キャラクターグッズやぬいぐるみなどを扱ってきたクレーンゲームに異変が生じつつあります。日用品や飲食料品などを扱うプライズゲームが増え、施設も大型化しているのです。
クレーンゲームはレジャーの中でも成長著しい領域ですが、新たな客層を取り込んで小売業態化し、再成長する段階へと入ったのではないでしょうか。
景品は食品や日用品!クレーンゲームが「スーパー化」で売上10...の画像はこちら >>

大手各社が魅せる異次元の急成長

クレーンゲーム人気の恩恵を受けている典型的な会社が、ボウリング場運営のラウンドワンです。2026年4月~6月のアミューズメント事業の売上高は前年同期間比2割増の320億円でした。会社の計画対比でも1割近く増加。

アミューズメント事業の売上高は会社全体の6割を占める主力事業になりました。2019年3月期は5割程度であり、事業の存在感は日増しに高まる一方です。

イオン系列のゲームセンター運営会社であるイオンファンタジーは、2026年3月~5月のプライズ専門店売上高が19億円で、前年同期間比で約2倍に伸びました。イオンファンタジーは子供向けのキッズプライズが特に好調です。

日本アミューズメント産業協会によると、2024年度のクレーンゲーム売上高は3918億円で、前年比18%の増加でした。市場も旺盛な拡大を見せています。

クレーンゲームは、ぬいぐるみなどのキャラクターグッズ人気に、推し活消費が加わって成長に拍車がかかりました。運営側も限定グッズを景品にするなど、熱気を高める施策を重ねてきた経緯があります。

また、物価高でお金のかからない手軽なレジャーが求められており、予算を自ら調整できるために遊びと節約のバランスがとりやすいという点も人気の背景にあるようです。


クレーンゲームは時代の求めに応じたレジャーと言えるでしょう。しかし、足元ではクレーンゲームがレジャーの枠組みを超えようとしています。まさに小売業態化が進む局面です。

日常利用を狙う各社の戦略とは

ラウンドワンは、景品の獲得のしやすさを重視した「とれすぎ~のアイランド」をクレーンゲームエリア内に展開しています。2026年6月末時点で76店舗まで拡大しました。

「とれすぎ~のアイランド」は、食品や日用品など生活に身近な商品を景品の中心に据えているのが特徴です。ラウンドワンではこのほか、10円から遊べるクレーンゲームも展開するなど、子どもやファミリー層が気軽に遊べる売り場づくりを進めています。

このタイプは、他社も積極的に出店しています。ゲームセンター運営のGENDAは、クレーンゲーム専門店の「GiGOクレーンゲームオアシス」で、日用品や食品など毎日使える景品を充実させています。

埼玉県草加市に2026年8月7日にオープンした2店舗目は、特に日用品や食料品を拡充しました。出店した「草加セーモンプラザ」は、スーパーのロピアや100円ショップセリアなど日々の買い物に行く場所という位置づけであり、週末に多くの人が訪れる大型のショッピングモールとは趣が異なります。

日々の買い物のついでに立ち寄るという、GENDAの狙いが見えてきます。

GENDAは郊外のショッピングセンター内のゲームセンター売上向上施策として、クレーンゲーム専門店への業態転換を進めてきました。
転換した5店舗では、月商が前年同月比で2.2倍から10.3倍に伸びました。

クレーンゲームは、郊外における収益改善施策として有効に働いているのです。

イオンファンタジーも大型クレーンゲーム専門店「クレーン横丁 極」を展開中。2026年7月に5店舗目を出店しました。この店舗はイオンモール内には出店していません。

「クレーン横丁 極」は、飲料や食品、調味料、生活雑貨などを景品の中心に据えているのが特徴です。従来のモーリーファンタジーとは異なり、平日は親世代を主要な客層として想定しています。。

3社に共通しているのが、キャラクターグッズなど特定のIPを目的に来店する従来の顧客層からターゲットをずらしている点です。すでにファミリー層の獲得には力を入れていますが、裾野をもっと広くして日常的に買い物をする主婦・主夫層も視野に入れているように見えます。

イオンファンタジーは「クレーン横丁 極」の特徴を、自ら「まるで買い物体験」と表現していることからも、それを伺うことができます。

クレーンゲームは「貴重なキャラクターグッズを低単価で手に入れられるかも」という消費者意識を取り込みました。
次は「日用品や食料品をスーパーで買うよりも安く手にできるかも」という意識へ広げる狙いです。

低価格路線に潜むリスク

郊外のクレーンゲーム専門店は大型化し、小売業態化の波が広がっています。10円など低単価のゲームも数多く取り揃えている点が特徴。

この現象には既視感があります。1円パチンコです。かつてパチンコ店が集客に苦戦していた際、通常は4円のパチンコを1円でできるようにし、大ブームを起こしました。これによってパチンコ台の稼働率は上がりました。

ただ、低貸玉営業は稼働率を高めやすい一方、1人当たりの売上を確保しづらいという課題も抱えています。クレーンゲームでも低価格化が過度に進めば、集客力と収益性をどう両立するかが課題になるでしょう。

クレーンゲームの施設も同じ轍を踏みかねません。ただし、アミューズメント施設は細かい料金設定が可能で、10円固定ではありません。運営会社は収益悪化の兆候を見出せば、調整を図って利益が出る態勢を整えるでしょう。


クレーンゲームはレジャーの枠を越えて小売業態化しました。キャラクター人気や推し活消費を越えて、新たな消費形態へ移行する段階なのかもしれません。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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