TERU|太陽のごとく全方位を照らすフロントマン 配信ライブシリーズへの想い<GLAY特集>

歳を重ねるごとに魅力を増すTERUの歌声

メジャーデビュー25周年イヤー。本来ならば祝祭ムードだったはずの2020年、コロナ禍で思わぬ被害をこうむっているのは、ベテランロックバンドGLAYも例外ではなかった。

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5月に予定していたナゴヤ、東京ドーム計3公演は4月に中止を発表。
ツアーファイナルの札幌ドーム公演は決行を目指し尽力していたが、一旦払い戻しの上さいたまスーパーアリーナへと会場変更、2DAYS開催することが発表されたばかり。

重いニュースではあったが不思議と悲壮感を感じなかったのは、メンバー全員が納得して導き出した答えなのだろうと容易に想像できたから。この「“顔”が見えるバンド」の中心に立つ象徴的存在が、ヴォーカルのTERU。'88年、故郷・函館で幼馴染のTAKUROにバンド結成を持ちかけられタッグを組み、ドラマーからヴォーカリストへと転身。以来、その唯一無二の歌声はGLAYの音楽をGLAYたらしめる決定的要素であり続けている。

圧倒的な明るさと人懐っこさ、思い立ったらすぐ行動に移す実行力の持ち主であり、その名の通り太陽のように全方位を強い光で照らすフロントマン。
災害に見舞われ困っている人がいれば、東北であれ熊本であれ、文字通りすぐ飛んでいったTERUのフットワークの軽さはファンの方々ならご承知の通り。

その人柄同様、歌声は遠くまでよく通り、心の奥深くまで届く。凛として艶やかでありながら時折ハスキーにもなる多彩な声色を持ち、限界を突破するように叫ぶ渾身のハイトーンに加え、色気のある柔らかいファルセットにも磨きを掛けた。ヴォーカリストTERUの魅力は歳を重ねるごとに増している。

ソングライターとしての才も発揮

ソングライティング面でも近年活躍が目覚ましい。活動初期から作詞作曲を担ってはいたものの以前はアルバム収録曲に限られており、当人も控え目なスタンスだったが、2014年、リーダーTAKUROから“GLAY EXPO”のテーマソング書き下ろしを一任されて以来、大きく変わった。

疾走感漲る「BLEEZE」を生み出したのを皮切りに、「疾走れ!未来」「HEROES」「空が青空であるために」(いずれもテレビアニメ『ダイヤのA』、『ダイヤのA~SECOND SEASON~』オープニングテーマに起用)、「YOUR SONG」(スペシャルオリンピックス日本公式テーマソング)と手を休めることなく連打。


2018年には函館に念願のスタジオを構え、アーティストとして新たな一歩を踏み出した門出を刻む「はじまりのうた」(『ダイヤのA act II』オープニングテーマ)、自身の父親との関係性を重ねながら書き下ろした「COLORS」(『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』)など、パーソナルな体験や想いを普遍へと昇華するソングライターとしての才を発揮。

最新シングル『G4・2020』収録の「流星のHowl」はアニメ『ダイヤのA act II』第3期オープニングテーマに起用されると同時に、AIRDOと石屋製菓による『BE ONE HOKKAIDO 心を一つに、北海道へ応援メッセージを』の公式テーマソングとしても採用された。

TERU|太陽のごとく全方位を照らすフロントマン 配信ライブシリーズへの想い<GLAY特集>


GLAYの楽曲のみならず、PENTAGONや城田優への提供曲も大きな話題に。コロナ禍によるステイホーム期間に作曲ソフトをより深く習熟し、アイディアを一層スピーディーに具現化し、様々な音楽的アプローチに意欲的に取り組んでいる。


プロデュースするコロナ禍での配信ライブと意識の変遷

持ち前の行動力と、人と人とを繋ぐコミュニケーション能力、そして音楽家としての成熟とキャリア四半世紀超のプロフェッショナルであることのプライド。そういったTERUの美点全てが最高の形で融合したのが、配信ライブイベントシリーズ『LIVE at HOME』ではないか? と考える。

発端は2月、カーニバル中にサンマルコ広場でライブをするためHISASHIらと共にヴェネツィアへ向かったTERUは、ヨーロッパを襲ったコロナ第一波の影響により空港で足止めされるというハプニングに見舞われたこと。


カーニバルは途中で中止となり、発表の場が一旦は消失したが、そもそもTERUがヴェネツィアに魅了されるきっかけとなった友人でありヴェネチアガラス作家・土田康彦氏の計らいで急遽ムラーノ島のアトリエを借り、2日後には現地からオフィシャルYouTubeチャンネルを通じてライブを配信。カーニバル会場からの中継に代えてファンを楽しませた。


この初めての無観客ライブに手応えを得たTERUは、ドーム公演が立ち消えた失意のステイホーム期間中、コロナ禍におけるエンターテインメントのつくり方・届け方を熟考。偶然『ミュージックステーション』で目にした友人[Alexandros]の演出にインスパイアされ、自らメンバーに連絡を取り、映像制作チームと接触。

『LIVE at HOME』を企画立案し、自身の誕生日である6月8日、配信ライブ第1回をスタートさせる。プラットフォームはGLAY app。
2018年にリリースした公式ストリーミングサービスのシステムを大改造し、配信機能を完備して臨んだ。

第1回はTERUが自宅スタジオから1人、弾き語りで配信。第2回は家を飛び出し函館のスタジオを舞台にTAKUROとアコースティックライブを実施、第3回は湘南のヨットハウスでHISASHIとDJ Mass MAD Izm*、キーボーディストのREOと共にクラブミュージック・アレンジを披露。10月3日に行われた第4回は、大学のキャンパスを舞台にJIROとTOSHI NAGAI、村山☆潤、ストリングス・カルテットを招きクラシック・アレンジに挑んだ。

TERUはプロデューサー兼演者として、まずは自分のアイディアを出発点にしつつ、各メンバーの性格や得意分野を把握した上でテーマを練り上げ、丹念にデモ音源を制作し、内容にふさわしい会場を選択。曲の世界観とシンクロした照明・映像演出にこだわり、オープニング映像やエンドロール、選曲理由のテキスト化に至るまで、配信を一つの作品として驚異的な手腕でまとめ上げている。


コロナ感染防止対策のため大人数で集うことは避けながら、少数精鋭のチームで経験値を積み上げ。会場側の人々とも緊密にコミュニケーションを取りながら、クオリティーの高い配信ライブを毎度つくり、届けている。

ステイホーム期間中、数々のアーティストが一早く自宅から発信した映像は、コロナ禍初期の何もわからない不安や心細さを、「スターであっても、私たちと同じ気持ちなんだ」という親近感によって癒してくれた。

TERUが準備を重ね細部までこだわってつくり上げている本シリーズは、そういった人肌感だけでなく、ライブという非日常・異空間へのトリップ感を楽しみに日常生活を乗り切っていた、コロナ以前のエンターテインメントライフを取り戻させてくれる点で、一線を画している。

加えて、家にいながらにして本格的なライブを観られるということは、通常の公演には様々な事情で足を運べなかった方々にも広く参加の扉を開いた点で画期的。イベントタイトルについて、「自分の“家から”配信する」趣旨でスタートしたが、「ファンの子たちが“家で”観るライブが『LIVE at HOME』なのかな?」という認識に変わっていったとTERUはオフィシャルインタビューで語っており、その意識の変遷は興味深い。



こうしたTERU発案の企画に、メンバーが当然のように代わる代わる参加して、バンドの結束に1ミリの疑いも抱かせないところもGLAYらしい。かつて、「ソロ活動をしないのか?」という質問を受けたTERUが、「曲はTAKUROに書いてもらって、ギターはHISASHIで、ベースはJIROに」と真顔で答えたエピソードは今も語り草になっている。

TERUは有言実行の人で、「やる!」と決めたら宣言し、どう実現するか、その方策をメンバーは共に探っていく。2016年、公式ファンクラブHAPPY SWING創立20周年を記念した公演で、TERUが何の前触れもなく「30周年にはヴェネツィアのサンマルコ広場でライブしたい」と発言した時の会場のどよめき、困惑しながらも笑顔で受け止め、その夢をどう叶えるか? を異口同音に語り始めた3人の姿が忘れられない。

様々な人を巻き込み、盛り上がりの一途を辿る『LIVE at HOME』は、10月31日(土)にvol.5を開催。メンバーからはHISASHIを迎え、ハロウィンをテーマに繰り広げられるので、お見逃しなきよう。
(大前多恵)

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ライブ情報

【GLAY DEMOCRACY 25TH “HOTEL GLAY GRAND FINALE” in SAITAMA SUPER ARENA】
会場:埼玉・さいたまスーパーアリーナ
2020年12月19日(土)開場15:30 / 開演17:00
2020年12月20日(日)開場14:30 / 開演16:00

チケット:S席 ¥9,900、A席 ¥6,900、着席指定S席 ¥9,900(各税込)
※「着席指定S席」はHAPPY SWING会員、GLAY MOBILE会員の方を対象に、枚数限定で販売
※3歳未満の入場不可、3歳以上チケット必要

問い合わせ:ウドー音楽事務所(TEL. 03-3402-5999 / 月・水・金12:00-14:00)
詳細:https://www.glay.co.jp/live/