専門性を高めるために勉強と仕事に追われ、多忙な毎日を送る後期研修医。ハードワークが続いて疲弊したり、職場の複雑な人間関係などに辛さを感じたりするなどで、つい「今の仕事を辞めて環境を変えたい」などと思ってしまうことも、一度や二度ならずあるのでないでしょうか。
本記事では、そうした転職をお考えの後期研修医の方向けに、さまざまな働き方の選択肢についてご紹介します。今後の参考のために、ぜひご一読ください。
若い医師の一般的なキャリアパス
昔は、医学部を卒業した医師のほぼ100%が医局に属し、組織が敷いたレールを順当に進み、医師としての研鑽を積んでいくのが当たり前でした。今はこうした従来的な型にはまらず、より主体性をもって独自のキャリアパスを描こうと動く医師が増えています。
大学卒業後の医師が一般的にたどるキャリアパスとして、「初期研修」→「後期研修」(専攻医)→「専門医」というルートが考えられます。
卒後最初の2年間は、必ず初期研修を受けることが法律により義務付けられています。所属する病院にもよりますが、基本的に内科、小児科、産婦人科、外科などの各科をローテーションで回りながら、医師としての働き方や心構えなどの基本を学んでいくのです。
初期研修が修了すると、卒後3〜5年間の後期研修医(専攻医)がスタートします。後期研修に関しては法律上の縛りはありませんが、興味を持った専門科での専門医資格取得を目指して学びや経験を深められる時期でもあれば、診療の現場において実働部隊としての活躍が始まる時期でもあります。
研修先は大学の医局や一般病院、大学院に所属してなど、それぞれのキャリアパスにより異なります。
後期研修が修了して、専門医試験に合格後は、さらなる経験を積みながら専門性を深めていくことになります。
後期研修医が職場を辞めたいと思ったときの選択肢
まだ研修中の身である後期研修医が今の職場を辞めたいと思った時、実際の可能性として、どのような選択肢があるでしょうか?
転職して新しい職場に移ることもできれば、別の専門科に転科して心機一転やり直すことも可能。あるいはアルバイトで生計を立てる道もありますが、いっそ開業という手もあります。
それぞれのメリットや考えるべきポイント、注意点について見ていきましょう。
転職する
今の研修先に満足していない場合、別の医局や医療機関に転職し、後期研修を続けることが可能です。新たな環境で、リフレッシュして再スタートを切ることができます。
転職先、たとえば大学病院の医局か一般病院かの違いによって、研修の内容もメリットも変わってきます。医局では、各専門分野の医師から指導を受ける環境で学べる一方、一般病院なら臨床経験を積む機会がより多いなどの違いが出てきます。専門医の資格取得を目指している場合は、「新専門医制度」で認定された施設で学ぶ必要があります。
そのため、転職先は慎重に選択することが肝心です。まずはしっかりと自分のキャリアパスを描きましょう。開業するのか、一般病院で臨床経験を積んでいくのか、医局という組織の中でキャリアアップしていくのか。この部分があいまいだと、転職をして再び環境が合わず、再度転職を繰り返すことになった場合、経歴に悪いイメージがつきかねません。
転科する
「今の科が自分には合わない」「他の診療科にも興味を持ったので勉強したい」「ハードワークで体力的にきつい」。こうしたケースで転職まではしたくない場合、別の科に転科する、という選択肢があります。
ただし、転科はメリットばかりではありません。それまで積んできたキャリアが活かせなくなるリスクがあります。新たな科で、また一から勉強を始めるために労力を費やすことになります。前の科に属する医師たちから理解を得られず、それまでの人間関係が壊れる可能性もあります。
このように、転科も簡単に決断できる事柄ではありません。自分が進みたいキャリアパスを慎重に熟慮した上で、最も条件を満たす専門科を選びましょう。
アルバイトをする
退職したら、他で再就職せずに、一時的にフリーランス医としてアルバイトや非常勤勤務で生計を立てていくことも可能です。
ただし、アルバイトの内容次第で、緊急時の対応が必要など、即戦力が求められる場合もあります。その点で、経験が浅い研修医は苦労する可能性もあります。
あまり経験やスキルが問われない現場、たとえば健診や献血などのアルバイトを続けながら収入を得ていく方法もあります。ただし、今後のキャリアアップを考えた場合、フリーランス医はあくまでも時的な働き方としてとらえることをお勧めします。
後期研修医は、現在の職場にとどまり続けながら、アルバイト代で収入を増やすことも可能です。外部で医師としての経験の幅を広げ、自信を培う上でよい機会となります。
スポットアルバイト
1日、あるいは数日間など、単発で不定期な働き方が、スポットアルバイトです。普段の業務の隙間時間を利用して勤務し、収入を得られるというメリットがあります。年末年始などは高時給のアルバイト代が期待できます。
ただし、アルバイトの場所が頻繁に変わるため、都度新たな環境やスタッフに順応する臨機応変さが求められる点は、注意すべきです。転職サイトやエージェントを活用することで、希望の条件に合ったスポットアルバイトを簡単に探し出すことができます。
定期非常勤アルバイト
数ヶ月、あるいはそれ以上の長期間、毎週あるいは隔週など、定期的な頻度で勤務することが可能なアルバイトです。週の決まった空き時間を利用して勤務することでより安定した収入を得られる上に、同じ環境で、同じスタッフと連携しながら働けること、多くの症例に接して医師としてのキャリアアップが図れるなど、さまざまなメリットがあります。
一方で、定期的な勤務となるため、スポットアルバイトほどの自由度がないことに気をつけましょう。
開業する
他の職場に転職せずにいっそ開業するという手もあります。通常は卒後10数年かけて勤務医として働きながら研鑽を積んだのち、開業するパターンが一般的です。しかし、研修医のうちに開業するケースも皆無ではなく、法律的にも問題はありません。
これからの医師は、若いうちから自発的に独自のキャリアパスを切り開いていくことが大切です。その点で、開業医は、医師としても経営者としても、より自由なキャリアアップが見込めます。
一方で、圧倒的な経験不足は否めないことが、開業の決断を左右するポイントといえます。ただし、考えようになっては、若いうちに開業したほうが、病院の土地建物、設備やスタッフの雇用などに投資するコストをより早く回収できるなど、有利に働く側面もあります。
まずは転職サイト・転職エージェントに登録してみるのがおすすめ
職場を辞めたいと思ったとき、まずは転職サイトや転職エージェントに登録してみるのがおすすめです。
転職サイトは、掲載中のさまざまな求人情報をユーザーが検索して、気になった求人に手軽に応募できるサービスです。一方、転職エージェントでは、コンサルタントなどと呼ばれる専任の担当者が、求職者と面談して希望や経歴をもとに求人を紹介し、転職先との間で面談の調整や、面談への同席のサポートなどを提供します。
いずれのサービスでも多くの情報が集まるので、雇用の動向をつかみやくなるとともに、希望や経歴に沿って、的を絞って求人の紹介を受けられる分、効率的に活動できます。不慣れな転職活動で受けられるプロの助言には大きな価値があります。
それでは、後期研修医の転職活動におすすめの転職サービスを、以下に3つご紹介します。
民間医局
株式会社メディカル・プリンシプル社が運営する、医師専門の求人紹介を主体とする総合サービスです。
民間医局では、研修医向けの研修病院情報サイト「レジナビWeb」を運営しており、質・量共に充実した情報の中から、自分のニーズに合った研修プログラムを探すことができます。また、研修医向けにスポット・非常勤のアルバイト紹介も行っています。さまざまな働き方を模索する上でも、ニーズを満たしてくれるサービスです。
さらに、民間医局は後期研修医に便利なさまざまなサービスを展開しています。例えば、医師賠償責任保険やドクターズマガジン、メールマガジンなど。不安もしっかり解決しながら、今後の働き方が考えられるでしょう。
医師転職ドットコム
株式会社メディウェルが運営する、国内最大級の求人数を抱える医師専門転職サイトです。これまで4万人以上の医師の転職活動を支援してきた実績があります。常勤の求人に加え、豊富な数の非常勤求人、また非公開求人も充実しています。
コンサルタントから、医師のスキルや経験などを元に客観的な自己分析を受けることで、自己の市場価値を確認し、適切なキャリアプランと適切な求人の提案を受けることができます。求人先との条件交渉等は、コンサルタントが代行します。
転科や専門医資格の取得、非常勤やスポットのアルバイト探し、キャリアカウンセリングなど、研修医が抱える各種ニーズにもコンサルタントが対応してくれる点も、転職初心者の研修医にとっては心強いポイントです。
リクルートドクターズキャリア
リクルートメディカルキャリアが運営する、医師専門の転職支援サイトです。転職業界大手としての実績によって培われた信頼、業界トップクラスの求人数を誇り、非公開求人は1万件以上。優良求人数が多いことも魅力です。検索条件に「後期研修医歓迎」があるので、よりスムーズに求人が見つけられるのも安心なポイントです。
転職経験のない研修医に対して、経験豊富なキャリアアドバイザーが、希望のキャリアプランに応じて親身に相談にのります。新しい研修先探しや転科、非常勤のアルバイト探しなど、転職以外のさまざまなニーズにも対応。求人提案、面接調整、条件交渉、着任までのフォロー、入職後のアフターフォローにも対応してくれます。
また、承継開業支援サービス「ヒキツグ」も展開しており、初期費用をなるべく抑えて開業したいと願っている医師には利用価値が高いといえます。
後期研修医はキャリアパスを慎重に決めよう!
ここまで、後期研修医が「職場を辞めたい」と考えている場合、さまざまな選択肢があることをご紹介しました。
今の研修先を辞めて、今回ご紹介したいずれかの選択肢を選ぶにしても、それぞれに異なるメリット・デメリットが伴うため、進みたいキャリアパスを明確にした上で、慎重に決断することが大切です。そのためにも、本記事の内容が少しでもお役に立ちましたら幸いです。