アリーナツアー、幕張メッセ公演の模様をお届け!
| the pillows 20th Anniversary LATE BLOOMER SERIES 06 “LOSTMAN GO TO BUDOKAN” | 2009.09.16(WED) at 日本武道館 |
2009年9月16日。待ちに待ったこの日が、遂にやって来た。ザ・ピロウズ結成20周年の記念日であり、初の日本武道館ワンマン公演となるこの日。その模様を以下、開場前の様子を交えながら、詳細にレポートする。
14時半メンバー会場入り。場内では慌ただしく準備が進められているものの、楽屋付近はまだまだ静かな様子。一見すると、いつもと変わらないライヴ前の風景。その後、メンバー揃って楽屋で舞台監督と最後の打ち合わせ。特効のタイミングや映像の同期など、細部にわたって綿密なチェックが行われる。そして、15時を過ぎた頃、リハーサルがスタート。観客のいない武道館は、思いのほか狭く感じられる。ドラム、ベース、ギターの順にサウンド・チェックが行われた後、ようやく山中がステージに登場、全体リハーサルが開始される。久々に披露する楽曲や新しいアレンジを施された楽曲、映像との同期がある楽曲などを中心に約1時間のリハーサル。スタッフ曰く、「ピロウズがこれほど長いリハーサルするのは非常に珍しいこと」だとか。リハーサル後、軽食をとったり、雑誌を読んだり、携帯メールをチェックしたり、それぞれのやり方でライヴ前の時間を過ごし始めるメンバー達。そこで、楽屋を出て会場の外へと足を運んでみたところ――正面玄関付近で、バスター君の着ぐるみを発見。さらに場外へと足を延ばしてみると、物販の前にはすでに長蛇の列が。その列は武道館の敷地内を飛び出し、靖国通り沿いにまで及んでいる。この日を記念して作られたTシャツには、こんなフレーズがプリントされていた。“PLEASE DON’T FORGET TODAY”。そして、18時過ぎ、いよいよ開場の時間となる。アリーナはもちろん、1階、2階とも、瞬く間に人で埋め尽くさてゆく会場。その数、実に約一万人。あとはピロウズの登場を待つばかりである。
そして、19時を少し回った頃、会場の電気が落ち、遂にライヴがスタートする。ステージ前の垂れ幕に映し出される映像。“P”を象った剣が3つ合わさりピロウズのマークとなるオープニング映像から、一斉に沸き立つ会場。そして、その幕が落ちると同時にスタートした1曲目は、「Thank you my twilight」! 山中が力強く歌い上げる<キミを待ってたんだ!>というフレーズが、一万人の胸にリアルに突き刺さって来る。「MY FOOT」から「No Surrender」へ。徐々にテンポアップしてゆくような序盤の流れ。「アナザーモーニング」では、早くも客席から手拍子が巻き起こる。4曲を終えた後、本日最初となる山中のMC。「今朝、目を覚ましたら、20年経ってました。目を覚ましたのに、まだ夢の中だ!」。「Wake up!dodo」、「プロポーズ」など、次々と繰り出されるピロウズならではのオルタナ・ポップなロック・チューンに乗せて、思い思いに身体を揺らす観客達。その後、「New Animal」でひと盛り上がりした後、「こういう日なので、昔の懐かしい曲も聴いてもらいたい」と語った山中。その彼が「次の曲の歌詞は、まさに今日、この日のことを夢見て作っていたんだろうと思う」という言葉と共に歌い始めたのは、超初期の楽曲「90’s MY LIFE」だ。<何もかも笑える/そんな日がきっと来るから>。このフレーズを今、山中はどんな気持ちで歌っているのだろうか?
メンバーの表情はもちろん、「スケアクロウ」では影絵調のミュージック・ビデオが、「ONE LIFE」では歌詞にも登場する“青い芥子の花”が一面に映し出されるなど、スロウな楽曲で特に効果的な役割を果たしていたステージ後方の大型ヴィジョン。その中でもとりわけ印象的だったのは、中盤「1989」が披露されたときだった。ミュージック・ビデオと同じアニメをベースとしながら、そこに“19890916”からカウントアップしていくデジタルの数字が加えられた、この日限りの特別映像。途中、実際の演奏とシンクロする形で画面に大きく映し出される<Please, catch this my song>の文字に胸が熱くなる。そして、楽曲の終盤、“20090916”でピタリと止まった数字が“19890916”と並べて映し出された瞬間、この日が持つ“意味”の重さに改めて深く感じ入った。そう、「I know you」の後のMCで、山中はこんなふうに語っていた。「僕達は音楽の才能があるので、いつかこんな日が来るって分かってました。分かっていたことなので何も感じないつもりが…感じないわけないだろ! 感謝とかするのは不自然だなって思いたかったけど…感謝しないわけないだろ!」。そして一言、添えるように「ありがとう!」と。会場からひときわ強く巻き起こった拍手を受けて珍しく言葉に詰まりながら、山中はさらに次のように続けた。「肉体には限界があると思う。だが、しかし…心には限界がない。まだ僕の小さな宇宙は広がり続けている。その宇宙に時折光が射す…それが君達だった」。一瞬の静寂の後、さらに盛大な拍手で応える観客達。そんな愛すべき“バスターズ”に向けて、彼等が演奏し始めたのは――「ストレンジ カメレオン」!
「僕等はもう長い間、音楽業界の端っこで、流行りもしない音楽を鳴らして来ました。武道館というステージに立って、何かを成し遂げたと言えるのならば…もし、そうなら…俺は嬉しいぞ!」。そんな山中のMCからスタートした終盤は、まさしく圧巻で、本当に圧巻で、思わず胸が一杯になってしまった。「この世の果てまで」、「その未来は今」、そして「雨上がりに見た幻」と「ハイブリッド レインボウ」。そのタイトルを並べるだけでも、何かピロウズの歴史を雄弁に物語っているようにも思える渾身の楽曲達。<Can’t you feel that hybrid rainbow?>。音という目に見えないものを全身で浴びながら、きっと僕等は確かに“感じて”いた。ピロウズの物語と“僕等”の物語が“シンクロ”する、とても感動的な瞬間を。しかし、まだまだライヴは終わらない。否、終われない。一度のアンコールでは飽き足らない観客の巨大な声援を受けて、「Calvero」から勇壮にスタートした二度目のアンコール。「この20年間で、もう本当に涙が出そうなくらい嬉しかったことって、そんなに数えるほどないけど…今日、ここで、君たちと出会えたことが、その一つになりました。ありがとう」。改めて感謝の意を述べる山中。その後、「Ride on shooting star」、「LITTLE BUSTERS」と、盛り上がり必至のアッパーなロック・チューンを掻き鳴らした後、ステージを降りる間際に放った「ありがとう。楽しかったよ。今度はもうちょっと狭いところで遊ぼうぜ」という言葉も、何だかピロウズらしくて良かった(結局、その後、「調子に乗りやがって(笑)」という言葉と共に、三度目のアンコールに応えてくれる辺りも)。終わってみれば、約2時間半、全28曲に及んだこの日のライヴ。本当に笑って泣いて、泣いて笑って…身体はもちろん心も激しく躍りまくった、とても楽しい“お誕生会(成人式?)”だった。“PLEASE DON’T FORGET TODAY?” 言われるまでも無いよね!
(取材・文/麦倉正樹)