【芸能界クロスロード】
5月12日から23日まで行われたカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された「箱の中の羊」。主演の綾瀬はるか(41)の夫役を務めた千鳥の大悟にエスコートされてレッドカーペットを歩く美しい姿に観客たちはため息をついていた。
そんな余韻を残したまま映画は5月29日に公開。注目の週末3日間の興行成績のランキングは初登場5位。観客動員13万9000人、興行収入はおよそ1億9000万円だった。「スター・ウォーズ」「プラダを着た悪魔2」と人気映画が公開中だったこともあるが、「思いのほか伸びていないが、ヒットの目安といわれる10億円に届く」との見方もある一方で、懸念される材料もある。
是枝裕和監督作品は過去、「怪物」で脚本賞を取るなど実績十分だが今回は無冠だったことで、宣伝効果はさほど期待できない。
加えてカンヌ映画祭で「急に具合が悪くなる」に主演した女優・岡本多緒が最優秀女優賞を獲得し、お株を奪われた。今月19日の日本での公開も迫る。「箱の中の羊」はますます影が薄くなっていくなか、今月1日に綾瀬の新作映画「ファーストボイス-私たちの逆転裁判-」の今秋公開が発表された。
4月に公開された「人はなぜラブレターを書くのか」、「箱の中の羊」に続く主演映画に「綾瀬はなぜ今年3本の映画に主演するのか」という素朴な疑問も湧く。
改めて近年の綾瀬の動きを見ると、ドラマは2022年春のフジテレビ系の月9「元彼の遺言状」で連ドラ出演。単発のスペシャルドラマ、昨年は大河「べらぼう」でナレーション。さらにNHKドラマ「ひとりでしにたい」に出演した程度。
民放ドラマの中心を占めるのはギャラを抑えられることもあり若手女優が中心。特に朝ドラ出身から民放ドラマにシフトするのは若手女優の黄金ロードだ。中堅女優も出産、育児を経た戸田恵梨香、宮崎あおい、蒼井優、さらに土屋太鳳、黒島結菜といった復帰組が主役、脇役問わず活躍するなど、若手とママさん女優でドラマ界は回っている。
実績ある綾瀬でも入る余地がないほど女優も多く激戦区になっている。主演にこだわる綾瀬にとって映画はメリットも多い。近年の綾瀬は「はい、泳げません」に映画出演した翌23年、木村拓哉と共演の「レジェンド&バタフライ」にも出演。同年に「リボルバー・リリー」で初のアクションを披露。24年はロードムービー「ルート29」に主演した。
満を持して今年は3本の主演映画が公開になった。映画全盛期の昭和。高倉健が年間何本もの映画に主演することなどザラだったが、令和の時代に女優が1年で3本の映画主演は珍しい。
「映画界は男性俳優が主役を務め女優は相手役が多いが、主演できる女優も必要。コンスタントに主演するのは映画界のレジェンド・吉永小百合ぐらい。後に続く女優の出現が待たれる」(映画関係者)
綾瀬とライバル視されている長澤まさみは結婚で仕事をセーブ気味。綾瀬は主演を張れる貴重な女優と期待されているという。
それに応えるべく綾瀬も役の幅を広げている。実生活では独身でも今年2本の映画で「綾瀬らしい優しい母親」を好演。秋公開の映画の弁護士役ではどんな顔を見せるのか注目されるが、課題は代表作になるような作品。ドラマでは「義母と娘のブルース」があるが、映画では「人はなぜラブレターを書くのか」は、興行収入10億円を突破したが、大ヒットには届かず、代表作とは言い難い。綾瀬の映画女優への挑戦が始まった。
(二田一比古/ジャーナリスト)

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