最近、どうしても気になる鳥がいる。駐車場や公園などの地面を、尾を上下に振りながら忙しそうに歩き回っている、スズメよりも少し大きい白黒模様の鳥。
名前はハクセキレイというらしいが、この鳥が異常に大胆な行動をとるのだ。人間が激しく行き交う場所でもマイペースで歩き回るし、駐車場では、近づいても逃げないハクセキレイに車の方がちゅうちょしている光景も見る。

以前のコネタ『ハトはなぜすぐ逃げないのか』では、逃げない理由として、ハトが人間に飼いならされた歴史や、鳥に優しい人間の行動に慣れたことなどが紹介されていた。しかしハクセキレイはまったくの野鳥。理由は他にあるのだろうか? 専門家に聞いてみた。

神奈川県立生命の星・地球博物館の学芸員・加藤ゆきさん(鳥類生態学)によると、一番はやはり、「人間に慣れたこと」が原因という。さらに、「人間にいじめられた経験がないため、人間に対する警戒心が薄れている」という理由も、やはりハトと似ている。ハクセキレイがいじめられない理由としては、地面にいる小さな虫をエサにするため、スズメのように米を食べて人間に追い払われたりしないことがある。また、尾を振って歩く姿は愛嬌があり、どちらかというと人間から可愛がられることの方が多いのだろう。「恐い思いをしたと言えば、子どもに追いかけられたことぐらいでしょう」と加藤さん。人間が優しくしすぎた結果、逃げない野鳥になってしまったのだろうか……。

でも、車が近寄ってもなかなか飛ぼうとせず、のんびり歩いている行動は、あまりにも危険。
飛んだらすぐによけられるのに、なぜそうしないのだろう? 加藤さんによると、「鳥は一般的に飛ぶ方がエネルギーを使うので、歩いても逃げられると分かっていたら飛ばないんですよ」とのこと。なるほど、優しい人間の前では飛ぶ必要もないと判断したのだろう。鳥なりの省エネ発想、なかなかしたたかな行動じゃないか。冬は数少ない餌への執着心が勝り、いっそう警戒心がなくなっていることも影響しているらしいのだが、慣れ過ぎて車にひかれてしまうことのないよう、祈るばかりだ。

ハクセキレイは、冬期は主に関東や中部以西で過ごし、夏期は繁殖のため本州中部以北に渡るらしい(近年は繁殖地域が広がる傾向が見られ、中部以西でも繁殖が確認されている)。見かけたときは、車や自転車でひいてしまわないよう、くれぐれもご注意ください。
(ミドリ)

*ハクセキレイも載っている写真2の『ミニミニ野鳥図鑑』。野鳥23種を場所ごと、季節ごとに紹介している。日本野鳥の会が無料でプレゼント中
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