「VR元年」といわれた2016年から、はや2年。VRは着々と浸透しつつある。

今回は、VRで女性と戯れることで、不倫願望から解放された男性の話を紹介する。2018年現在、あなたはどう思うだろうか。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)

消えた不倫願望
VRゴーグルのパワーとは

 不倫願望が強いAさん(38歳)という知り合いがいる。

 願望が強いものの、良心のかしゃくやリスクへの尻込みから結局不倫をしたことはなく、これからもしないであろうと思わせる男性である。しかし会えば「先日知り合いになった誰々がかわいかった」と口を開き、ふた言目には「抱きたい」と身をよじるので、私がひたすら「本当にそうですね」「その通りだ」と相槌(あいづち)を打つ。おおむねAさんと会うとこうしてカウンセリングのような時間を過ごすのが常であった。

 ある日のこと。そのAさんが、彼にとってほぼ挨拶と同義である不倫願望を口にしない日があった。開口一番「VRゴーグルがすごい」と興奮した様子で報告してきたのである。

 その日から約半年が経ったが、経過を観察するにAさんの不倫願望はすっかり鳴りをひそめたようで、代わって「VRゴーグルがすごい」という興奮をぶつけられ、私がひたすら「それはすごい」「大したものだ」と相槌を打つのが“新機軸”となった。

 過ぎし2016年は「VR元年」だったそうだ。

 当時の記事を振り返ると「これからVR(仮想現実)がじゃんじゃん流行りますよ」という業界的な意気込みと見通しが伝わってくる。

この年は東京ゲームショウでVR関係の作品が席巻し、また『PlayStation VR』(※以下『PSVR』)が発売となって話題を呼んだ。複数のアミューズメント施設でVRを利用したアトラクションがオープンし、戦うガンダムの手にしがみつく体験ができるものなどがあった。

 2年たち、果たしてどれくらいの勢いでVRが広がってきているのかわからないが、少なくともVR元年からブームが下火になっていることはなさそうである。AさんのようにVRの魅力に衝撃を受けて布教活動をする人も増えてくるであろう。「VRはじわじわ浸透してきているのではないか」というのが個人的な印象である。

 しかしAさんの核と呼んでも差し支えなかったあの不倫願望を雲散霧消させてしまうとは、VRの秘めたる力はそこまですごいものなのであろうか?

 VRのすごさについてAさん本人の口から大いに語ってもらいたいと思う。

人生を変えたVRゴーグル
当初はゲーム目的で入手

 そもそもVRの歴史は浅くないようであるが、一般に浸透するであろう気配が濃厚になったのがVR元年の2016年であるらしい。PSVRに代表されるように、それまで高価であったVRゴーグル(VRグラスやVRヘッドセットなどとも呼ばれる)が一般ユーザーにも求めやすい価格となって市場に参入してきたのは大きかった。

 昔から各時代でVHS、DVD、インターネットなどの目新しいガジェットの普及をけん引してきたのはエロのパワーであった。エロを求める男性の勢いは強大で、「新しくてよくわからないものが出てきたがとりあえずエロそうだから」と飛びついてみるのである。

 今回VRに関する記事を書くにあたって筆者も知識を少し深めておこうとネットサーフィンしてみたところ、「アダルトな動画のためにVRゴーグルを購入する人も多いのではないでしょうか」といったフレーズを伴ったVRゴーグル紹介記事が散見された。蛇足だが、「○○な人も多いのではないでしょうか」はネット記事の慣用句であり、筆者も無記名の記事を書く際によく利用する、頭を使わないで使用できてとりあえずそう言っておけば収まりがいい便利なフレーズである。

 さて、「アダルトな動画のためにVRゴーグルを──」とは、“いかにも”なことを言われてしゃらくさい気もするが、まさしく「いかにもその通り」であり、的を射ているからぐうの音も出ない。世の中はそのように運営されてきて、おそらく今回も例に漏れずエロがVRをけん引するのである。

 しかし、Aさんはといえば入口がエロ目的ではなかった。彼は常々ゲームを愛好しているので、では話題のVRゲームを1回体験しておこうかとPSVRの購入に至ったのであった。

 あわせて買ったソフトが海で泳ぐものと車でドライブするものの2つで、Aさんは早速ヘッドセットを装着してゲームの世界へと赴いた。「これはすごい」とAさんは思った。想像以上にリアルであり、ヘッドセットの中にもうひとつの現実が存在しているかのようであった。

 ドライブが好きなAさんは主にそちらの方のゲームをいじって遊んでいたが、段々気分が悪くなってきた。俗にいうVR酔いである。VR体験に慣れることで耐性がついていくことも珍しくないようなので、Aさんは悲観せず目を閉じてベッドに横になっていた。気分がよくなったら再開するつもりであった。

「なかなか面白い」とAさんはひとりごちた。

「これからのVRゲームがますます楽しみだ」とも思い、胸が高鳴った。VR酔いが克服できたら他の欲しいソフトも買っていこうと考えた。

 その時Aさんの頭をあるひとつの思いがかすめたのである。「そういえばVRのエロ系はどんな感じなんだろう?」と。ただの好奇心でのぞいてみた世界がのちにAさんを虜(とりこ)にするであろうとは、彼はこの時知る由もなかった。

偶然たどりついた桃源郷
女子高生に囲まれるVR体験

 男性諸氏にはおなじみとなっている総合アダルトサイト「FANZA」(旧DMM.R18)にログインしたAさんは、VR動画の無料お試し作品を見てみることにした。その仮想現実世界の中で学校の教室の一席に座ったAさんは、周りをぐるりと囲んだ女子高生姿の女性たちに下着を見せつけられるという壮絶な体験を果たす。

「これはすごすぎる…!」とAさんは思った。その衝撃は先ほどVRゲームを初プレイした時の比ではなかった。この時の感想はAさん本人の言葉で語ってもらおう。

「本当に『そこにいる』感が半端なくて…。手を伸ばせば触れるんじゃないかと本気で思った。

みんなめちゃくちゃかわいいし、すごい目が合って。『俺のこと好きなの?俺も好きだよ!』という気分になり、高揚感で頭が真っ白になった」(Aさん)

 検討するいとまもなく、Aさんの指は自動操縦で巧みにマウスを操って月額3980円の動画見放題プランへと入会していた。それから、奥さんがしばらく出かけているのをいいことに1人で何度もアダルトVRを楽しんだ。とにかく大変盛り上がったらしい。何しろ“負傷した”ほどだったからだ。

>>(下)に続く

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