「インドア」「ビーチ」二刀流バレーボーラー
水町泰杜インタビュー(前編)

 5月14日、水町泰杜は愛知県碧南市のトヨタ自動車・衣浦工場に足を運んだ。工場内に構えるビーチバレーボール部の施設に到着するや、ウェアに着替えて、いざ日焼け止めクリームのキャップを開ける──その時だった。

「うーわ、ビーチにきたー!!って。日焼け止めの匂いで実感しました。ビーチバレーボールが始まるんだと。

 ふだんの生活で日焼け止めを使わないですし、それこそ昨年のビーチバレーシーズンを終えて以来、久しぶりだったので。日焼け止めの匂い、こんなに強かったっけ......と思いました」

 自身にとって3年目となるビーチバレーシーズンは、こうして幕を開けた。

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 振り返れば、その4日前までインドアを戦っていた。

 ウルフドッグス名古屋の一員として2025-26 大同生命SVリーグを戦い、結果的に5月10日のチャンピオンシップ・セミファイナルで敗れてシーズンを終えている。その翌日にはさっそく、ビーチバレーの所属先であるトヨタ自動車のスタッフから練習開始日の打診がきた。

「日曜日にWD名古屋のシーズンが終わって、月曜日には『明日から練習、行ける?』と連絡があったのですが、チーム(WD名古屋)の予定もありましたし、さすがに休みもほしかったので......」

 中3日のオフを設けて、木曜日からトヨタ自動車に合流することに。インドアからビーチバレーへ、気持ちの切り替えはしっかりとできていた。

「WD名古屋の2025-26シーズンも最後は全力を出して、そのうえで敗れる結果に終わったので、すっきりしていたと言いますか。『よっしゃ、じゃあビーチバレー、がんばるか!!』と切り替えられました」

 もっと休みがほしい思いもあったと水町は認めつつ、それでもビーチバレーができることへの高揚感に支配された。

「インドアの時はインドアで精一杯でしたが、ビーチバレーが始まるという、うれしさはありました。今シーズンも楽しみだな、という」

【ピークの合わせ方はインドアで学んだ】

 しかし、いざシーズンが始まったとはいえ、スケジュールは多忙を極めた。

 5月14日に最初の練習を始めたのち、16日にはSVリーグのチャンピオンシップ・ファイナルのテレビ解説のため横浜アリーナ(神奈川県横浜市)へ、それが終われば今度は公認大会である「第34・35回WaveR杯」に参加するため大蔵海岸(兵庫県明石市)へ飛んだ。

 あらためて記すが、1週間前までインドアのシーズンを全身全霊で戦っていた身である。「いや、もう本当によくやったと思います。この時の1週間に比べたら、どんなことも平気ですよ」と本人は笑った。

 もちろん、疲労が完全に抜けきってはいない。7カ月に及び、毎週末に2試合を戦うタフな大同生命SVリーグは、少なからず体に"爪痕"を残していた。

 インドアでは周りの選手と比べてサイズで下回るだけに、常に100パーセントでのジャンプが必要とされる。ゆえに、ひざも悲鳴をあげる。今年のビーチバレーシーズン開幕当初、水町は体の状態をこう語っていた。

「痛みはあります。ですが、ビーチバレーはリハビリにも適していると言われていますし、ここからよくなればいいと考えています。

それに、試合へいかにピークを合わせるかは、インドアの2025-26シーズンで学んだことなんです。土日の試合が一番大事ですから、そこに向けてとにかくコンディションを整えていくことを。

 これまでだったら、ビーチバレーをする時も毎日が楽しすぎて、平日の練習から『よっしゃ! ビーチ、カモン!!』と思いっきりプレーしていました。その結果、土日の試合本番でびっくりするぐらいの痛みが襲うという。なので今は、平日の練習でもジャンプをある程度セーブするなど、痛みをコントロールしながら、土日にピークを持っていくようにしています」

 見方によっては、こうした痛みや疲労は、水町が身を投じているインドアとビーチバレーの二刀流の"弊害"と言えるかもしれない。ただ、それらもすべては、ほかならぬ本人が選んだことだ。

【僕はおそらく特殊だと自覚している】

「スケジュールしかり、それは僕がどちらの競技もトップレベルでやれているからこそ生じていることだと言えるでしょう。ですから、これから二刀流に挑戦する次の世代の子たちが出てきたならば、そこは指導する側がコントロールしてあげなければいけないと思います。

 幸い僕の場合は(インドアもビーチバレーも)最高の環境でやらせてもらえていますし、トレーナーもいます。それに、肉体的にも例外といいますか、僕はおそらく特殊だと自覚していますから(笑)。かといって、やはり靭帯断裂といった、シーズンを棒に振るほどの大きなケガだけは避けなければいけません。

 壊れない体があれば、それが理想ですけれど、さまざまなトレーニングにトライしていますし、ここから頑丈な体をつくっていけたらいいと思います。

まぁ、もちろん休みは大事ですけどね(笑)」

 前例のない、トップレベルでの二刀流。3シーズン目を迎えた今年、ペアを組むのは同じトヨタ自動車に今春から入社した黒澤孝太だった。

(つづく/文中敬称略)

◆水町泰杜・中編>>二刀流3年目の誓い「日本では敵なしのペアになりたい」


【profile】
水町泰杜(みずまち・たいと)
2001年9月7日生まれ、熊本県山鹿市出身。181cm。ポジションはアウトサイドヒッター。名門・鎮西高では1年時から春高バレー優勝に貢献。進学した早稲田大学でもインカレ連覇を経験し、4年時には主将としてチームを大学4冠に導いた。世代屈指の勝負強さと卓越したレシーブ力を武器に、2023年にウルフドッグス名古屋へ入団。現在はインドアだけでなくビーチバレーとの"二刀流"にも挑戦している。今後の日本バレー界を背負って立つ存在。

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