日本企業の株主総会では、経営陣に変革を求める株主提案が存在感を増している。2026年6月の集計では、アクティビストなど機関投資家から提案を受けた上場企業は55社、議案は150件に達し、いずれも過去最多となった。
取締役人事や資本効率の改善を求める動きは企業に緊張感を与える一方、「もの言う株主」と経営陣の対立が前面に出れば、再建の中身より議決権争いへ関心が集まりやすい。

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その構図に別の選択肢を示そうとしているのが、ノアグループホールディングス株式会社である。同社は東証スタンダード上場の株式会社ジェイホールディングスに対し、取締役3人の選任を目的とする臨時株主総会を請求した。ただし、公開した提案書で掲げるのは、現経営陣を一律に退任させる方針ではない。既存の事業基盤や知見を残しながら、ノア側の経営人材と実行力を加える「協調型経営参画」である。

提案の背景には、収益改善の必要性がある。公表資料を基にした集計では、ジェイホールディングスの売上高は2023年の1億7500万円から2025年の1億8900万円へ微増した一方、営業損失、経常損失、当期純損失はいずれも3期連続で続いた。大規模な希薄化を伴う新株予約権による資金調達も進み、既存株主には、調達資金を誰が、どの事業へ、どの数値目標で投じるのかを見極める必要がある。

ノアは2025年11月に同社株式の5%超を保有したことを公表し、2026年3月にはスポーツ事業の業務提携基本契約を締結した。その後、臨時株主総会の招集を請求し、東京地方裁判所から招集許可を得た。単に外から経営へ注文を付けたのではなく、株主となり、事業提携を進めたうえで経営参画を提案したという順序に特徴がある。

提案内容も、増配や自社株買いの要求だけではない。
新たな取締役・執行役員を加え、経営会議への参加、KPI管理、事業計画の共同策定、財務改善、新規事業、M&Aまで踏み込む。現経営陣が持つ上場会社運営の経験と、ノア側が持つ事業開発・現場運営の力を組み合わせ、経営管理と収益事業を同時に立て直す構想だ。

その実行力の根拠として示すのが、全国35校、会員4万3000人以上のテニススクールと、6カ所のフットサル施設を運営してきた事業基盤である。施設の企画・設計・施工から運営、集客、イベントまでを一体で扱い、スポーツテックや地域創生型イベントへ広げる。資本の論理だけで提案する金融投資家とは異なり、自らの人材、顧客基盤、事業ノウハウを上場会社へ持ち込もうとしている。

この仕組みは、三者の利益を両立させる「三方良し」を目指す提案と捉えられる。上場会社と現経営陣には、これまでの知見を残しながら不足する実行機能を補う利点がある。既存株主には、資金調達だけに頼らない収益改善策を検証する機会が生まれる。ノア側も、上場会社の資本市場へのアクセスと既存事業を組み合わせ、スポーツ事業を全国へ展開できる可能性を得る。

三方良しを実現するには、取締役の選任後に役割と責任を曖昧にしないことが欠かせない。既存事業の改善、新規事業への投資、資金調達、株主への説明をそれぞれ誰が担い、どの指標で進捗を測るのか。現経営陣と提案側が共通のKPIを持ち、未達時の見直しまで開示できれば、「協調」は理念ではなくガバナンスの仕組みとして評価される。


もっとも、「協調型」と名付ければ自動的に協調が生まれるわけではない。取締役会の構成が変われば、事業戦略や資本政策への影響は大きい。裁判所が認めたのは株主総会の招集であり、候補者や事業計画を承認したものではない。9月4日に予定される臨時株主総会では、候補者の専門性、KPI、資金使途、現経営陣との役割分担を株主が判断することになる。

新しい株主提案の価値は、対立を避ける言葉ではなく、その後の実行と情報開示によって決まる。現経営陣を尊重しつつ、資本、事業、人材を同時に提供するモデルが機能すれば、業績が低迷する上場企業にとって、解任か現状維持かという二択を越える選択肢になり得る。

資料を通じて感じたのは、ノアの提案が「誰を退任させるか」より「誰と何を実行するか」に重心を置いていることだ。会社、既存株主、事業を担う側の利益を一つの再建計画へ結び付けられるのか。日本の上場企業に示された新しい株主提案の行方を追いたい。
【編集:F.R】
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