約35キロの減量に成功したことをSNSで報告し、話題を呼んだシンガーソングライターの素二愛さん(22歳)。劇的に痩せたきっかけは、“家庭の事情”による独り暮らしだった。
彼女はなぜ実家を失い、家族はどうなったのか――驚きの家庭環境に迫る。
「新しい家族にお金をかけたい」父親の身勝手な言い分で家を追い...の画像はこちら >>

父からの衝撃の一言で、生活が一変

――約35キロものダイエットに成功したそうですが、最初はご自身の意志ではなかったと伺いました。

素二愛:端的に言うと、実家を追い出される形になってしまったことが発端です。父から「2ヶ月後には家を出てほしい」と言われまして……。

――それは、どうしてでしょう。

素二愛:私はイラン人の父と日本人の母の間に生まれたハーフなのですが、父が結構破天荒な人なんです。事業家である父は、もともとあまり家にも帰ってこないくらい忙しい人でした。

数年前、父は別の家庭を築いていて、私と母は「今の家族にお金をかけたいので、出ていってくれ」ということだったようです。

旅行先で遭遇した父親の“別の家族”

――知らない間にお父様は別の家庭を……。

素二愛:母から「実はお父さんとは離婚している」と聞いたのは、私が20歳になってからです。私を傷つけないように、言わないでいてくれたと知りました。母も辛かったはずなのに、私の心を守ることを優先してくれていたのです。

ただ、私はそれよりも前から気づいていました。これはまったく偶然なのですが、家族でよく行っていた旅行先があって。
高校くらいのとき、私は友人とその場所を訪れました。すると、まったく偶然に、父とその“新しい家族”に出くわしたのです。

――それは驚いたでしょうね。

素二愛:かなり衝撃を受けました。遭遇場所はスーパーマーケットだったのですが、父が2人の間の子どもと思われる子と一緒にトイレから出てきたんです。

私はとっさのことで頭が真っ白になって、走って逃げようとしました。すると父から呼び止められ、「ママには絶対に言うな」と釘を刺されました。黙っていることが正義なのか、しばらく悩みましたね。

――結局、お母様には知らせなかった。

素二愛:高校くらいのときに、母に「もしも相手が傷つくとわかっていても、本当のことを話したほうがいい場面もあると思う?」と聞いたことがあります。母は「黙っているのも正義だと思う」というようなことを言っていたので、ずっと黙っていました。けれども、20歳くらいになったとき、「お父さんのことで何か知らない?」と水を向けられたので、話しました。
すると「やっぱりか……」という反応でしたね。

ずさんな対応で不登校へ追い込まれた過去

――ところで、素二愛さんは21歳で独り暮らしをしますが、お母様と住む選択肢はなかったのでしょうか。

素二愛:母と一緒に、祖母と同居をする話もありました。けれども当時、私が非常に精神的に不安定で、祖母に心配をかけたくなかったんです。それで母にお願いして、祖母と2人だけで住んでもらうことにしました。

――差し支えなければ、精神的に不安定になった理由について教えてください。

素二愛:根本の原因としては、中学時代の性被害だと思います。相手は同級生でした。まったく突然に被害に遭い、当時は何が何だかわからずに学校へ報告したんです。しかし結果的には「お互いに謝って終わりにしましょう」という、ことなかれ主義に落ち着いてしまいました。しかもそのことが、男子生徒の取り巻きに「素二愛が◯◯くんを陥れようとした」とねじ曲がって伝わってしまい、イジメの対象になりました。

――イジメはどのようなものでしたか。

素二愛:席が勝手にどかされていたり、すれ違いざまに暴言を吐かれたり蹴られたり……結局、それがきっかけで不登校になり、望んでいた進学先を受験することもできませんでした。
いわゆる思春期病棟に入院もしました。

父の気質を過激にした壮絶な背景

――ご家族の受け止めはいかがでしたか。

素二愛:父は“根性論”を掲げて人生を切り開いてきた人なので、「精神疾患なんて気の持ちようで克服できる」と考えていたと思います。動画を回しながら私のことを蹴飛ばして、「演技だろう?」と笑っていました。また、それを私の主治医に得意げに見せて、困惑させていました。

――かなりアクの強いお父様ですね。

素二愛:一般的には、毒親と呼ばれる部類だと思います。ただ、私にはどうしても、父の人格がそのようになったことが父だけの責任のように思えないところがあります。

――どういうことでしょうか。

素二愛:実は、父はイラン・イラク戦争にも参加した兵士でした。生きながらえはしたものの、死と隣合せの恐怖を常に肌身で感じていたといいます。そして彼自身、PTSDから精神疾患を発症した経験がありました。また、生家は貧困にあえぎ、10人近くのきょうだいがいたことから、そのうちの何人かが亡くなる不幸もあったようです。
こうした背景から、愛情に飢えた人になったのではないかと考えています。家族をどのように愛せばいいか、本当は本人がいちばん苦しんだのではないかと思うんです。

本名に込められた、家族の愛

――そういえば、素二愛さんのお名前は本名だとか。

素二愛:そうなんです、この漢字も本名そのままなんです。“素”敵な“二”人の“愛”という意味でつけたそうです――思いっきり離婚して片親になっているわけですが(笑)。

でもどこか、人間の根本にある愛情とか優しさに、私も期待をしてしまうんですよね。

――いま、お父様はシンガーソングライターとして活動しているのをご存知ないようですが。

素二愛:はい、伝えていません。丸の内でOLをやっていることになっています(笑)。私の活動を父が知るまで有名になれれば、きっと心配をかけないと思うので。それまで嘘を突き通すのもまた、正義かなと思っています。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。
可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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