脳科学者の成田奈緒子先生が、子どもの「論理力」を育む方法を教えます。
■感情に振り回されず、論理的思考で行動する
「どーんじゃんけん」や「だるまさんがころんだ」は、状況の変化に応じて即座に判断し、その後の自分の行動を決めなければなりません。

起こりうるいくつかのパターンは事前に想定することができますが、ドキドキ、ハラハラするゲームの中では、感情が先走ってしまい、考えていた通りの行動を起こしにくいものです。
こういった状況で必要になるのが、脳の抑制的な働きです。「逃げたいけど、我慢して動かない」「ずっと安全なところにいたいけど、思い切って走る」
このように、感情に振り回されず、論理的な思考に基づいて行動できる習慣を身に付け、実生活に生かせるようになることが大事です。
子どもの論理力を高めるとは、単に「AだからB」と言葉で理屈を言えるようになることでなく、体を使って論理を覚えていくことです。
単純に見える「タオル取り」も、中には、なかなかうまくいかないことに業を煮やし、途中であきらめてしまう子もいます。「つらいけど、工夫して練習すれば、うまくいくはずだ」とチャレンジを続けることも、脳の抑制的な働きを鍛えます。
■どーんじゃんけん ~育つ力:思考の柔軟さ、論理的な判断力
向かい合った2人が歩み寄り、「どーん!」と手を合わせてからじゃんけんをします。じゃんけんに負けたほうが、初めに決めておいた場所まで逃げ切れば勝ち。途中で捕まったら負け。
「じゃんけんに負けたら逃げる」「勝ったら追う」という役割を瞬時に理解し、行動を切り替える必要があるため、脳の抑制的な働きが強化されます。体を動かしながら判断と切り替えを繰り返すことで、思考の柔軟さや論理的な判断力の土台が育まれます。
また、じゃんけん自体も、相手の出したものを瞬時に見分けるために動体視力が必要となるうえ、勝敗を瞬間的に判断しなければならないため、育脳と深く結びついた遊び。
相手とタイミングをそろえることも重要です。
■タオル取り ~育つ力:目と手の協応、空間認知能力
公園の木など、ちょっと高いところにタオルをかけ、ジャンプして取る遊び。子どもが手を伸ばして立ったとき、指先より少し上にタオルの端がくる高さに設定するのがポイント。簡単に取れるようになったら、少しずつ高くしていく。安全な場所なら幼児から楽しめます。室内でもOK。
この遊びでは、「どれくらい跳べば届くか」「手をどの位置まで伸ばせばよいか」を、目で見て判断しながら体を動かす必要があります。目標物との距離を見積もり、それに合わせて動きを調整することで、目と手の協応や空間認知能力が鍛えられます。
一度で取れなかった場合も、ジャンプの仕方や手の伸ばし方を工夫することで、試行錯誤しながら考える力が育ちます。
■だるまさんがころんだ ~育つ力:見通しを立てる力、作戦を考える力
鬼が背中を向けて「だるまさんがころんだ」と唱え、最後の「だ」で振り向く。ほかの子どもたちは、その間に少しずつ前に進み、鬼に気づかれずに鬼の背中をタッチできれば成功。振り向いた瞬間に動いていた子はアウトとなり、鬼に捕まる。
幼稚園の年中以上向き。
この遊びの大きな特徴は、鬼の動作を見て、「動く」と「止まる」を一瞬で切り替えなければならない点。鬼の声の速さや間合いを予測しながら進み、振り向いた瞬間にピタリと止まるために、衝動を抑える脳の抑制機能が強く働きます。
また、どこまで進めば安全か、思い切って進むか慎重にいくかを考える中で、見通しを立てたり作戦を考えたりする力も育まれ、論理的な思考の土台が養われます。
※本稿は、『プレジデントFamily2026春号』の一部を再編集したものです。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)

文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表

小児科医・医学博士・公認心理士。1987年神戸大学卒業後、米国ワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング』(共著、合同出版)、『子どもの隠れた力を引き出す最高の受験戦略 中学受験から医学部まで突破した科学的な脳育法』(朝日新書)など多数。

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(文教大学教育学部教授、子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子 構成=金子聡一 イラストレーション=ワタナベケンイチ)
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