ジェームス・ウィルカス率いるバンドの 演奏も極めて完成度が高い 多くのカバー曲を手掛けたカーペンターズだが、いずれも原曲に寄り添いつつ、新しいオリジナリティーが加わった全く別の楽曲として楽しめるものばかりだった。ところが、トリ・ホルブのカバーはまさに「完コピ(完全コピー)」。いや完コピを超えた完コピだ。歌い方のクセまでカレンとそっくりそのまま。普通のコピーなら「上手なそっくりさん」として楽しめるわけだが、そのレベルをはるかに超えている。カレンの声ばかりでなく、兄のリチャードのコーラスも自ら収録するなど、デジタル多重録音を駆使して仕上げている。トリは「歌い始めてまだ数年しか経っていない。人前で歌ったのは去年の4月が初めて」という。オリジナルのクリスマスソングも発表しているが、まるでカレンの新曲を聴いているかのようだ。今後の活躍に期待したい。 もう一つ、紹介したいカバー曲がある。「10cc - I'm Not In Love 完全再現レコーディング」だ。
70年代に結成されたイギリスのバンド、10ccの代表曲の一つを「完全再現」。複数のミュージシャンと録音エンジニアが集まって結成した「スタジオ・レダ×ササニシカ with フレンズ」なる制作集団がつくりあげた。オリジナル版の最大の特徴は「マルチトラック・ボイス」と言われるコーラスだ。人の声がまるで楽器のように整然と奏でられている。多重録音したコーラスの録音テープをループ再生しながら、ミキシングコンソールのフェーダーやチャンネルのON/OFFスイッチを駆使して「演奏」することで実現させた。きわめて実験的な作品でありつつも、幻想的で美しい楽曲に仕上げたことで「録音芸術の金字塔」とも呼ばれている。 デジタル技術を駆使しつつ 当時と同様にフェーダー操作でも「演奏」 完全再現版は、現代のデジタル技術を駆使しつつも、フェーダーやチャンネルスイッチの操作といったアナログ要素も残して制作。金字塔の再構築を目指した。曲調はほぼオリジナルのまま。細部で微妙に異なる部分はあるものの、それは、むしろオリジナルをさらに磨き上げた結果といってもいいほどだ。特にボーカルの登坂亮太氏は素晴らしい。その切ない歌声は、オリジナルをも凌駕している。