国民受けする政策の実行部隊を作るのが高市早苗首相の狙いだったのだろう。9月17日に行った内閣改造で生まれた新体制は、高市色が強いものになった。
組閣人事で最も早く内定が報じられたひとりが片山さつき財務相の留任だった。当初は交代説も流れたが、高市首相ご執心の食料品の消費税率1%への引き下げに協力する姿勢を鮮明にしたことで、早々に留任が固まった。党役員人事でも麻生太郎副総裁の続投が早々に決まったほか、麻生氏の義弟である鈴木俊一氏の幹事長も留任が固まった。高市首相は、財務省に睨みがきく麻生氏や鈴木氏を押さえ、片山財務相を続投させることで、消費税減税に向けた体制固めをしたわけだ。
■外堀を埋められた財務省
財務省は当初、消費税減税には何としても抵抗する構えで、世論を消費税減税反対に向かわせるなどして、減税ではなく給付に持っていこうとしていたとされる。そのうえでは、財務省OBの先輩で言うことを聞いてくれない片山財務相の残留は何としても避けたかったところだが、高市首相に外堀を埋められる格好になった。
高市首相としては10月招集の臨時国会で法案審議がされる消費税減税は絶対に通すという信念が感じられる人事だった。
次に米国との関係など外交安全保障政策だ。茂木敏充外相の留任は早々に決まったが、赤沢亮正経産相の扱いは最後まで揉めていた模様。
米国との関税交渉などを一手に担いトランプ大統領とも直接面会してきた赤沢氏を主要閣僚から外すことには、政策ブレーンなどからも反対する声があったとされる。結局、両氏とも従来のポストで残留するということになり、厄介な米国との交渉の行方に気を揉んできた政策通たちは胸を撫で下ろした。
■「外国人問題」にどう向き合うか
小野田紀美・経済安全保障担当相はSNSなどを通じて右寄りの国民の人気が高く、高市氏の支持母体とも言える右派の諸団体などの受けもいい。世の中のムードが、中国との対立や外国人排斥を支持する流れになっていることもあり、続投が決まった。
もっとも、政策的には、外国人労働者の受け入れ厳格化などは、企業などの人手不足に拍車をかけており、小野田氏の「厳しい姿勢」とは裏腹に、今後、どう適切に外国人移民を受け入れていくかは高市内閣の大きな課題になってきそうだ。
安倍晋三首相は「日本はいわゆる移民政策を取らない」とする一方で、なし崩し的に外国人労働者を受け入れてきた。その矛盾が今、問題を顕在化させているともいえ、外国人問題にどう向き合うか真正面から議論するタイミングがきている。
■注目ポストの農林水産相
小泉進次郎氏も防衛相になって以降の国民の支持が高まっている。防衛予算の大幅増額など、国民世論を敵にできないテーマが控える中で、国民人気の高さで乗り越えようというのが高市首相の戦略と言える。
木原稔官房長官は高市首相の最側近で続投は半ば当然視されていたので説明する必要はないだろう。
一方、交代が決まったポストで注目なのは、まず農林水産相。
■物価高対策中の「価格下落阻止」に怒り
鈴木氏の前任の小泉氏はコメ価格が高騰する中で、「生活者目線」で効率化や競争力の強化を掲げる大胆な農業改革政策を打ち出した。特にコメについては減反から脱却して増産に転じ、2030年までにコメの生産量を800万トンに引き上げるとした。また、規制を緩和して民間企業の参入を促し、農業を稼げる成長産業にすることを掲げた。
鈴木氏はこうした小泉農政を否定、従来型の農協や農家を保護する路線へと修正した。結果、その後もコメ価格の高騰は続くことになった。
そんな鈴木氏の政策が「生活者目線」を大事にする高市首相の逆鱗に触れたという。2026年の春以降、コメの市中在庫が過去最多となるなど、コメ余りが顕著になると、農水省は過去に放出した政府備蓄米の買い戻しを打ち出す。ダブついた2025年産のコメを政府が買うことで、当然、価格の下落を抑える効果が出る。
高市首相からすれば、物価高騰対策をしている中で、価格下落を阻止するとは何事か、というわけだ。慌てた農水省は価格に影響を及ぼさないように数量や価格を調整するとしたが、高市首相の怒りは収まらず、農水相交代は確定的だと早い段階から永田町では言われていた。
■「政治とカネ」問題への関心が薄れる
交代で初入閣した簗和生農水相が今後どんな農政に舵を切るのか。鈴木路線を引き継ぐのか、小泉農政のような改革を再び目指すのかが大いに注目される。
一方で、新聞メディアなどは、自民党の派閥の政治資金問題で収支報告書への不記載があったことを問題視し、簗新農林水産相と関芳弘文部科学相を批判している。「政治とカネ」の問題が政界を大きく揺るがせ、自民党が大きく議席を減らしたのも過去の話となり、今や有権者はほとんど「政治とカネ」の問題に関心を失ったようにみえる。高市首相はそうした国民のムードの変化を的確に捉えていると言ってもいいだろう。
改造を終えた高市首相は記者会見し、「専門性などを考慮し、腰を据えて政策を実行し、前に進めてもらえることを重視した」「責任ある積極財政の大方針を掲げ、強い経済の実現に向けた政策を加速させる」と語った。
■林芳正氏を閣外に出した
政策実行を担える人材で固めたというわけだが、政治的な思惑も鮮明になった。林芳正総務相を交代させ、閣外に出したのだ。林氏は総裁選で争った中で唯一、主要ポストから外れることになった。政策ブレーンの中には政策能力の高い林氏を閣外に出すマイナス面を心配する人もいたが、ライバルを排除したい高市氏の意思が勝った。林氏が財務省に近いことも一因だったと見る向きもあるが、いずれにせよ政治的な思惑が背景にある。
自民党の石井準一参議院幹事長を交代させ、青木一彦氏を後任に据えた人事も高市氏の思惑が反映されたと言われる。
■狙いが見えない規制改革相のポスト
もうひとつ、狙いが見えないのが日本維新の会の中司宏氏の規制改革相への受け入れ。中司氏は否定しているが、維新側が規制改革に関するポストを求めたと報じられていた。維新からすれば、党の看板とも言える「規制改革」の大臣を握れるのは願ってもないことだが、高市氏が規制改革に本腰を入れるつもりがどれぐらいあるのか。
高市氏は内閣発足後、米国の政府効率化省(DOGE)に習って日本版DOGEを立ち上げた。内閣官房に「租税特別措置・補助金見直し担当室」を新設したが、日本経済新聞は9月3日に、「税優遇廃止3件、財源捻出10万円どまり」と報じている。霞が関はまったく動かないわけで、日本維新の会の閣僚という「異物」を投入することで、改革を前に進めようとしているのかもしれない。
■「規制改革」という言葉の登場回数
ちなみに毎年初夏に閣議決定される「骨太の方針」に現れた「規制改革」という言葉の回数は、第2次以降の安倍内閣が策定した2013年から2020年までは5回から17回だったが、それ以降の内閣は1回から5回と目に見えて減っていた。それが今年7月21日に高市内閣が閣議決定した「骨太の方針2026」では11回登場しており、少なくとも掛け声だけは「規制改革」に前向きになっているようにみえる(図表1)。
「強い経済」を作るためには規制改革で既得権を打ち破ることが必要だと考えているのだとすれば、維新の力を使うのもうなずける。
----------
磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト
千葉商科大学教授。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。
----------
(経済ジャーナリスト 磯山 友幸)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
