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ヤバい、江戸川乱歩読み放題の時代が来てしまった

2016年1月4日 09時50分

ライター情報:米光一成

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江戸川乱歩が自由に読み放題の時代がやってた。
乱歩作品の著作権保護期間が終了。パブリックドメインとなり、社会の共有財産になった。
ネット上の「青空文庫」には、さっそく江戸川乱歩「二銭銅貨」が共有された。
今後も乱歩作品がどんどん共有されていくだろう。
『日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集』(東京創元社) 江戸川乱歩作品を読むならまずこれから。

とはいえ、乱歩は多作で、作品数が多い。
どれから読もうか迷ってしまう。
書きに書いたので、正直なところ駄作も多い。
乱歩傑作群を読んだ後であれば、乱歩らしさや愛着から駄作も味わい深く読めるが、やはり最初は傑作から読んだほうが出会いとしてはスムーズだろう。
そこで、乱歩作品傑作ベスト3を選んでみた。

■『パノラマ島奇談』
乱歩の一部の作品はさすがにツッコまないと楽しめない。
小林少年が仏像に化けたり、ウサギに靴を履かせて足音で人がいるように偽装したり、鏡を使って人がいるように見せたりしちゃうのだ。
だが、馬鹿馬鹿さを遥か超えて想像力で読者をねじ伏せる大傑作が「パノラマ島綺譚」だ。
主人公は、死んだ大金持ちとそっくりな男。名は人見広介。
彼は、墓をあばき、その中に入り、のそのそと墓から出てきて、まだ生きていたのだと主張する。
大金持ちに成り代わってしまうのだ。
そうやって手にした莫大な財産で無人島に築きあげる妖しく荒唐無稽なユートピア。
醍醐味は、主人公が作った理想郷の描写だ。想像力の跳躍があまりにも渾身で、冷静に考えれば「そんなの全然ユートピアじゃないだろ!」ってツッコミまくりなのだが、読んでいるあいだは狂気のドライブ力で、めくるめく夢想の世界に浸ることができる。
着ぐるみの中で女性が手足ばたばたさせて進む白鳥に乗って湖を渡る。周囲では人魚コスプレ美女がダンス。ガラスの屈折によって竜宮城のように魚たちが舞う海底通路。
地上では、複数の女体によって作られた蓮台、人肉花びらに乗って移動。荒唐無稽もいいかげんにしろって感じなのに、乱歩の迫力ある文章で描かれると、ものすごい気がしてくるから不思議だ。
イマジネーション勝負だ、負けるもんかという気持ちになってきてトリップしてくる。読書ハイである。
そして、怖ろしくも美しく悲しいラストシーン、パノラマ島の顛末を読み終えて、はっと現実にもどったときに、自分の理想郷を夢想する恐ろしさを考えさせられるのだ。ぼくのパノラマ島は、どんなふうなのだろう、と。

丸尾末広が漫画化した『パノラマ島綺譚』もオススメ。

■『孤島の鬼』
我を忘れて読むという作品にはめったに出会えないが、『孤島の鬼』はそのうちのひとつだ。

ライター情報

米光一成

ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学客員教授。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「想像と言葉」等。

URL:Twitter:@yonemitsu

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