「人生100年時代」と聞いて、あなたはどんな気持ちになりますか。

寿命が延びたことを喜ぶよりも先に、「孤独感」や「老い」といったイメージが頭をよぎる人は少なくないでしょう。
おひとりさま女性にとっては、なおさらかもしれません。「今は元気に働けているけれど、20年後、30年後、私はどうなっているんだろう?」

そんな私たちに、「不安は、正体をはっきりさせて一つずつ片づければいい」と語るのが、今年59歳を迎えたメンタルコーチで作家のワタナベ薫さん。自身も離婚を経験し、おひとりさまとして人生を楽しむワタナベさんに、新刊『おひとりさまの生存戦略 人生100年時代をご機嫌に生きるスキル』に込めた思いとともに、未来への不安を楽しみに変えるヒントを伺いました。

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「大人の人間関係は緩めがいい」「女性は年齢を重ねるほど価値が上がる」など、目からウロコ、そして大納得の話が盛りだくさん。毎日をご機嫌に生きるために、実践したいアイデアも必見です。

人とのつながりは緩いほうが良い

――自分自身のことでいえば、老後の孤独も大きな不安です。

ワタナベ:
わかります。私もずっと一匹狼で仕事に没頭してきたのですけれど、あるときから、横のつながりは大事だなと思うようになりました。というのも、私は毎日ブログを更新しているのですが、東日本大震災のときに2日更新できなかったら、読者さんたちが心配して捜索願を出してくれていたんです。

そんなことがあって、私はたぶん孤独死して何日も経ってから発見されるということはないかなと。そこは安心しているのですが、何かあったときに助け合えるよう、同じくらいの年齢の友達とは連絡を取り合うようにしています。

――何かあったとき、お互いにSOSが出せたり、気づいてもらえる自分なりの環境をつくっておく。

ワタナベ:
そうです、そうです。
ただ、これって意外と難しいところがあります。例えば、SNSのコミュニティは気軽に誰かとつながるにはもってこいですが、どこか1か所を拠りどころにしてしまうと、「重たい存在」となって煙たがられてしまう危険性があります。

また、「老後は気の合う友達とシェアハウスで同居したい」と考えている人は多いようですが、実際にはなかなかうまくいかないものです。私が知っているケースでは、家賃を節約するために同居した友人二人が、マーガリンを上から削っていくか、真ん中から掘っていくかで大ゲンカになり、同居解消の話にまでなってしまいました。冗談のような本当の話で、もともとあったお互いへの不満が、マーガリンで爆発してしまったというわけです(笑)。

マーガリンでケンカになるくらい、大人にはそれぞれ譲れない価値観や生活リズムがあり、近すぎる関係はストレスです。また、「緩いつながり」が人生に新しい風を吹き込むことは、研究でも示されています。ゆるい関係をいくつか持っておくと、人生がもっと楽しくなるんじゃないかと思います。

――つまり、問題は早めに片付ければ、あとは思い切り人生を楽しめる。まるで夏休みの過ごし方みたいですね。

ワタナベ:
そうです、そうです。私は、夏休みの宿題はいつもギリギリ、なんなら二学期が始まってからもやっているタイプでした(笑)。
でもそれって、ずーっと荷物を背負っている気分なんですよね。だから私が伝えたいのは、8月のお盆過ぎくらいまでには終わらせて、残りの半月は遊びましょうよっていうことなんです。そう考えると、やる気が出るんじゃないでしょうか。

98歳まで人生を楽しんだ「宇野千代」という生き方

老後の安易なシェアハウスは危険?59歳メンタルコーチが教える、おひとりさまの「緩いつながり」の極意
ワタナベ薫さん
――ところで、ワタナベさんはロールモデルにしている女性はいるのですか?

ワタナベ:
作家の宇野千代さんですね。大正から平成まで活躍し、98歳で亡くなっています。まさに人生100年時代を生き抜いた女性で、その人生はもう波乱万丈、破天荒。4度の結婚と4度の離婚を経験し、60代後半からはおひとりさまになりました。当時の感覚からすればとんでもないことで、相当なバッシングを受けましたが、ご本人は、「私、他人の言うことなんかちっとも気にしていないの。だって、自分が生きるのに忙しいんだもの」と言って、まったく相手にしなかったそうです。

さらに、日本初のファッション誌を発刊したり、アパレルの会社を立ち上げたりと、実業家としても活躍し、生前にご自身が入る美しいお墓まで準備しました。「自分の人生は自分のもの」と言わんばかりに、最後まで人生を楽しみ尽くした方です。

――かっこいいですね。

ワタナベ:
本当にかっこいい。
作家として尊敬しているのはもちろん、生き方そのものが今の時代に非常にマッチしていると思えて、ロールモデルにしています。その宇野千代さんが、98歳で最後に出した本のタイトルが『私 何だか 死なないような 気がするんですよ』。このタイトルだけで、彼女のバイタリティが伝わってきますよね。

だから、私と私の会社のスローガンは、「自分の人生、やりたいことは全部やる」。宇野千代さんのように元気に生きて、元気に逝きたいですね。スタッフたちにも言っているんですよ。「万一、私が早く死んだときは、参列者は喪服禁止。花柄のワンピースとか着て、楽しく乾杯して送ってちょうだいね」って。

私たちは年を重ねて価値が高まるアンティークドール

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ワタナベ 薫さん
――年齢を重ねることを前向きに受け止めるには、どんな考え方が大切でしょうか。

ワタナベ:
自分のことをアンティークドールだと思うことです。世の中には、女性は年を重ねると価値が下がると考える人もいますが、私はまったく逆で、いろいろな経験を積んだからこそ、その人にしかない魅力や深みが生まれると思っています。アンティークドールも同じで、年月を重ねるほど価値が高まります。少しくらい傷がついたとしても、それは劣化ではなく味わいなんです。


ただ、アンティークドールも放置されてホコリを被っていれば価値は下がってきますから、私たちも自分を慈しみ、いたわってあげましょう。体と脳が健康であれば、人生は何歳からでも楽しめます。「もう歳だから」は、言えば言うほど老けていく呪いの言葉。今日で卒業してください。

人生100年をご機嫌に生きていくために

――人生をご機嫌に生きるために、ワタナベさんご自身が実践していることがあれば、教えてください。

ワタナベ:
3年前から「やりたいことリスト」をつくり、実践中です。ブログで「ワタナベ薫がチャレンジしたらかっこいいと思うことを教えてください」というアンケートをしたところ、200くらいのアイデアをいただきました。その中から、自分ができそうなことを片っ端からリストに入れています。英会話のような仕事に生かす目的のものもありますが、ボクシングや武道、それにクルマのドリフトもあります。昔からやりたかったんですよね、ドリフト(笑)。

人生の問題に対処したら、あとは数十年の自由な時間が目の前に広がっています。その時間を漫然とテレビやネットに使うか、胸がときめくチャレンジをするのかで、残りの人生の輝きが違ってきます。


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ワタナベ 薫さん
――大事なのは、本当に全部やることではなく、後悔しないようにすること。

ワタナベ:
そのために活用しているのが、自分でつくった「未来手帳」です。予定を書き留めるだけでなく、「こんな人生にしたい」という未来と、そのための「やりたい」を視覚化してくれます。小さな「やりたい」を一つずつ叶えていくのは、本当にワクワクしますよ。

私はもう母を見送りましたし、同年配や年下の友達で先に逝ってしまった人もいます。いつか私があちらに行ったとき、待っていてくれる人たちに胸を張れる生き方をしたい。「私、やりたいこと全部やったよ、お母さん」って言いたいんです。

――最後に、ご機嫌な人生へ一歩踏み出したい読者へメッセージをお願いします。

ワタナベ:
「人生100年時代」という言葉に、ネガティブなイメージを持ってしまう人もいらっしゃると思います。寿命は延びても、お金や健康、家のことなど、考えなければならないことが増えたように感じるからかもしれません。「私の人生、これからどうなるんだろう……」と思ってしまいますよね。でも、そんな不安はさっさと片づけてしまえば良いんです。
そうすれば、その先には遊園地が待っています。

「あと30年どうしよう」ではなく、「あと30年も楽しめる」。人生100年時代を、そんなふうに捉えてほしいですね。

<文/宇津井恵子 撮影/門嶋淳矢>
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