【写真を見る】LE SSERAFIM、ILLIT、KATSEYE
そして歌詞が、この曲の核心だ。テーマはずばり「『アイコニック』の意味の証明」。この曲で繰り返されるのが、〈私 いつの間にかアイコニック/私 図らずもアイコニック〉というサビだ。話題になるほどにアイコンになってしまう——その現代社会の構造を、3組はほのめかしている。タイトルの”by mistake”は、ここでもうひとつの意味を持つ。意図してアイコンになったわけではない、あなたたちがそうしてくれた、と。
アルゴリズムすら自分たちを攻撃するような内容はなくしてしまう。週7日24時間どころか「週8日25時間」休まず観察してくる相手に、「ねえ、あなたのほうこそ大丈夫?」と逆に心配してみせる余裕。自分を分析することに費やされる膨大なエネルギーを、そっくりそのまま自分たちの燃料に変えてしまう。深刻なテーマを、深刻なまま終わらせない。
公式クレジットによれば、この曲のソングライター陣には、ジャスティン・ビーバーやセレーナ・ゴメスらのヒットを手がけてきた欧米ポップの実力派Justin Tranterと、ハイパーポップを代表する書き手のひとりAlice Longyu Gaoが名を連ねる(AliceはKATSEYEの「Gnarly」の作詞にも参加している)。K-POP圏内のコラボに留めるのではなく、欧米メインストリームの王道と、ハイパーポップ以降の先鋭性を正面から狙いに行く布陣だ。
この出会いは、突然じゃなかった
3組の関係を少しさかのぼってみると、このコラボにはそれなりの積み重ねがある。
話は2023年に戻る。KATSEYEが生まれたオーディション番組『The Debut: Dream Academy』では、韓国を訪れた参加者の前にLE SSERAFIMがサプライズで登場し、ミッション曲として自分たちの「ANTIFRAGILE」と「FEARLESS」を提示した。参加者たちは2曲のどちらかを披露し、後にKATSEYEのメンバーとなるSOPHIAも、このとき「ANTIFRAGILE」の英語バージョンを披露して高い評価を得ている。つまりKATSEYEを生んだオーディションの重要な場面に、LE SSERAFIMの存在と楽曲が深く関わっていた。最終的にKATSEYEのメンバーが決まるのはこの先の話だが、その道のりの入口に、先輩であるLE SSERAFIMがいたのは確かだ。
LE SSERAFIM ©︎HYBE. ALL Rights Reserved.
そして2025年4月。LE SSERAFIMの初ワールドツアー「EASY CRAZY HOT」の仁川公演に、ILLITとKATSEYEのメンバーが駆けつけた。バックステージで撮られた3組の集合写真がSNSに投稿されると、K-POPファンの間で3組が初めて一堂に会した写真として大きく話題になった。
後輩であるILLITのメンバーは、先輩のステージにすっかり感激した様子で、ファンにその興奮を伝えていた。2組のメンバーが「FIM-LIT」という合体ニックネームで呼び合っているという話も、ファンの間で微笑ましく受け止められた。
ILLIT ©︎HYBE. ALL Rights Reserved.
同じ頃、LE SSERAFIMのHUH YUNJINは自身のInstagramに、全員が輪になって手を差し出す円陣写真を投稿。その後もKATSEYEのSOPHIAとYOONCHAEがLE SSERAFIMのLAコンサートに姿を見せたり、3組の関係はSNSやファンコミュニティのなかで少しずつ形になっていった。
この「先輩・後輩」のつながりは、当人たちの言葉でも裏付けられている。英BBCの取材に対し、KATSEYEのSOPHIAはHUH YUNJINとほぼ毎日連絡を取り合っていると語り、メンバーのLARAは「自分たちを本当に理解してくれる人がいるとすれば、それはLE SSERAFIMだ」と話している。KATSEYEが活動していく中で、先輩であるLE SSERAFIMが支えになったという。KATSEYEがLE SSERAFIMの曲を披露したオーディションを経てデビューし、活動中もアドバイスを受けながら、ブレイクの年に支えられた——その関係が、いまも続いている。
KATSEYE ©︎HYBE. ALL Rights Reserved.
今回のコラボレーションは、3つのグループが一緒に作品を完成させるために十分な準備期間をかけてリリースされた。そんな曲のタイトルに、"偶然(by mistake)"という言葉が入っているのは、考えてみると面白い。偶然に見えるものの裏側に、実はかなりの積み重ねがある——それはこの曲の成り立ちそのものにも言えることかもしれない。
3組を並べると、グローバル音楽市場を牽引する彼女たちの「次」が見えてくる
LE SSERAFIM、ILLIT、KATSEYE。
LE SSERAFIMは「K-POPがどこまで届くか」の最前線にいる。
グループ名は「IM FEARLESS(私は恐れない)」のアナグラム。デビュー以来、ダイナミックなエネルギーと「自分らしさを貫く」という一本の軸でストーリーを描いてきたグループだ。2022年のデビュー以来、紅白3年連続出場、日本レコード大賞でK-POPガールグループ初の特別国際音楽賞、東京ドーム公演、米国4大大衆音楽授賞式『2024 MTV Video Music Awards』でプレショー(Pre-show)のステージを飾ったことに加え、「PUSH Performance of the Year」を受賞。米国に続いてヨーロッパ最大の音楽授賞式『2024 MTV Europe Music Awards』でも、パフォーマーとして単独ステージを披露し、K-POPガールグループで初めて「Best PUSH」を受賞するという歴史的な快挙も成し遂げた。さらに、米国の年越し特番『Dick Clark's New Year's Rockin' Eve』初出演など、記録の更新を続けてきた。2026年は5月にリリースした2ndスタジオアルバム『PUREFLOW pt.1』を携え、初の欧州単独公演を含む世界23都市を巡るワールドツアーが控えている。「K-POPグループが世界のメインステージにどこまで食い込めるか」を示してきたグループが、いままさにその次の扉を開けようとしている。
ILLITは、日本と韓国をつなぐ「次世代」の象徴だ。
2024年のデビュー曲「Magnetic」は世界各地のチャートを席巻し、紅白初出場、日本レコード大賞新人賞と、日本での評価も早かった。柔らかくキャッチーでありながら、どこか予測のつかない——そんな独特な魅力で、多くの人を惹きつけてきた。2025年にリリースされた初の日本オリジナル曲「Almond Chocolate」も、K-POPの日本オリジナル曲としては異例のヒットを記録し、紅白および日本レコード大賞への2年連続出場を果たした。日本人メンバー2人(MOKA、IROHA)を擁し、日韓双方のファン層に自然に届く強みを持つ。
2026年4月リリースの4thミニアルバム『MAMIHLAPINATAPAI』はBillboard 200に26位で初登場し、デビューから4作連続のチャートイン、そして自己最高位を達成。タイトル曲「It's Me」は中毒性の高いテクノジャンルのトラックで、5週間の公式活動が終わった6月初旬になってもなお韓国の音楽番組で1位を獲得し、TikTokでも多数の投稿に使用されている。メンバーそれぞれの人気も高く、”これから”の幅が一番大きいグループでもある。
KATSEYEは、従来の音楽産業の枠組みを超えた活躍ぶりをみせている。
KATSEYEは、LAを拠点とするグローバルガールグループで、さまざまなルーツを持つメンバーで構成されている。2024年6月のデビューから約2年、K-POPのノウハウで磨かれた表現力を土台にしながら、その音楽もパフォーマンスも、まっすぐ世界のメインストリームを向いている。K-POPの感性と欧米ポップの文法を自在に行き来する、ハイブリッドな存在だ。果敢で、自信に満ちたパフォーマンスを武器に、グローバルポップの新星として、いま最も勢いのある存在のひとつだ。
今回の「ICONIC BY MISTAKE」は、これら3組のコラボ曲であると同時に、グローバル音楽市場を牽引する彼女たちの現在地を1曲に凝縮したような作品でもあるのだ。
この「偶然」の次
最後に、3組それぞれの「次」なる飛躍の舞台を並べておきたい。
LE SSERAFIMは2026年、初の欧州単独公演を含むワールドツアー『2026 LE SSERAFIM TOUR 'PUREFLOW'』で、K-POPグループのグローバルな歩みをさらに更新しようとしている。この夏は日本のサマーソニック2026にも出演し、日本にいるファンの前にも立つ。ILLITは6月13日から初のライブツアー日本公演『ILLIT LIVE 'PRESS START︎︎❤ in JAPAN』を5都市11公演で開催中。
だからこそ、この3組が1曲のために集まったことの意味は大きい。先輩の曲で世に出た後輩がいて、世界で活躍する先輩として支えた者がいて、同じ悩みや努力をしてきた——その積み重ねの上に立つ、本物の連帯だった。苦労した経験すら笑いに変えてしまう強さは、ひとりでは表現しきれない。隣に、同じ景色を見てきた仲間がいるからこそ言える「私は図らずもアイコンになった」のだ。彼女たちの「シスターフッド」は、ここにきて、借り物の言葉ではなく、手触りのある実感になった。
”by mistake”——偶然アイコンになった者など、ここにはいない。それぞれが別の道を全力で走ってきた3組が、一度だけ同じ地点で手を合わせた。その手が次に何を作るのか。「ICONIC BY MISTAKE」は、その問いのきっかけにすぎない。
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