サッカー日本代表は、スウェーデン代表と1-1で引き分けて勝ち点を5に伸ばした。結果、グループFを2位で通過して決勝トーナメント進出が決定。
ラウンド32では、ワールドカップ優勝最多5回を誇るサッカー王国・ブラジル代表との対戦を迎える。
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「10人で戦う時間」が失点に結びつく

スウェーデン戦は、キックオフの時点でノックアウトステージ進出をほぼ確実にしていた。それでも日本は勝利を目指してピッチに立った。後半11分、菅原由勢から斜めに差し込まれたパスを、堂安律と上田綺世の見事な連係が前田大然の先制ゴールを生んだ。

その後、主審からソックスの履き替えを命じられた中村敬斗が一時的にピッチを離脱。10人で戦う時間を余儀なくされると、ゲームの主導権は相手へと傾く。後半7分、アンソニー・エランガに同点弾を許してしまう。相手のFKから続く一連の流れであったため、失点時は堂安が左、中村が右に位置するイレギュラーな配置であった。噛み合わせのズレが要因となり、中央へカットインするスペースとシュートの隙を与えてしまった。日本にとっては守備の反省点となるが、クロスとも見紛うタイミングと弾道でネットを揺らしたエランガの技術が一枚上手であった。

そのままスコアは動かず1-1のドロー。試合自体は互いに白星を狙い合う緊張感に満ちていたが、敗戦でも勝ち上がれる状況だったため、どこか安堵感を持ちつつ見守れる一戦であった。第3戦でこれほど心理的な余裕を持って戦えた大会は過去に例がない。
プロセスの段階とはいえ、現在の躍進は「最高の景色」の片鱗を成すものといえる。

FIFAランキング上位に入るだけではなく…

日本サッカー協会(JFA)は「最高の景色を2026 FOR OUR GREATEST STAGE」を合言葉に今大会へ臨んでいる。掲げた言葉が指すのは、ワールドカップの頂点から見下ろす眺望だけではない。「SAMURAI BLUEだけが望む景色ではなく、日本サッカーを取り巻く全ての人たちとともに望む風景」と定義されている。同スローガンは「JFA2005年宣言」で掲げられた「2050年までにFIFAワールドカップを開催し、日本代表チームは大会で優勝する」という「JFAの約束2050」を原点とする。「約束を果たすには、今、世界の頂点を狙うチームでなければなりません」と、現在の立ち位置を具体的に示した決意表明なのだ。

ちなみに、同宣言には2015年までに「日本代表チームは、世界でトップ10のチームとなる」という「JFAの約束2015」も存在していた。宣言以降のFIFAランキング最高位は2011年4月の13位であり、数字上の目標は達成できていない。しかし、10位以内に入りさえすれば目的を達するという単純な話でないことは、誰もが理解しているはずだ。順位だけで語るなら、現行の算出方式とは異なるものの、Jリーグ開幕前の1998年に9位を記録している。要するに、世界トップ10の基準を満たす実力を身につけることこそが本質なのだ。

実力で勝ち取った第2ポッド

実力を証明した結果が、本大会の組み合わせ抽選会におけるポッド分けに表れた。組み合わせ抽選時、日本は18位で、実力で史上初となる第2ポッドへと組み込まれた。過去に開催国枠として第1ポッドに入った経験はあるが、純粋な成績によって第2ポッドを勝ち取ったのは初であり、過去最高の到達点である。
広義に解釈すれば、世界を驚かせたポッド分け自体が、日本サッカーが新境地に達した証拠といえる。

このように広い意味において、日本代表はすでに多くの素晴らしい景色を我々に見せてくれている。グループ第2戦のチュニジア戦における4-0の快勝は、本大会で3点差以上の差をつけた史上初の勝利であった。そのうえ、自国開催の恩恵があった2002年大会を除けば、初めて無敗でのグループステージ突破を成し遂げている。

正式なトーナメントが始まるここからの戦いは、さらなる感動をもたらしてくれるに違いない。まずは決勝トーナメントでの歴史的初勝利があり、そこにはワールドカップの舞台で初めて優勝経験国を撃破するという勲章もついてくる。さらに、勢いのまま次戦にも勝利して史上初のベスト8入りを果たし、決勝進出、世界一へと上り詰めることで、これ以上ない究極の景色に到達するはずだ。

ダークホースがブラジルを破れるか

大いなる目標を達成するうえで、ブラジル代表はこれ以上ない障壁といえる。言わずと知れたサッカー王国であり、世界が認める強豪だ。対戦カードが決まった瞬間、くじ運の悪さを嘆いたファンも少なくないだろう。「現在のブラジルは史上最弱であり、十分に付け入る隙がある」との声も聞かれるが、相手の状況がどうあれ、ワールドカップの舞台で全大会連続出場を誇る史上最多優勝国から勝利をもぎ取るという結果こそが、今後の日本サッカー界をランクアップさせるはずだ。

前回大会でドイツとスペインという優勝経験国を破ったことで、日本に対する世界的評価は激変した。本命にこそ挙げられていないものの、大物食いの可能性を秘めた不気味なダークホースとして各国メディアに警戒されている。
オランダとの引き分けや、無敗でのグループステージ突破という実績によって、評価はさらに強固なものとなった。

筆者としては、評価が一時的なものではなく普遍的な基準となり、常に優勝候補として数えられる状態になってこそ、真の強豪国の定義を満たすと考えている。日本がその領域に足を踏み入れるには、優勝候補と正面からぶつかり合ってねじ伏せる実績が不可欠となる。

世界が注目する舞台で大番狂わせが見たい

実際に、昨年10月の親善試合で日本はブラジルを撃破している。「テストマッチだから」「本番とはメンバーが違うから」と、ブラジルの敗戦に対して御託を並べる識者は世界中に存在するだろう。それでも、今まで手が届かなかった相手がブラジル代表なのだ。どのような形であれ、勝利を収めたのは事実。しかも、アトランタ五輪で「マイアミの奇跡」と称された当時とは異なり、試合内容も伴ったうえでの金星であった。

言い訳の通用しないワールドカップという至高の舞台で再び勝利を収め、「日本は世界のどこが相手だろうが勝てる」という印象を不動のものにしたい。

戦う選手たちにとっての「最高の景色」が優勝であることは言うまでもない。日本が真の強豪国へと脱皮するために、避けては通れない必然の一戦。それが、今回のブラジル戦なのだ。


<TEXT/川原宏樹>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる
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