では、その後継者は誰になるのでしょうか。将来の愛子さまや佳子さまにも関わるテーマとして注目されています。
本記事は『日本人にとって皇室とは何か』(島田裕巳/プレジデント社)より一部を抜粋・編集し、伊勢神宮の祭主を担ってきた女性皇族の役割と、その後継問題について解説します。
■伊勢神宮の祭主が交替する事情
神社本庁の総裁は完全な名誉職で、その下には統理と総長がいる。統理には元華族が就任することがほとんどで、半分は名誉職でもあるが、総長の指名といった役割もあり、評議会にも出席する。
ここで一つ注目しなければならないのが、伊勢神宮の祭主が交替する事情についてである。
式年遷宮では、社殿が一新される前に、まずは内宮へ参拝するための宇治橋がかけかえられる。厚子氏(※昭和天皇の第4皇女、上皇陛下の姉君)は、2009(平成21)年の宇治橋渡始式には祭主として臨んでいる。
けれども、すでにその時点で78歳だった。しかも、式年遷宮の前年、2012年には夫と死別している。彼女は、旧岡山藩の藩主だった池田家第十六代の当主、池田隆政氏と結婚していた。
神道には、死の穢れを嫌うという伝統がある。
これは、伊勢神宮に神職として奉職していた方から直接うかがった話である。
伊勢神宮では、次の遷宮の作業がはじまる段階で、作業が完了する時点で万全の健康状態で臨めないと思われる神職は、その職を辞すことになっているというのである。
■伊勢神宮の次代の祭主は誰になるのか
では、清子氏の次は誰が祭主になるのだろうか。あるいは、誰が祭主を補佐する役割を果たすことになるのだろうか。
伊勢神宮が皇室と深い縁で結ばれており、皇族が折にふれて参拝に訪れている現状からすれば、愛子内親王や佳子内親王、あるいは三笠宮の彬子女王や瑶子女王、高円宮の承子女王などが適任と思われるかもしれない。
しかし現在では、先にも述べたように、政教分離の原則が強調されるようになっている。
現役の皇族が、民間の一宗教法人となった伊勢神宮の祭主をつとめることは困難である。
終戦直後には伊勢神宮を当時の宮内省(現在の宮内庁)の管轄下におく構想が打ち出されたが、それは実現しなかった。宮内庁と今の伊勢神宮とは直接には関係していない。
となると、皇族の身分を離れた内親王や女王が候補として浮上する。元内親王だと眞子氏しかいない。
■元皇族だからこそ担える立場
典子氏は、出雲国造である千家家に嫁いでいる。神道の家ということでは伊勢神宮に関係する。
ところが、明治時代に国が設けた神道事務局に出雲大社の祭神、大国主大神(おおくにぬしのみこと)を祀るかどうかで神社界を二分する大論争が起こったことがあった。
そうしたことを考えても、典子氏が伊勢神宮の祭主をつとめるのは難しいだろう。
となると、絢子氏になる。彼女の夫は民間人であり、その点で、祭主に就任することに格別の差し障りは出てこない。
けれども、元女王であり、元内親王よりも天皇との血縁上の距離は遠い。
清子氏が二親等であるのに対して、絢子氏になると天皇とは六親等離れている。民法では六親等内の血族が親族と定められているが、ぎりぎりである。
■神社界の痛手となった眞子氏の結婚
その点では、本来、眞子氏が、将来における伊勢神宮の祭主に適任だった。あるいは、神社本庁の総裁に将来就任してもおかしくはないはずなのである。
ところが、眞子氏が結婚するまでの経緯は複雑で、皇室との縁を切ったような形になってしまった。しかも結婚後、アメリカに行ってしまい、現在もアメリカで生活している。
実家である秋篠宮家と、現在どういう形で交流しているのかは、外部からはわからない。ただ、アメリカに行ってからは、一度も帰国していない。伊勢神宮の祭主や神社本庁の総裁に就任することは考えにくい。
そうなれば、愛子内親王や佳子内親王が結婚し、皇室を離れた場合ということになる。
これまで、どちらの地位も元内親王がつとめてきたことからすれば、二人は適任である。
ただ、今のところ、二人に結婚の話は出ていない。佳子内親王は、皇室を離れることを強く希望しているとも言われるが、30歳になった今も独身である。
■女性宮家創設がもたらす新たな課題
現在、国会の論議は、女性宮家の創設を認める方向にむかっている。もし、現在の内親王や女王が女性宮家として皇室にとどまったら、伊勢神宮の祭主や神社本庁の総裁になる道は閉ざされることになる。
伊勢神宮や神社本庁は民間の宗教法人であり、そのことについて国が何かを言うことはできない。
しかし、眞子氏が日本から去ってしまい、帰国の可能性が低くなってしまったことは、日本の神社界にとって大きな痛手である。
もちろん、皇族の女性以外が伊勢神宮の祭主となり、神社本庁の総裁になることはできる。どちらの組織においても、それを排除する規定を設けているわけではない。
しかし、元内親王や元女王が就任しなければ、二つの組織の権威は失われることになるかもしれないのである。
この書籍の執筆者:島田裕巳 プロフィール
1953年、東京都生まれ。宗教学者、作家。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了(宗教学専攻)。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、東京女子大学非常勤講師を歴任。現代における宗教現象、新宗教運動、世界の宗教、葬式を中心とした冠婚葬祭など、宗教現象について幅広く扱う。
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