テレビを選ぶときに、必ずチェックするのが画面の大きさであろう。ところで、画面サイズ表示を見ると、ブラウン管テレビの時代から、「○型」となっている。

しかし、テレビの画面サイズの単位は「インチ」のはず。どうしてインチではなく型なのか、テレビメーカーのパナソニックに聞いた。

――そもそも、画面サイズの単位をメートル法ではなく、インチを使用した理由は?
「確かに、国際規格であるメートル法がありますが、他方、英国や米国ではデファクトスタンダード(事実上の標準)になっているインチやヤードがあります。テレビは米国発であったので、サイズ表記にインチを用いたのが現在まで残っていると言われています。日本でも、当時のデファクトスタンダード表記をそのまま採用したという感じですね。同じような例として、英国発のゴルフでも、メートル法ではなくデファクトスタンダード表記のヤードを使用しています」

――そういう経緯で、単位がインチになったのに、日本で「○型」という画面サイズ表記になったのは?
「とはいえ、インチは欧米のデファクトスタンダード。
当然ながら、日本ではインチという単位は浸透していません。なんのことやら、まったくイメージが湧かない。そこで、画面サイズを表すためにモノの形状を現す『型』という日本独特の表記に置き換えたのです。それが現在でも残っているというわけです」

――欧米圏ではインチ。日本は「型」ですが、中国や韓国などアジア圏では?
「欧米と同じようにインチを使用しています」

――薄型テレビの時代になってから、「○V型」という表記になったが、「V」はどういう意味?
「Vはvisualサイズの意味で、表示画面の対角線の長さを指しています。ブラウン管テレビの時代のサイズ表記は表示画面の対角線の長さではなく、ブラウン管の外寸だったことと区別しているわけです。
つまり、32型のブラウン管テレビと32V型の液晶テレビでは、32V型のほうが表示画面が大きいのです」

なるほど、「型」が生まれた背景には、欧米由来のインチにどうしても馴染めない日本人に、なんとか画面サイズを認識してもらおうという狙いがあったわけだ。さらに、なにげについているVにも、新しいテレビ時代ならではの意味があったとは。
今後も日本人として「型」にこだわっていくべきか。それは後世に委ねたい。
(羽石竜示)