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マイケル・ジャクソン[レビュー]

世界中の誰もが歌えて、聴いた人が勇気付けられる、そんな歌を唄っていたい。

マイケル・ジャクソン

マイケル・ジャクソンが天に召されたのは、彼が次作のアルバムに込めるべきヴィジョンを形にしつつあった、まさにその時だった。この音楽をファンのみんなとシェアする日が楽しみだと言いながら、ひとつひとつの楽曲にコツコツと取り組んでいた。これらの楽曲を、伝説的アーティストの未発表作品、というくくりでお蔵入りさせてしまうことはたやすかった。しかし、マイケル・ジャクソン・エステート、そしてソニー・ミュージックの両者が、この素晴らしい音楽作品が金庫のなかで埃をかぶる事態を避けることこそが、マイケルのファンに対してはもちろん、マイケル自身に対して自分たちが負った責任である、と気づくまでにはそう長くはかからなかった。制作途中にあったこのアルバムは、きちんとした方法で完成、リリースされるべきである。そしてその手法は、品格ある、考え抜かれた方法で、マイケルのレガシーにふさわしい形で行わなければならないと、決定がなされた。

これらのトラックをマイケル自身が完成させていたとしたら、それはもちろん、唯一無二のものになったことは言うまでもない。しかし、それをするマイケルはもういなかった。だが、彼は、彼のクリエイティブなヴィジョンを指し示す、ユニークなロードマップを残してくれていた。それは、彼の直筆のメモという形であったり、制作に携わっていたスタッフや、これから一緒に仕事をしようという仲間たちに彼が語って聞かせた、詳細な内容説明という形で残されていた。
このおかげで、『MICHAEL』に関わったすべての人々が、彼の声を頼りに、彼に導かれながら、このアルバムを完成させることができたのである。そのクリエイティブな才能を、惜しみなく『MICHAEL』に提供したすべての人々にとって、これはたくさんのインスピレーションを与えてくれた、特別なひとりの人間に敬意を表するための、愛にあふれた仕事だった。

アルバム『MICHAEL』が完成するまで――

マイケル・ジャクソンの作品は、完成するまでに長い時間をかけて進化の過程を辿る。『MICHAEL』もその例外ではなかった。

2004年、当時の弁護士だったジョン・ブランカの手を借りて、マイケルはソニー・ミュージックと、同社の当時のCEOトミー・モトーラとの関係に終止符を打った。その後の数年間をかけて、マイケルは次のリリースとなるべき作品の青写真を練り、ニューアルバムの基礎となるトラックを次々とレコーディングしていた。それと平行して、ソニー・ミュージックの経営体制にも変化が起こり、2008年の『スリラー25周年記念盤』の発売を機に、現在の経営陣とマイケルは良好な関係を築き始めていた。2009年の2月には、ロサンゼルスにてソニー・ミュージックが開催した『スリラー』25周年記念のレセプションに、満面の笑みで特製の小型マルチ・プラチナ・ディスクを受け取るマイケルの姿があった。

さて、新しいアルバムの仕事に戻ったマイケルは、ゆっくりと楽曲を絞り込み、彼のヴィジョンが形となって現れてくるに従って、どんどんそれらを磨き上げて行った。ほぼすべてのレコーディングは、公の目を避けて、秘密裏に行われた。セキュリティー上の問題から、楽曲“Hold My Hand”がネットにリークされてしまった後のことについて、エイコンはインタビューで、彼もマイケルも、それ以降は作品を守ることにいっそう神経を使うようになり、仕事をする場所に関しては特に注意深くなったと話している。

エイコン:「あの事件以降、僕たちはみんな特別に注意深く仕事をするようになったんだ。特にマイケルはそうだった。彼はこう言ったものさ。『オーケー、みんないいかい。これからは家の外で仕事をすることにするんだ。ここのスタジオでは僕はもうなにもしないよ』ってね。」

だが、そんな事件が起きても、マイケルは、自分のアートをファンと共有するために、作品を書き、レコーディングしようという気持ちに満ちあふれていた。ネフ-U(ロン・フィームスター)は、マイケルが亡くなる直前の時期に答えたあるインタビューで、新作を書きそれを世界中の人々と共有したいと、新たな情熱に燃えるマイケルの姿についてこんなふうに答えている。

ネフ-U:「マイケルはこんなふうに言うんだ。『僕らは世界にギフトを届けなきゃいけないんだ。この曲たちを届けなきゃ…』って」

エイコン:「今回こそは、まさに機は熟したという感じだよ。ついに完成したこの曲は、素晴らしい、美しい、みんなに歌ってもらえる曲になったと思っている。ずっと大好きだったマイケルと一緒に仕事ができたことを、心から誇りに思っているよ」

また、この曲が正しい方法でリリースされ、正しい方法でみんなに聞いてもらえるようにする責任が自分にはあると感じていると、エイコンはインタビューで語っている。

エイコン:「この曲から一番大きなものを受け取るのは、マイケルの子供たちであるべきだと僕は考えてるんだ。きっとマイケルもそれを望んだと思うしね。彼の家族がゆっくりと落ち着いて、「お父さんはこんな大事なものを僕たちに残してくれたんだね」と言えるような、そういうものにしたいと思ったんだ」

彼はこう続ける。

「今のところ、関係者の誰からも、なんていうか、不平とかは聞こえてこないから、一応進むべき方向に進んでるんだなっていう気はしている。だから、マイケルの作品が、それにふさわしい形でディスプレイされているという確信を持つことができて、それはいい気持ちだね。最高にいい気持ちだよ。どんなことよりも嬉しいよ。この曲がやっと、きちんとした形で世界に紹介されるということがね」

2007年、マイケルは自分の家族と共に、バーゲン・カウンティーのカシオ邸に4 ヶ月間滞在した。カシオ邸には、簡単なホームタイプのスタジオがあり、そこで“Breaking News”、“Monster”、“Keep Your Head Up” のためのトラックは録音された。マイケルの元マネージャーのフランク・ディレオは、そこで仕事中のマイケルと数回電話で話したと証言しており、マイケルは「興奮して嬉しそうだったし、生まれつつある音楽に関しても大変満足していた」と語っている。

本アルバムでは、そのなかの作品の多くが、新しいインスピレーションや、マイケルが一緒に仕事をしたいと望んだ何人かの現代のアーティストたちとの共同作業に由来しているが、同時に“正しい「居場所」を見つけるまで、時を越えて待っていた楽曲”もある。『マイケル』に収められた楽曲のうちの2曲、“Much Too Soon” と “Behind the Mask” は、そんな曲だ。マイケルは、これらの曲のために、ふさわしい安住の地を長いあいだ探していた。そして今回、この楽曲を仕上げる作業に手を貸すと名乗りを挙げたのは、昨年、非常に高い評価を得たドキュメンタリー映画『マイケル・ジャクソンTHIS IS IT』の公開と同時に発表されたシングル“This Is It” のプロデューサーで、エステートの共同執行人の一人でもあるジョン・マクレーンだった。“Much Too Soon”は Thriller の時代に書かれたものだが、マイケルはこの曲を収めるにふさわしいアルバムを今まで見つけられないでいた。
“Behind the Mask” に関しても、そのもともとの歴史は80年代にさかのぼる。マイケルが、イエロー・マジック・オーケストラによって演奏されたこの曲を聴き、それに合わせて作詞してもいいだろうかと、坂本龍一に連絡を取っていたものだった。

最後に――

マイケルがこの世に置いて行ってしまった莫大な宝物、このほかの素晴らしいトラックたちの運命はどうなるのだろうか? ひとまず、エステート、そしてソニー・ミュージックの目の前にあったゴールは、マイケルが好んで取り入れた新しいクリエィティヴなサウンドとヴィンテージ・サウンドとを組み合わせるという手法に沿って、最良のトラックの組み合わせを考え、マイケルが作ろうとしていたこのアルバムを完成させることだった。今は、この後のプロジェクトについて発表するには早すぎるが、ひとつだけ確実に言えることがある。それは、マイケルがファンたちをどれほど大切にしていたかということを重く受け止め、今後の作品の選択、リリースも、マイケルのレガシーにふさわしい、最良の方法で行われるということである。

【New Release】
2010年12月15日発売(全世界同時リリース/USは14 日)
マイケル・ジャクソン『MICHAEL』
EICP1500/¥2,520(税込)
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歌詞・対訳付|解説:湯川れい子/西寺郷太

マイケル・ジャクソン

[2010/12/12]

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