしていらっしゃるでしょう。

この記事では、これまでの2023年までの不動産価格推移を解説しつつ、市況の状況次第で不動産売却を検討している方向けの情報を紹介します。

※不動産指数の情報は原則として国土交通省公式ホームページの「不動産価格指数」を参考にしています。また、本記事は情報提供を目的としており、不動産投資・売却・その他の行動を勧誘する目的ではありません。詳しくは記事最下部をご確認ください。

この記事の監修者
宅建士 門傳 義文
宅建士 門傳 義文

メディア実績:日本経済新聞、朝日新聞、テレビ東京「WBS」、TBS「NESW23」、雑誌「プレジデント」など

「不動産をわかりやすく伝える」をコンセプトに、不動産会社「ラインズマン」を設立。メディア「暮らしっく不動産」を運営するほか、相談者とともに悩み、考える住まい選びの“プロ”として活動している。

門傳 義文のプロフィール

監修者門傳 義文先生の解説コメント

「不動産価格が上がった」と感じている方は多いと思います。実際の現場でも「不動産価格の上昇」は強く感じられます。「じわじわと、ずっと上がっている」というのは、都内の不動産業者のほとんどが同じ印象を持っています。私個人が担当した都内の物件も、過去の取引事例を大きく超えて高値で成約に至っています。

では、この価格はいつまで続くのか。見極めるのは難しいですが、その中でも金利水準は一つのポイントとして挙げておきたいです。不動産価格と金利は切っても切れない関係性にあります。価格の大きい不動産は、ほとんどの取引がローンを使って行われるからです。これは実需用不動産、投資用不動産のどちらにも関係します。

日銀の低金利政策から、過去に例のないくらいの低金利というのが今の状況です。低金利政策、異次元緩和などの言葉をニュースなどで見たことがあると思います。住宅ローンでは「史上最低水準」とも言われる商品も出ています(2023年3月現在)。
金利は、景気動向により将来上昇することが予想されます。教科書のような一文ですが、この通り金利は景気動向を受けて変動します。

一例として、フラット35の「民間金融機関の住宅ローン金利推移」を見るとその様子がわかります。1990年頃のバブル期には金利が高かったことがわかります。また、今がいかに金利が低いかということもよく分かります。

出典:https://www.flat35.com/loan/atoz/06.html

上昇の後は、下落です。「下がるとして、どのくらい不動産価格が下落してしまうのか」ということは、お客様からもよく聞かれる話です。「一気に大きくは下落しない」というのは、私の周りの大半の不動産業者がそう予想しています。また、1990年頃のバブル期を知る不動産業者の話では「バブル期のような大きな不動産暴落はないだろう」とも話しています。その理由として、不動産ローンでの銀行の担保評価がしっかりしていることを挙げていました。

しかし、不動産のプロであっても将来の価格予想は難しいものです。不動産価格が大きく動くときは、多くの不動産業者も倒産している歴史があります。昨今では新型コロナウイルスやウクライナ情勢など、予想できないことも起こる世の中です。

市場動向も大切ですが、ご自身の方針なども考慮し、運用や売却の判断をなさることをおすすめします。

2022年(令和4年)までの不動産価格動向

まずはここ数年~2022年(令和4年)までの不動産価格動向について、次の5つの視点から紹介します。

  • 住宅地・戸建て住宅・マンション(区分所有物件)
  • 商業用不動産
  • 南関東圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)の不動産価格
  • 名古屋圏(愛知・岐阜・三重)の不動産価格
  • 京阪神圏(京都・大阪・兵庫)の不動産価格

住宅地・戸建て住宅・マンション(区分所有物件)の動向

令和4年12月28日に国土交通省が発表した最新の情報によると、全国の住宅総合不動産指数は前月比 0.7%増の133.3となっており、全体として上昇基調であることが分かります。

画像引用|国土交通省 不動産・建設経済局不動産市場整備課 令和4年12月28日発表プレスリリース「不動産価格指数、住宅は前月比 0 .7%上昇、商業用は前期比 0 . 8%上昇

不動産価格指数(2010年平均=100とした指数)は住宅地111.6(対前月比0.3%減)、戸建住宅 117.1(対前月比0.0%)、マンション(区分所有)186.7(対前月比1.8%増)で、特にマンションで強い上昇トレンドが見られます。

マンション価格の動向

グラフをご覧いただいて分かる通り、住宅用不動産の中でもマンション価格は群を抜いて上昇しています。

マンション価格の長期的な上昇トレンド要因としては、都市部に人口が集中したことによって大都市圏周辺のマンション需要が高まったことや、マネーリテラシーが向上した層でマイホームも値上がり転売益を狙った資産として物件を選ぶ人が増えたことなどが考えられるでしょう。

住宅地価格の動向

住宅地価格は2010年~2020年上半期までは横ばいでしたが、2020年下半期からは一転して上昇トレンドです。

住宅地価格の上昇要因としては、テレワークが一般化したことにより、都市部から離れたエリアにマイホームを持つニーズが高まったことや、経済全体をとりまく物価高騰に後押しされていることなどが考えられます。

戸建て住宅価格の動向

戸建て住宅価格も2010年~2020年上半期までは横ばいでしたが、2020年下半期からは一転して上昇トレンドです。

住宅価格の上昇トレンド要因としては、次の2つが考えられます。

  • 2021年に起きたウッドショック(木材価格高騰)
  • 新型コロナウイルスからの経済回復に伴う物価高騰(インフレ)

まず、ウッドショックから解説します。

ウッドショック

2021年から始まった住宅用木材価格の高騰を指す言葉。

経済産業省が公表している下記グラフから読み取れるように、2020年下半期を転換点として木材価格の輸入物価指数(2015年=100とした指数)が高騰しました。

木材・木製品・林産物の輸入価格は、2021年12月時点で前年同月比73%もの上昇を記録しました。その結果、住宅価格も高騰しているのです。

なお、ウッドショックの原因自体は複数考えられますが、次のような出来事が影響しています。

  • アメリカ国内での新築住宅需要拡大
  • 新型コロナウイルスによる製材所機能の低下
  • 日本の経済力低下に伴い、輸出国からの優先度低下

なお、2023年現在ではウッドショックはピークアウトしたとも言われていますが、もう少し動向を注視した方が良いでしょう。

つづいて、住宅価格に影響を与えているインフレについても紹介します。

世界的に物価は高騰しており、住宅設備(トイレやキッチン、洗面台など)の価格も上昇しています。また、人件費も上昇しているため、住宅建設に関わる全てのコストが値上がりしていると言えるでしょう。その結果、戸建て住宅価格はここ数年で大きく上昇しています。

商業用不動産の動向

つづいて、商業用不動産の動向について解説します。下のグラフは、商業用不動産の不動産価格指数(2010年平均=100とした指数)です。

画像引用|国土交通省 不動産・建設経済局不動産市場整備課 令和4年12月28日発表プレスリリース「不動産価格指数、住宅は前月比 0 .7%上昇、商業用は前期比 0 . 8%上昇

住宅用不動産ほどではありませんが、商業用不動産もおおむね上昇トレンドにあると言えるでしょう。

ここ数年は景気も上向きなので、ビジネス用不動産の価格も上昇していると考えられます。

南関東圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)の不動産価格の推移

南関東圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)の不動産価格は、2009年から2022年まで次のように推移しています。

年月日住宅総合住宅地戸建て住宅マンション
(区分所有)
2009/0197.998.6101.294.0
2010/0198.297.399.797.6
2011/01101.2107.299.899.3
2012/0199.7102.197.5101.4
2013/0197.196.396.299.3
2014/01100.999.097.2106.9
2015/01103.899.197.6114.1
2016/01108.1101.399.5123.5
2017/01114.3112.0102.0130.7
2018/01113.4107.0101.1134.5
2019/01116.6105.0104.6141.1
2020/01114.397.799.7145.1
2021/01120.8112.8102.3151.4
2022/01131.1113.1113.6167.3
国土交通省公表「不動産価格指数(住宅)」より筆者集計

住宅地と戸建て住宅は2021年からの伸びが顕著です。

名古屋圏(愛知・岐阜・三重)の不動産価格の推移

名古屋圏(愛知・岐阜・三重)の不動産価格は、2009年から2022年まで次のように推移しています。

年月日住宅総合住宅地戸建て住宅マンション(区分所有)
2009/01102.8104.6104.195.7
2010/0198.8100.498.798.6
2011/01100.097.2101.4104.1
2012/0197.093.699.499.7
2013/0194.494.094.5100.4
2014/0196.793.096.3111.3
2015/01101.0100.197.1124.4
2016/0199.891.699.2122.3
2017/01105.798.8103.7131.8
2018/01104.295.599.5141.6
2019/01109.1103.7101.4151.2
2020/01105.089.4100.3153.4
2021/01113.099.7105.9162.0
2022/01113.397.0107.3168.7
国土交通省公表「不動産価格指数(住宅)」より筆者集計

東京近郊と比べると、住宅地価格指数が落ち着いていることが特徴です。一方、マンションは東京近郊同様に大きく伸ばしています。

京阪神圏(京都・大阪・兵庫)の不動産価格の推移

京阪神圏(京都・大阪・兵庫)の不動産価格は、2009年から2022年まで次のように推移しています。

年月日住宅総合住宅地戸建て住宅マンション(区分所有)
2009/01100.8108.898.796.6
2010/0199.8100.698.599.4
2011/0199.996.299.1103.3
2012/0199.897.3100.0100.8
2013/01100.294.6100.4104.2
2014/01102.398.899.5110.8
2015/01104.0100.497.7118.7
2016/01107.096.999.8128.6
2017/01110.4104.8101.2133.2
2018/01112.6105.299.8141.8
2019/01118.1104.6107.0149.4
2020/01118.398.1104.9162.0
2021/01119.9107.6102.6163.0
2022/01133.4119.9114.8178.2
国土交通省公表「不動産価格指数(住宅)」より筆者集計

東京近郊、名古屋近郊と比べて、全ての指数の上昇率が高い傾向にあります。

2025年には大阪万博が開催され、それに伴う鉄道延伸などの開発が進んでいるため、大阪近郊の不動産価格はしばらく上昇傾向にあるかもしれません。

今後の不動産市況に影響を与える出来事・要因

さて、ここまで過去の不動産価格推移について紹介してきました。不動産価格に影響する要因は様々なので、未来の動向を予測することは非常に難しいです。

ただし、不動産市況に影響を与えそうな出来事・要因については、知識として備えておくと良いでしょう。ここからは、2023年以降に不動産価格に影響を与えると言われている6つの要因について解説します。

  • 新型コロナウイルス対策の動向
  • 政府・日銀の金融緩和政策
  • 長期金利の動向
  • 各金融機関の超低金利住宅ローンの動向
  • 大阪万博・大阪IR誘致
  • ウクライナ情勢を含む世界情勢

新型コロナウイルス対策の動向

新型コロナウイルスが流行して3年が過ぎましたが、時代は既にアフターコロナになろうとしています。

2023年春には、新型コロナウイルスの感染法上の位置づけは現在の2類相当から5類(季節性インフルエンザと同等)に移行される見込みです。

コロナによる規制が弱まり、人の往来がより活発化すれば、景気の上向きに後押しされて不動産価格も上昇すると考えられます。

また、感染対策の一環として標準化されたテレワーク・リモートワークは継続する企業が多いことから、書斎や仕事部屋を確保できる郊外の広い住宅へのニーズが高まることも予想されます。

政府・日銀の金融緩和政策

2022年~2023年の物価高騰に伴い、政府・日銀の金融緩和政策の方針に注目が集まっていました。

しかし、インフレの引き締めのために金融緩和政策が縮小されるのではという見立てもありましたが、2023年1月の金融政策決定会合では現状の大規模金融緩和策が維持されることとなりました。

この結果、短期的な変動金利についてはしばらく低い状態が続く見方が広がれば、不動産市況はもう少し活発化するかもしれません。

長期金利の動向(日銀の変動幅上限)

金融緩和政策は継続されましたが、長期金利の変動幅上限はこれまでの0.25%から0.50%へと引き上げられています。

これに伴い、長期金利は2023年1月には一時0.505%まで上昇し、長期金利固定の住宅ローン金利へ影響しています。

仮に住宅ローン金利が上がるとするとマイホーム購入をためらう人が増えることから、このまま金利が上昇し続けると居住用不動産の価格は下降すると考えられるでしょう。

各金融機関の超低金利住宅ローンの動向

長期金利の変動幅上限が上がったことから、大手金融機関では35年固定金利を上げるなど、これまでの超低金利住宅ローン施策から転換する動きが見られます。

しかし、住宅ローンは各金融機関として獲得数を増やしていきたい融資案件のため、大幅な金利上昇は避けたい思惑も見られます。また、短期金利に関しては上昇していないため、今まで以上に変動金利住宅ローンを推奨する金融機関も増えるかもしれません。

しばらくは複数の金融機関で牽制しあうことが予想されるため、注視していく必要があるでしょう。

大阪万博・大阪IR誘致

大阪近郊の土地価格推移を解説した際にも触れましたが、2025年には大阪万博(正式名称:2025年日本国際博覧会)が開催されます。前回の日本開催の万博は2005年の愛知万博なので、20年ぶりの日本開催です。

すでに新型コロナウイルスの流行も収束に向かっていることから、大阪万博では東京オリンピック・パラリンピックよりも多い来場者数が見込まれています。2025年大阪万博の見込み来場者数は開催184日間で2,800万人以上です。(愛知万博の来場者数は185日間で2204万人)

また、大阪では大阪メトロ中央線を万博会場に近い夢洲駅(仮称)まで延伸したり、近隣の橋の拡張や道路の立体交差が行われる予定です。インフラ整備や都市開発が急ピッチで進められており、周辺の不動産市況も活発化していると言えます。

さらに、大阪では万博以外にも、IR(Integrated Resort|カジノや劇場、ホテルなどの施設が集まった統合型リゾート)の誘致も、万博開催と同じ夢洲周辺を候補として推進されています。(大阪市ではIR開業は2029年秋~冬頃を想定していると公表しています。参考:大阪へのIR誘致|大阪市公式HP

そのため、向こう10年~20年単位で、大阪近郊の不動産価格はしばらく上昇基調なのではと考えられます。

ウクライナ情勢を含む世界情勢

2022年2月から始まったロシアとウクライナによる戦争も、日本の不動産市況に影響を与える可能性があります。

すでにヨーロッパではロシアからのガス輸入が減少するなどの事象が発生していますが、今後も両国の紛争がヨーロッパ諸国の経済状況に少なからず影響を及ぼすでしょう。

極度にグローバル化した現代社会においては、海外の経済・金融状況が、日本国内にも波及します。仮にヨーロッパ発で金融不安が起きると、日本の投資家・金融機関も活発な活動はできません。そうすると不動産市況も冷え込み、物件価格が下落する可能性があります。

このように個人ではコントロールできない事象も不動産市況に影響を与えることは覚えておきましょう。

2022年までの不動産市況は上昇傾向|2023年以降のトレンドを注視

さて、ここまで2022年までの不動産市況について紹介してきました。ここ数年の不動産市況のデータを見ると、上昇傾向が続いていると言えます。

ただし、このトレンドが2023年から2024年以降も続くとは限りません。この記事で紹介した不動産市況に影響を与えそうな要因を注視しつつ、物件の売り時・買い時を見極めてみてください。

それでは、この記事のポイントをまとめて紹介します。

住宅地・戸建て住宅・マンション(区分所有物件)の動向

全体として上昇基調。特にマンション価格の伸びが著しい。

商業用不動産の動向

住宅用不動産と同様、上昇傾向。ただし、住宅用不動産ほどの伸びはない。

大都市圏の不動産市況

南関東圏(埼玉・千葉・東京・神奈川):住宅地と戸建て住宅は2021年からの伸びが顕著

名古屋圏(愛知・岐阜・三重):南関東圏と比べると住宅地価格指数が伸び悩んでいる

京阪神圏(京都・大阪・兵庫):全体的に伸びが著しい

不動産市況にプラスの影響を与える要因・主要イベント

新型コロナウイルス対策の規制縮小

政府・日銀の大規模金融緩和政策の継続

大阪万博・大阪IR

不動産市況にマイナスの影響を与える要因・主要イベント

長期金利の上昇

各金融機関の超低金利住宅ローンの縮小

ウクライナ情勢

※不動産指数の情報は国土交通省公式ホームページの「不動産価格指数」を参考にしています。

※本記事は情報提供を目的としており、不動産投資・売却・その他の行動を勧誘する目的ではありません。投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断ください。

※本記事の情報は当メディアが信頼できると判断した情報源(国土交通省など公的な期間)から入手したものですが、その情報源の確実性・正確性を保証したものではありません。

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