総勢90名を越えるバーチャルライバー(VTuber)が所属し、YouTubeでの配信を中心に、ゲーム実況、雑談、歌、独創的な企画番組などのエンタメを毎日提供しているVTuberグループ「にじさんじ」。12月8日には、2度目の単独音楽イベント「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」を開催。
全15名の人気ライバーが約6000人のファンの前に、全身の動きを表現できる3Dモデルの姿で現れて、歌声を披露した。
ライブ終盤では、月ノ美兎樋口楓ら4名のメジャーデビュー、数々の人気曲を手がけてきたクリエイター陣も参加するにじさんじオリジナルフルアルバム発売全国Zeppツアー開催といった新情報を発表。2020年からの本格的な音楽シーン進出を印象づけた。
今回は、全23曲、約2時間40分の公演をダイジェストでレポートする。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
アンコールでは、月ノ美兎、樋口楓、静凛、剣持刀也、勇気ちひろ、える、鈴鹿詩子、森中花咲、椎名唯華、笹木咲、ジョー・力一、鈴原るる、夢月ロア、御伽原江良、戌亥とこが「Virtual to LIVE」を歌った

戌亥とこ、歌声で両国国技館の時間を止める


ライブは、MCを挟んだ5つのパートとアンコールで構成。各ライバーはソロ曲とコラボ曲を歌っていく。
第1パートの出演者は、剣持刀也勇気ちひろ椎名唯華笹木咲
笹木は、にじさんじの全動画中最多の約346万7000回再生されている替え歌動画「笹木は嫌われている。」の原曲「命に嫌われている。」をカバーした。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
10歳の魔法少女、勇気ちひろは、剣持刀也とのデュエットで「ダンスロボットダンス」、ソロでアニメ「幼女戦記」のED「Los! Los! Los!」をカバー。特徴的な可愛い声で、難易度の高い2曲を歌いきった

第2パートの出演者は4人全員が3Dモデル初披露。
夢月ロアは、13歳の悪魔。スタイルの良さが際立つ3Dの身体で、男女の駆け引きを描く「恋愛裁判」を歌ったが、初めて披露した歌声も普段の配信で聴く話し声より大人っぽい雰囲気を感じた。
鈴原るるは、柔らかい口調で話しながら、高難度のゲームに長時間挑み続ける配信で注目された女子大生ライバー。歌ったのは、「secret base〜君がくれたもの〜」(夢月ロアとのデュエット)と、アニメ「時をかける少女」の主題歌「ガーネット」
3Dモデルは、配信では見ることのできなかった鈴原の手足の動きのしなやかさも表現していた。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
夢月ロアと鈴原るるは、アニメファンには「あの花」のEDとしておなじみの名曲「secret base〜君がくれたもの〜」をカバー。背中合わせから始まり、背中合わせで終わる振り付けも完成度が高かった

第2パートの4曲目、戌亥とこ「小さきもの」をアカペラで歌い始めると、常に大きな歓声とサイリウムで演者を出迎えていた観客が静かになる。冒頭のアカペラパートが終わっても静かなまま。大きな歓声が聞こえ、サイリウムが激しく振られたのは、戌亥が歌い終えた後だった。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
歌動画や歌配信などで、大半のにじさんじファンには歌唱力の高さを認知されていたはずの戌亥とこ。しかし、初めてのライブでは、両国国技館という広い会場に負けない歌声を披露した

戌亥の歌声の余韻を断ち切る明るいイントロと一緒に、女子大生ライバー御伽原江良が登場。戌亥と一緒に「オトモダチフィルム」をデュエットした。
御伽原からのラブコールを戌亥がスルーするため、ネットを介したコラボしかしてこなかった二人が同じ空間に並ぶ。終盤、「会いたかったよ」とデレも見せた戌亥だったが、曲が終わると「はい、終わり。おつかれー」と退場。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
御伽原江良本人だけでなく、2人のファンも期待していた戌亥とことのデュエット。深みのある戌亥の声と華のある御伽原の声は相性も良い。3Dモデルもハイクオリティで、向き合って手を振るダンスも息があ

一人残された御伽原のソロ曲は「おねがいダーリン」。早口のセリフパートをミス無くこなし、歌声は可愛いく、ダンスにもキレがあり、まさにバーチャルアイドル。残念ながら、今回は曲の途中で終了となったが、ぜひまた観たいと思わせるステージだった。


道化師ジョー・力一のロングトーン、両国に響く


第3パートは、静凛鈴鹿詩子森中花咲えるの4人が出演。えるのソロ曲「MESMERIZER」は初披露のオリジナル曲。配信での賑やかな印象とは異なる歌声で会場を沸かせる。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
人気ボカロ曲「千本桜」を歌った静凛。VTuber界有数の美声の持ち主だが、配信で歌うことは非常にレアで、個人の歌動画なども公開していない。ライブは「しずりん」の美しい歌声が聴ける貴重な機会

第4パートの1人目は、女性人気も高い美声の道化師ジョー・力一(りきいち)。ソロ曲は、布施明の「君は薔薇より美しい」。以前、投稿したネタ動画(股間のアップで終わる)で歌った昭和歌謡を真面目に歌う。力一は、サビの「変わったー」を一緒に歌って欲しいとアピール。
客席も巻き込んだ「変わったー」の合唱が繰り返されるが、ラスサビでは10秒近いロングトーンを披露。ファンの歌声は途中で振り切られ、歓声へ変わった。

にじさんじの看板ライバー「委員長」こと月ノ美兎は、VTuberアニメ「バーチャルさんはみている」のOP「あいがたりない(feat.中田ヤスタカ)」をソロでセルフカバー。配信では、マニアックなネタでリスナーを驚かせることも多いが、ライブでは小柄な身体で踊る姿も歌声も可愛らしい夢のバーチャルアイドルだ。

力一&委員長がどんな曲を歌うのか想像していると5人のライバーが登場。センターの力一の左には、月ノ美兎樋口楓
右には、鈴原るるえる。イントロと同時に全員が拳を振り上げ始め、「はい!はい!」とコール。女性陣の「林檎もぎれビーム!」という叫びを聴いて、大槻ケンヂと絶望少女達(出演キャスト)の「林檎もぎれビーム!」(アニメ「懺・さよなら絶望先生」OP)だと分かった。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
ステージに登場した、ジョー・力一とにじさんじ少女達。白いスーツ姿の異形の道化師は、長身を激しく動かしながら熱唱し、豪華メンバーのコラボの中でも主役を務めた

豪華メンバーのコラボ曲でも主役だったのは力一。昭和歌謡からラウドロックに変わったことで歌声はさらに力強い。メインボーカルを支える4人のダンスとコーラスも個性的。小林ゆう(木村カエレ役)ポジションの樋口は、本家に負けじと激しくシャウト。鈴原は、激しい曲調でも一つ一つの動きが美しく、歌声も可愛さを失わない。ラストには、力一が再びロングトーンを響かせた。

にじさんじライバーがメジャーレーベル4社からデビュー決定


委員長、樋口、力一の3名のMCパートでは、5人でのコラボが実現した経緯などが明かされた。「林檎もぎれビーム!」の選曲は力一の希望で、絶望少女達をやってくれるメンバーを募集したそうだ。激しいダンスを披露した委員長は、練習で腰を痛めたことを明かし(本番までに完治)、力一が長身を折りたたむようにしながら手を合わせて感謝する一幕も。
続いて、月ノ美兎、樋口楓、森中花咲&御伽原江良のユニット「petit fleurs」の3組4名のメジャーレーベルデビュー決定が動画で発表。森中と御伽原も再登場し、メジャーデビューに対する思いなどを語った。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
月ノ美兎はSony Music Labels、樋口楓はLANTIS、御伽原江良&森中花咲のユニット「petit fleurs」はNBCユニバーサル・エンターテイメントからのメジャーデビューが決定。詳細は、順次公開予定だ

「大好きだった」アニソンレーベルLANTISからのデビューが決まった樋口は、来年発売されるデビューシングルの収録曲「MARBLE」を先行初披露。アニメのOPにもなりそうな疾走感あるメロディは、樋口のボーカルと好相性。1stワンマン「KANA-DERO」をはじめ大きな舞台に何度も立った経験からか、ステージを広く使いながらファンを煽って引き込むスキルも高い。
ライブ本編は、樋口楓、月ノ美兎、静凛の人気ユニットJK組による「dream triangle」で締めくくられた。
にじさんじバーチャルライバー集結「Virtual to LIVE in 両国国技館 2019」レポ
月ノ美兎、樋口楓、静凛のJK組が歌った「dream triangle」は、元々はファンメイドの曲。後に3人の歌動画が公開され、今年1月の樋口楓1stワンマンライブ「KANA-DERO」でライブ初披露された

アンコールには出演者が全員集合。ライブのタイトルであり、にじさんじのアンセムとしても定着しつつある「Virtual to LIVE」を歌って、2度目の単独ライブを終えた。

会場の照明が落ちた後、スクリーンに「にじさんじより重大発表!」の文字が。
まずは、メンバーはまだ秘密のユニット「Rain Drops」がユニバーサルミュージックのレーベル「Virgin Music」からデビューすることを発表。
続いて、2020年春のにじさんじオリジナルフルアルバム「SMASH The PAINT!!」発売も発表。豪華クリエイター陣と22人のライバーの組み合わせも紹介された。
最後に、全国Zeppツアー「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!」の開催決定も発表。
ファンにとっては今年最後の運試しともいえるチケット争奪戦は、すでに始まっている。
(取材・文=丸本大輔)