不動産所得の経費とは?計上できる項目について徹底解説【税理士監修】

コラム
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副業が一般的となり、アパートやマンション、駐車場などの不動産から副収入を得るサラリーマンも増えてきました。

また、不動産所得は給与所得と相殺できるので、支出をうまく経費計上できれば節税にもつながります。

そのため、どのような支出なら経費と申告できるのか、不動産投資を始める前に知識を身に着けておくことがオススメです。

この記事では、副業として不動産投資を検討中の方に向けて、不動産所得の経費について紹介します。

監修者

税理士 板山 翔
「オンライン専門の税理士事務所」を開業。主なクライアントである従業員5人以下の小さな会社の経営者は、自分で商品・サービスを提供していたり、自分自身がトップセールスマンであったり、とにかく忙しいので、郵送や訪問などの手間がかからない、オンライン専門の税理士事務所を開業した。また、自社の事業を税理士業ではなく、経営に必要な情報をオンラインで提供する事業と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。

※この記事で紹介する内容は、あくまで一般的な内容です。個別具体的な税務内容は、税理士に相談してください。

不動産所得とは

まずは不動産所得の概要について説明します。

不動産所得の概要

不動産所得は、その名の通り不動産を貸し付けることで得た所得のことです。不動産所得に該当する所得は、次の3つです。

(1)土地や建物などの不動産の貸付け

(2)地上権など不動産の上に存する権利の設定および貸付け

(3)船舶や航空機の貸付け

No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁

サラリーマンの副業として不動産所得を計上する収入は、おもに(1)の土地や建物などからの賃料収入がメインでしょう。

不動産所得は、次の式で計算します。

総収入金額 ー 必要経費 = 不動産所得の金額

不動産所得の計算上、収入に該当するは次の4種類です

  • 賃貸料収入
  • 名義書換料、承諾料、更新料または頭金など
  • 敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの
  • 共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など

どのような項目が必要経費として認められるかは、後ほど紹介します。

不動産所得・事業所得・譲渡所得の違い

不動産に関わる収入でも、規模や状況によっては事業所得や譲渡所得として申告する場合があるのか疑問に感じている方も多いでしょう。ここからは、不動産所得・事業所得・譲渡所得について解説します。

収入を計上する不動産の数が増えると、事業的規模で賃料収入を得ていると言われます。そのため、不動産所得ではなく事業所得として申告しなければならないと考えている方もいるかもしれません。しかし、不動産の数が増えても、賃料収入であれば不動産所得に変わりはありません。

賃料を得ている物件数が戸建てはおおむね5棟以上、アパート・マンションはおおむね10室以上を超えると、事業的規模の不動産所得を得ていると判断されます。(一般的に「5棟10室」と呼ばれる基準です)この基準は、事業的規模(青色申告特別控除65万円~55万円を受けられる)か、事業とは呼べない規模(青色申告特別控除10万円を受けられる)かの境目を判定するときに使われる指標なので、規模拡大を考えている方は覚えておきましょう。

また、不動産を売買して得た所得は「譲渡所得」となります。ただし、営利目的で継続的に不動産売買を繰り返すと、その所得は事業所得か雑所得となります。どのような所得で計上するか判断が難しい場合は、税理士に相談しましょう。

経費計上できる支出項目

ここからは、不動産所得を申告する際に経費計上できる項目について紹介します。(※具体的な内容については、申告前に顧問税理士にご相談ください)

一般的に、不動産所得に関わる経費は次の10種類が挙げられます。

  • 税金
  • 保険料
  • 管理会社業務委託料
  • 広告宣伝費、仲介手数料(入居付けの費用)
  • 司法書士や税理士への報酬
  • 減価償却費
  • 管理費
  • 修繕費
  • ローン金利
  • その他(消耗品費や雑費、各種手数料など)

1つずつ解説していきます。

税金

不動産に関わる税金は、経費として計上できます。

具体的には、毎年かかる固定資産税や都市計画税、物件を取得した時にかかる登録免許税・不動産取得税などが不動産所得における経費です。契約に必要な印紙税も、経費計上できます。

また、物件管理時に自動車を使用している場合は、自動車税(重量税)も経費です。ただし、自動車を日常生活にも利用している場合は、使用割合に応じた按分(「家事按分」と言います)が必要です。

一方、個人にかかる所得税や住民税は経費計上できません。また、社会保険料なども経費計上できないので注意してください。

保険料

不動産にかかる保険料も、経費計上が可能です。

例えば、建物にかける火災保険や地震保険などが経費に該当します。

また、昨今の高齢社会でリスクヘッジするために加入するオーナーが増えている孤独死保険などの料金も経費です。

また、不動産取得時の融資に付随した団体信用生命保険(団信)も、経費計上できます。(ローン金利に上乗せされている場合も経費計上可能です)

管理会社業務委託料

物件管理を管理会社に委託している場合は、業務委託料を経費にできます。

集金や入居者対応などをアウトソースする場合は、忘れずに経費計上しましょう。

広告宣伝費、仲介手数料(入居付けの費用)

広告宣伝費や仲介手数料など、入居者付けの費用も経費です。

不動産会社へ支払う費用については、必ず領収書をもらっておきましょう。

司法書士や税理士への報酬

司法書士や税理士への報酬も、経費計上できます。

不動産に関わる登記は司法書士に依頼することになるので、支払い記録を残しておきましょう。登録免許税などは司法書士が立て替え、後から報酬と同時に請求されることも多いです。納税したことを証明する書類も忘れずにもらうようにしてください。

不動産取得の確定申告を税理士へ依頼する場合は、税理士報酬も経費計上できます。個別具体的な税務相談は税理士しか対応できませんので、不安な場合は相談してみてください。

減価償却費

建物の減価償却費も、経費として扱われます。

減価償却とは、建物のように何年も使用するものについて、取得した年に全額経費計上するのではなく、使用可能期間(法定耐用年数)で分割して何年もかけて経費計上していくことです。

建物の耐用年数は、次の表のとおりです。(住宅用や店舗用の場合の期間)

木造22年
金属造(骨格材肉厚が4mmを超える)34年
金属造(骨格材肉厚が3mm~4mm)27年
金属造(骨格材肉厚が3mm以下)19年
れんが造・石造・ブロック造38年
鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造47年
参考:建造物の法定耐用年数一覧 東京都主税局

なお、土地は経年劣化がなく、資産価値が減少しないため、減価償却されません。(経費計上できません)

管理費

建物の管理費も、不動産収入を得るための経費です。

管理費は、物件の共用部分の清掃費用などが該当します。

例えば、共用部分の清掃・点検のために掃除用品などを購入した場合も、経費にできるということです。また、清掃会社に委託している場合も、管理費として経費になります。

修繕費

修繕費は、物件の原状回復やリフォームに使う費用です。ただし、物件の価値を上げるような工事の費用は資本的支出と呼ばれ、いったん資産として計上して、減価償却していく必要があります。

例えば、ガス式キッチンが古くなった場合で考えると、今までと同じグレードの設備と交換する場合は修繕費です。一方、オール電化に変更する場合は、グレードアップとみなされ資本的支出になる可能性もあります。

修繕費と資本的支出の具体的な判断は、税理士に相談しましょう。

ローン金利

物件購入時に組んだ融資の金利も、経費として計上できます。ただし、返済額全てを経費として計上できるわけではないので、注意してください。

返済額のうち、元本は経費ではありません。返済額から元本分を引いた利息分のみ、経費計上が可能です。

また、不動産所得が赤字で損益通算する場合、土地購入の融資にかかる金利の取扱が複雑になります。

建物や設備部分の融資にかかる金利は経費計上でき、損益通算(給与所得などと相殺すること)も可能です。一方、土地分の金利も経費計上は可能ですが、不動産所得がマイナス(赤字)の場合は、損益通算の対象にはなりません。

元本経費にできない。
建物・設備分の金利経費にできる。損益通算もできる。
土地分の金利経費にできる。不動産所得がマイナスの場合は損益通算できない。

詳しい計算は、税理士に相談して申告しましょう。

その他

その他の項目として、通信費(スマートフォンやPCに関わる費用など)や旅費・交通費(物件取得時の内見など)も経費です。ただし、家事按分が必要な場合もあるため、スマートフォンなどプライベートでも利用する機器の費用の計上方法は注意してください。

また、不動産投資のために必要な情報を集めるための新聞・書籍・セミナー・コンサルティング費用なども、経費計上できる場合もあります。ただし、後述しますが、宅建などの資格取得に関わる費用は経費にできません。

判断に迷う場合は、税理士や税務署に相談することがオススメです。

経費計上できないもの

ここからは、不動産所得の経費にできない支出について紹介します。

個人にかかる税金(所得税や住民税)・社会保険料

所得税や住民税など、個人にかかる税金は経費にできません。

不動産所得の経費は、あくまでも不動産からの収入(利益)を得るために必要な支出です。

所得税や住民税などは、不動産収入から必要経費を差し引いた後の不動産所得(利益)にかかる税金なので、再度経費にできないということは覚えておきましょう。

また、税金と同じく、個人にかかる社会保険料(健康保険や年金保険などの公的な保険)も、経費にはできません。

資格にまつわる費用

宅地建物取引士やマンション経営管理士、賃貸不動産経営管理士など不動産投資と関連する資格にまつわる費用も、経費にはできません。

これらの資格は「個人の価値向上」のためとみなされるためです。

不動産投資についての情報収集代(新聞や書籍)は経費ですが、資格勉強用のテキストは経費にならないと覚えておきましょう。

日用雑貨

その他、日用雑貨の支出についても、不動産所得の経費と混同しないようにしましょう。

例えば、不動産情報を管理するためにクリアファイルを購入した場合は経費ですが、日常用にクリアファイルを使用したら経費にはなりません。

支出を明確に分けるためには、不動産投資用の財布(口座やカード)を分けるなどの対策がオススメです。

経費計上の計算が複雑な支出

不動産所得には、経費計上の計算が複雑な支出もあります。特に、次の2項目はデリケートな内容なので、よく理解しておきましょう。

  • 修繕費と資本的支出
  • 家族への給与

修繕費と資本的支出

修繕費の項目で触れましたが、物件の価値を上げたり、使用可能期間を延長させたりする工事費用は資本的支出として減価償却しなければなりません。

一般的には次の基準で修繕費と資本的支出は分けられているので、参考にしてみてください。(判断が難しい場合は税理士へ相談しましょう)

修繕費

  • おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良
  • 1つの修理、改良などの金額が20万円未満
  • 60万円未満またはその資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下(資本的支出か修繕費か明らかでない金額の場合)

資本的支出

  • 建物の避難階段の取付けなど、物理的に付け加えた部分の金額
  • 改造または改装に直接要した金額(用途変更のための模様替えなど)

家族への給与

不動産収入から家族へ給与を支払う場合、その費用は原則として経費にできません。

ただし、青色申告者であれば、青色事業専従者給与として家族への給与支払いも経費にできます。なお、事前に税務署に届出書を提出しておかなければ経費として認められないので注意してください。

さらに、その家族が15歳以上でなければならない、年の半分以上はその事業に専ら従事(主にその事業の仕事をしている)していなければならないなど要件も厳しいため、青色事業専従者給与の処理については税理士に相談することがオススメです。

また、青色申告であれば、不動産所得の金額から65万円または10万円を上限として青色申告特別控除も受けられます。

ただし、青色申告者でかつ家族への給与を経費にするためには、不動産所得が事業的規模(5棟10室基準を満たす規模)でなければなりません。

サラリーマンの副業としての不動産投資であれば、原則として家族への給与は経費にできないと考えておいた方が良いでしょう。

まとめ

不動産所得は給与所得と相殺(損益通算)できるので、支出をうまく経費計上したい方も多いでしょう。

不動産所得で経費となる代表的な支出は、次の通りです。

  • 税金(不動産にかかるものに限る)
  • 保険料(不動産にかかるものに限る)
  • 管理会社業務委託料
  • 広告宣伝費、仲介手数料(入居付けの費用)
  • 司法書士や税理士への報酬
  • 減価償却費
  • 管理費
  • 修繕費
  • ローン金利
  • その他(消耗品費や雑費、各種手数料など)

しかし、どのような支出でも経費計上できるわけではありません。特に、次の3つは経費と混同しやすいので注意してください。

  • 個人にかかる税金(所得税や住民税)・社会保険料
  • 資格にまつわる費用
  • 日用雑貨

不動産投資を始める際は、この記事で紹介した内容を参考にしながら顧問税理士とも相談しつつ日々の経費管理をしてみてください。

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