見上愛と上坂樹里がW主演を務めるNHK連続テレビ小説『風、薫る』が、9月25日の放送で最終回を迎える。そこで今回は、これまでの放送を振り返りながら、ひときわ光る演技を見せた出演者を、筆者の独断と偏見で取り上げたい。


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第114作目の朝ドラ『風、薫る』は、明治時代に日本で初めて正規の訓練を受けた看護婦(トレインド・ナース)の大関和さんと鈴木雅さんをモデルにした作品だ。同じ看護婦養成所を卒業したりん(見上)と直美(上坂)が、患者たちと向き合いながら成長し、"最強のバディー"となっていく姿を軸に描かれる。

まず、ヒロインを務めた見上と上坂だが、W主演という難しい構成の中で、存分に実力を見せつけたかといえば疑問が残る。血縁関係のない2人が並列に描かれることが多く、通常の朝ドラヒロインとしては少なめだったからだ。2人とも魅力ある若手女優なだけに、もっと演技を見たかった視聴者も多かっただろう。

そんな中、存在感を放っていたのが"シマケン"こと島田健次郎を演じた佐野晶哉だ。シマケンは、小説家になる夢を抱いた青年で、新語や外国語に詳しいという一風変わった性格のキャラとして登場した。

ところが、自分は何者でもないことに引け目を感じているシマケンは、りんへの想いをなかなか言葉にできない。煮え切らない態度を繰り返したかと思えば、家庭の事情で浜松の実家へ戻ることになり、りんに何も告げずに東京を去ってしまう。それが、クライマックス間際に突然東京へ戻って来るという、なんともお騒がせなキャラだ。

身勝手で頼りないシマケンだが、さわやかイケメンの佐野が演じたことで、なぜかかわいらしく魅力的な男性に見えてくるから不思議だ。男性アイドル・Aぇ! groupのメンバーの佐野はこれまでも、映画『明日を綴る写真館』や、ドラマ『Dr.アシュラ』(フジテレビ系)などに出演し、難しい設定の役をこなしてきた。


今回のシマケンも、夢追い人のダメ男なのに性格が良い青年という、難しい役だ。佐野はそんなシマケンを、大げさになりすぎない自然体の演技で表現した。小説家になる夢を捨て、挫折を抱えながら郵便配達夫として生きる道を選んだシマケンがクライマックス間近で登場すると、呪縛から解かれじつに清々しい表情をしている。佐野は俳優として、朝ドラ出演で確実にレベルアップした姿を見せた。

続いて挙げたいのが、牧師・吉江善作を演じた原田泰造だ。

お笑いトリオ・ネプチューンのメンバーである原田だが、俳優としても数々のドラマや映画に出演してきた。今回演じた善作は、親に捨てられた孤児の直美を引き取って以来、彼女を温かく見守ってきた父親的存在。直美の自立したい気持ちを尊重し、そっと寄り添う姿が多くの視聴者に感動を与えた。

牧師役が初めてだった原田は、聖書を読み、実際に教会の礼拝に通うなどして役作りしたという。直美とのシーンで感情を抑えきれずにすぐに泣いてしまうという情の深いキャラは、原田の持つ雰囲気にバッチリとハマった。物語から退場する場面ではSNS上に「吉江先生ロス」の声が上がるなど、視聴者にも惜しまれた。

ちなみに、上坂とは父娘を演じた主演ドラマ『生理のおじさんとその娘』(NHK総合)に続いて2度目の共演。
共演経験を生かして息の合ったやり取りを随所で見せ、朝ドラを盛り上げ続けた。

そして、女優陣から挙げるなら、柳川文役の内田慈だだろう。

文は、りんと直美が深く関わる瑞穂屋の店員として登場。当初は物語の中心からやや距離のある人物に見えたが、物語が進むにつれて、その存在が大きな意味を持つことになる。

作中では長く謎に包まれていた直美の生き別れの母親が、実は文だったことが判明。しかも、病を患った文の看護を直美が担当することで、母娘だったことがわかるという、衝撃的な演出で2人の交流が描かれた。この屈指の名シーンを演じた内田は、病人である文を演じるために9キロも減量。女優魂を見せつけた。

しかも文は、直美と心を通わせながら、最期まで自分が母親だと明かすことがなかった。かつて女郎屋で働いていた文は、一緒に店を抜け出した男に捨てられ、教会の前に我が子を置きざりにした過去を持っている。愛おしい我が子への愛情がありながらも、最後まで母親であることを明かせない葛藤を、内田は繊細な表情や声のトーンに込めた。

ここまで佐野晶哉、原田泰造、内田慈の3人を取り上げたが、もちろん『風、薫る』には、水野美紀北村一輝中村倫也ら、物語を支えてきた俳優たちもいる。


9月25日の最終回まで残された時間はわずか。Wヒロインを中心に紡がれてきた物語がどのような結末を迎えるのか。そして最後まで出演者たちがどんな演技を見せるのか。最後まで注目したい。

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