台所のテーブルに広がる鮮やかな緑。指先で一枚ずつ丁寧に枝から外されていくモリンガの葉は、まるで小さな命の粒を集めるようだ。
フィリピンでは「マルンガイ」と呼ばれ、家庭料理の定番として親しまれている。葉を摘む手の動きには、長年の暮らしの知恵と穏やかなリズムが宿る。やがて金属のざるに集められた葉は、湯気立つ鍋へと運ばれ、鶏肉と生姜の香りに包まれていく。

その他の写真:2026年8月3日撮影

 モリンガは「奇跡の木」とも呼ばれるほど栄養価が高い。ビタミンA、C、Eに加え、カルシウム、鉄分、タンパク質まで豊富に含まれ、葉のわずかな量でも体を整える力がある。特に鉄分はほうれん草の約3倍、カルシウムは牛乳の約4倍ともいわれ、疲れた体にやさしく染み渡る。抗酸化作用を持つポリフェノールも多く、暑い気候で失われがちな体力を支えてくれる。

 煮込むほどに鶏肉の旨味が葉に染み込み、スープは深い緑の輝きを帯びる。生姜の辛味が軽やかに立ち上がり、モリンガのほろ苦さが後味を引き締める。食卓に並ぶその一椀は、単なる料理ではなく、自然の恵みをそのまま受け取る儀式のようだ。

 外では強い陽射しが差し込むフィリピンの昼。室内に漂う香りは、家族の記憶を呼び覚ます。
葉を摘む手、煮込む鍋、湯気の向こうに見える笑顔――それらがひとつになって、今日も静かに命をつなぐ。モリンガ入りチキンスープは、南国の暮らしの中で生きる力をそっと支える、緑の贈り物である。
【編集:Eula】
編集部おすすめ