毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今回のシリーズは、今日が最終回。

今朝は、3年前にこのコーナーでご紹介した、スギ花粉飛散防止の技術が、いよいよ実用化へ向けて動き出した、という記事を紙面で見つけたので、こちらを取り上げます。

食品添加物でスギの雄花を枯らす!

これは、薬剤を撒いて、スギ花粉を飛ばなくする技術なのですが、どんな薬剤なのか、スギ花粉の飛散防止を研究している、東京農業大学の小塩海平教授に改めて伺いました。

東京農業大学国際農業開発学科 小塩海平教授

「ソルビタントリオレートっていう物質で、具体的には、でんぷんから出来るソルビトールという糖と、植物油の成分のオレイン酸っていうのがくっ付いた物質なんですけど、水にも溶けるけれども、油っぽい物質なんですね。

で、これを8月から10月くらいにスギの雄花にかけると、花粉が出来なくなる、そういう仕組みなんですけど。そうですね、花粉が出来なくなって、枯れていく、雄花だけ枯れる感じです。

花粉以外のところは全然影響無いですね。食品添加物でパンとかクリームとか豆腐とか、乳化の安定に使ったり、あとホイップの泡立てを安定させたりするのに使われてます。あとはアイシャドウとかファンデーションの、ノリが良くなるために使われてるようで、食品や化粧品にも入ってるもので、我々が普段触れて、体にも入ってくるようなものなので、人体に対する影響っていうのは、問題にならないと思います。」

人の体に影響の少ない、食品添加物の薬剤を使って、しかもスギの雄花だけを枯らせることが出来るもの。その効果は抜群で、雄花だけが枯れて花粉が出来ない。だから花粉も飛ばない!

これを見つけた小塩先生は、8年かけて他の植物や生き物への影響が無いことを確認し、ついに、実際の杉林で、ヘリコプターでの散布実証実験を行いました。

その時に取材をしたのですが、濃度はどれくらい?どんなノズルがいい?(雨みたいに?霧状で?)、どのくらいの量を撒けばいい? 課題は山積みでした。しかも、花粉の時期は年に一回。つまり、一年に一回しか実験できないので大変だ、と話していました。

撒き方、濃度、量、色んなことが分かってきました!

それから3年。成果は大きく出ていました。

東京農業大学国際農業開発学科 小塩海平教授

「結構広い所で撒くことが出来て、何か所かで撒いて、実際に花粉が飛ぶ様子を、今年は撮影することが出来て、そしたらほとんど花粉飛ばなくすることが出来たんですよ。

去年試したのが、3倍に薄めて1ヘクタール当たり150リットル撒くっていうのを試しました。前は、22倍に薄めて1ヘクタール当たり1350リットル撒くっていうので、ほぼ雄花枯らすことが出来たっていう話だったんですけど、それだとヘリコプターが何往復もしなくちゃいけないので、1ヘクタール当たり150リットルだったら、1フライトで2ヘクタール撒けるんですよ。それで5割から7割くらいの雄花を枯らせて花粉はほとんど出来なくなりましたので、効果としては、自信を持ってかなり減らせるなという。

で、ヘリコプターのスピードは遅い方がしっかりかかる。でノズルの数が多くて霧状になるのがいいという、ま、少しずつ前進して大体そんなことが分かるようになって、あと、農薬登録をして、しっかり撒けるようにということを、今、取り組んでるところです。」

色々と、分かってきました。

最初は栃木県塩屋町で6ヘクタールの杉林だけだったのですが、協力してくれる自治体も増え、群馬県安中市や、静岡県浜松市天竜杉の林、三重県大紀町などが広く杉林を使わせてくれて、実験をしてきました。

その結果、前回よりも濃度を濃くして、1ヘクタール当たりの量を少なくしたら、雄花の枯れ具合は5~7割にとどまりましたが、花粉はほとんど飛びませんでした。

ヘリコプターは一回飛ばすと400万円。何往復もさせるとお金がかかりますから、少ないフライトで効果を高く、の値が分かったのは大きいですよね。

そして、その効果は絶大!撒いたところと、撒いてないところが一目瞭然です!

スギ花粉の飛散防止技術、実用化できるか!?の画像はこちら >>
<赤の点線の中が、薬剤を撒いたエリア。
白い煙のようなものが飛散している花粉!!>

お金があれば3年で・・・

今後、薬剤を農薬として登録し、許可が下りれば、早ければ3年後には、いざ実用化!なのですが、なかなかスムーズにはいかないのです。

東京農業大学国際農業開発学科 小塩海平教授

「お金があれば3年で行くんで、今、ちょっとクラウドファンディングをしてるんですけれども。あの、林野庁の補助事業に採択されていて、2022年から、22、23、24、25と4年間2000万円から3000万円くらいの予算を頂いて、ま、それでもヘリ4回飛ばすと2000万くらい無くなるんで、もうちょっと欲しいなと思っていたところなんですが、今年は採択されなくて、全然予算がなかったので、自力でやらなくてはいけなくて、それで4月の23日からクラウドファンディングをして、今月末まで。

農薬登録を取るために4000万円くらいかかるのと、ヘリコプターで試験をするのが一ヶ所で一回400万円くらいかかるので、そんなことで、最初6000万円くらい集めたいなと思ってたんですけれども、花粉が飛んでる時期にやればもうちょっと違ったかもしれないんですが、私の力不足でですね、ま、でも、今500万円くらい、みなさん協力してくださったところで、感謝してます。」

林野庁の予算がもらえなくなってしまったんです!そこでクラウドファンディングを始めました。しかし、花粉症に困っている人は多いと思うのですが、なかなか・・・。

東京都は無花粉や少花粉のスギに植え替えをしていますが、2024年一年間に切った杉林が31ヘクタール。東京の杉は3万ヘクタールあるので割り算すると、1000年かかる!1000年は待てない!

でも、小塩先生の方法なら、31ヘクタールは一日で撒けちゃう。

小塩先生のご実家はランの専業農家。「花粉の無い世界って、花の無い世界なんですよ」と小塩先生。

だからというわけではないですが、無花粉や少花粉に植え替えるのはもちろん良い策。ただ、すべてそれにするのではなくて、時間もお金もかかるので、こうした技術を使いながら対策すると良いと思うんですが、と話していました。

経済損失が大きいと言われる花粉症ですから、国にしっかり動いて欲しいものですね。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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