まもなく『告白-25年目の秘密-』(日本テレビ系)が最終話を迎える。『Tシャツが乾くまで』(TBS系)など強豪揃いだった夏ドラマにおいて、各メディアが集計しているランキングで上位に喰い込んできていた本作。
私もその波に漏れず、毎週末の放送を楽しみにしていた。ではなぜ本作は面白かったのか。このコラムを読んで興味を持ってくれた人たちが動画配信で一層楽しめるように、共に地上波放送のリアタイで熱狂した同志のみなさまには物語を懐古してもらえるように、コラムを起稿する。

【写真】松村北斗主演ドラマ『告白-25年目の秘密-』の場面カット【4点】

『告白-25年目の秘密-』は7月クールのドラマで(個人的な)ダークホースだった。仕事柄、事前の取材などがあれば興味を持って勉強するけれど、今回はその機会がなく、土曜21時の放送に体当たり勝負。

(……告白って、湊かなえの小説かな)

そう思っていた自分を恥じる。ざっくりと説明すると、本作はラブサスペンスとカテゴライズされた、恐怖と恋愛が入り混じったドラマ。主人公の雪村爽太(松村北斗)は32歳の野瀬化粧品に勤務する会社員。このまま読めばふつうの人間だけど、キモはこの裏にある。実は爽太には、25年間も片想いを続いている同い年の野瀬麻里子(岡崎紗絵)がいる。苗字から察する通り、麻里子は野瀬化粧品の跡取りで、爽太の上司だ。

爽太は幼少期にいじめられているところを救ってもらった経緯から、麻里子が一気に神格化して恋心に発展した。
とはいえ告白をするわけでもなく、ただずっと遠くから見ているだけ。麻里子に関する情報を緻密に調べ上げ、観察日記を毎日書く。物語を揺さぶる要因のひとつでもあった、麻里子の「誘拐事件未遂」では大声を出して、麻里子を救ったのが最接近。同じ中学、大学に通っても話しかけることはなく、いつも近くで見守るだけで四半世紀が過ぎていた。9月12日(土)の放送で、爽太は自分のことをこう評している。

「境界線だけは守る男なんで」

確かにストーキング行為ではあるけれど、思想はいつも「麻里子さんのため」。自分が彼女の領域に踏み込む行為はしない。そして念願の同じ部署に勤務することになった爽太は、麻里子と距離を縮める。会話はもちろん、毎日良いタイミングでコーヒーを差し出し、仕事でトラブルが発生すればサッと解決、家族と揉める麻里子ピンチが訪れるとどこからともなく現れてなぐさめる……けれど、ドラマ序盤は視聴者を惑わせる演出のせいもあって、やっぱり爽太には不信感と嫌悪感を抱いてしまう。演じている松村北斗のかっこいい顔面をもってしても、気持ちが悪い。Six TONESによる主題歌の『マイオンリー』の「ただあなたを見つめていたい」「愛すたび増える誓い」という歌詞にさえも、背筋が寒くなった。

ただ物語の後半から潮目が変わる。
いつも自分を守ってくれる爽太に麻里子が、心を開きはじめたのだ。一時期は全面拒否していたけれど、愛しさが少しずつ芽生えていた。

(そうだよ、25年も自分のことを好きでいてくれた人なんだから!)

少し前まで爽太を「気持ち悪い」と言っていたくせに、いつの間にか爽太応援隊になっていた視聴者(の私)。麻里子さんのためなら緻密な情報収集を怠らず、時には調査のために大胆な行動に出て、自分の命を捧げることも辞さない。ついでに麻里子さん全肯定でもなく、疑問に感じることはきちんと提言。きっと爽太は別班に行ったらめちゃくちゃいい仕事をするに違いない。

ここまでの文章でわかってもらえたと思うが、このドラマは主役を演じた松村北斗の演技の演技の一挙手一投足が魅力。麻里子さんの前でつい嬉しくて、調子に乗って、自分の追跡ぶりを早口で捲し立ててしまう爽太の挙動。誘拐犯がまた麻里子を襲ってきた際に「はなーれろ!」と叫ぶ、優男ぶり。少しでも知らない麻里子情報が判明すると、変わる目つき。完璧な爽太を演じていた松村さん。演技に脳が揺さぶられるのは、ドラマ視聴の醍醐味だった。


……はっ! うっかり忘れていたけれど、本作には爽太劇場以外にも多くの要素が詰まっている。誰かに恨まれている野瀬化粧品、次々に殺されていく野瀬社長の妻、つまり麻里子の母たち。爽太の唯一の友人・相良友也(塩野瑛久)が抱えていた姉を殺害された過去、麻里子に近づく刑事の真相など、割と要素は多かったけれど、すべてがうまく循環していた。ただこれらの要素を薄めてしまうほど、爽太=松村北斗の演技があまりにも強烈で斬新だっただけだ。

さて最終話。爽太の最大のウェポンの麻里子さん観察日記の存在が本人バレて、また彼女に魔の手が忍び寄る。果たしてふたりは結ばれるのか。

「麻里子さんが僕の人生に現れてから、今日まで僕は(力を込めて)ずっっと、幸せでした」

爽太の想いは26年目に突入していくのか。そうそう、このドラマのサブキャッチに「—その愛は純愛か狂気か」と、アンビバレントな問いかけがあったけれど、私は「純愛」だと思う。できれば二人が結ばれて、サスペンス要素を抜いたラブコメの第2シリーズが観られたらうれしい。その時は恋愛初めて物語の爽太に全力でエールを送る。

(文/コラムニスト・小林久乃)

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