【K-POPの歴史を作ったグループたちの復活と現在地】、今回は2026年6月、約8年ぶりに4人そろっての日本公演を行ったSHINeeについて! 韓国デビュー18周年、日本デビュー15周年を迎え、独自のスタイルを守りつつも歩みを止めない彼らの「アップデートされた魅力」と「日本との深い縁」について解説します。
■8年ぶりに4人がそろったベルーナドーム
編集担当・矢野(以下、矢野):今回はSHINeeを取り上げたいと思います。今年6月初旬の日本公演、僕は画面上で楽しんだのですが、ゆりこさんは現地で見たんですよね?
K-POPゆりこ(以下、ゆりこ):行ってきました、ベルーナドーム。ドームといいつつ半分屋外で、発表時に必ずザワっとすることでおなじみの会場ですが、暑くもなく寒くもなく、快適に見られました。それはさておき、ライブ自体は文句なしの夢のような2時間半でした! 何よりも4人が約8年ぶりにそろったステージだったということ。矢野:8年? そんなにたっていたんですか。結構SHINeeってコンスタントに日本でライブをしている印象がありました。
ゆりこ:私も同じく、「えっ、8年!?」と思いました。その間にもアリーナツアーや東京ドーム公演を見ていたのと、新曲もコンスタントにリリースされていたので「不在感」がなかったんです。常に私のそばにSHINee。
矢野:2018年以降、メンバーの兵役期間とオンユさんの体調不良に伴う休養期間がありましたよね。でもその間に発表された『Don’t Call Me』『Atlantis』『HARD』、どれもMV(ミュージックビデオ)にはオンユさんが出てくるじゃないですか。
■移籍先でのトラブル、活動休止……苦難を乗り越えた4人
矢野:そういえば、大変な時期を過ごしたのはオンユさんだけではなかったはずです。テミンさんは2024年に事務所を移籍しましたが、その後は……なかなかハードな展開に。
ゆりこ:現在韓国で事件として報道されている「チャ・ガウォン問題」に巻き込まれてしまったんですよね。必死に働いても、その利益が会社からろくに支払われず。韓国の報道によると、テミンさんは自分のお金からスタッフへのギャラを工面して支払っていたとか。「そんなことあり得る?」というレベルの災難です。
【チャ・ガウォン問題とは】
テミンさんの元所属事務所、Big Planet Made(BPM)エンターテインメントのチャ・ガウォン会長は2026年6月時点で、複数の民事・刑事上のトラブルおよび違法行為の疑いで、警察や政府機関からの本格的な追及を受けています。
チャ会長はテミンさんをはじめとする所属アーティストやスタッフに対し、正当に支払われるべき精算金および給料などを支払っていませんでした。
さらにソウル警察庁・金融犯罪捜査隊は、アーティストのIP(知的財産)ビジネスを巡り、契約履行が不可能と知りながら企業から242億ウォンの先払い金をだまし取ったとして、特定経済犯罪加重処罰法上の詐欺容疑でチャ会長の逮捕状を申請(※1)。さらに、人気俳優への不動産詐欺疑惑、百貨店での36億ウォン規模の高級品代金未払い疑惑など、不正な会社経営の実態が次々と報道されています(※2)。
※1:2026年6月18日、検察は補完捜査を理由に警察へ逮捕状を差し戻し
※2:チャ会長本人が否定している部分もあり、事実関係は調査中
<参考>
・Newsen「태민, SM→빅플래닛→독립 결심에 “강력 계약해지 요구, 사비로 스태프 월급 지원” 이슈」(2026年2月25日)
・YTN star「스태프 월급도 사비로?…태민, 소속사 왜 떠나나/ YTN star」(2026/02/25)
・SBS NEWS「경찰, 차가원 대표 구속영장 신청…300억 원 사기 혐의」(2026年6月15日)
・ヘラルド経済「차가원, 외상으로 36억 명품 쇼핑하고 먹튀? 이승기까지 불똥 튀었다는데…해명 들어보니」(2026年2月21日)
矢野:まだ捜査中ということですし、これから明らかになっていく部分もあるので先のことは分かりませんが、少しでも早く事態が収束することを願います。移籍先のGalaxy CorporationってG-DRAGONさんの所属事務所ですよね?
ゆりこ:そうです。エンタメテックの会社で、芸能事務所としての歴史は浅いのですが、ひとまずの避難先が見つかったという感じなのかもしれません。いずれにしても、テミンさんはスパッと次へ行けて何よりです。EXOのメンバーの問題にも直接関わっているので、早期解決を望みます。
矢野:そしてキーさんも、韓国の女性芸人さんに関わるトラブルに巻き込まれて、一時活動休止していたというニュースを見ました。なので、元気そうな姿で日本に来てくれて、本当にほっとしました。
ゆりこ:ミンホさんのニュースはマラソン関連が多くて、健全さが際立つ(笑)。どんなグループや組織にも絶対必要な存在です。
■ツアータイトルに込められた、ファンとの「約束」と未来への期待
矢野:今回のツアータイトルも話題になっていますよね。単なるライブ名ではなく、彼らの現在地を象徴する強いメッセージを感じます。報道によると、イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリの代表作である『神曲』をモチーフにした3部作コンサートになっているとか。
ゆりこ:「- The Trilogy I - 2026 SHINee WORLD VIII : [THE INVERT]」と長いタイトル。この「The Trilogy I(3部作の1つ目)」という数字が示すように、今回は「ここから始まる新たな3連作の第1章」であるということです。次はⅡ(2)のツアーが待っている、つまり未来の約束があるんですよね。また、「THE INVERT(反転・逆転)」というワードからは、これまでの激動やゴタゴタ、環境の変化を「ひっくり返し、新たな世界観を再構築する」という意思が感じられます。
矢野:まさにSHINeeの現在地と方向性を改めて示す、そんなツアーだったんですよね。
ゆりこ:古くからのファンとしては、今でもどこかにジョンヒョンさんの面影を探してしまうのは否めないけれど、今回は「これぞ完全体」と呼ぶにふさわしいステージでした。お気付きだったかもしれませんが、デビュー曲にして代表曲の『Replay』や『LUCIFER』『Ring Ding Dong』などの超定番曲をやらなかったんです。それでもなお、充実したセットリストだったと感じたのは、彼らのヒット曲があまりに多く、タイトル曲以外も名曲ぞろいだからなんですよね。
矢野:確かに、全体的にダークで重厚な世界観で統一されているように感じました。きっと明るめの定番曲は次回、またはその次のツアーのコンセプトにピッタリ合う場で披露されるでしょう。
ゆりこ:そしてやっぱり、さすがのオール日本語のMC。通訳さんなしでも笑いがとれる実力! 日本語曲をたくさん披露してくれたのも印象的でした。
■日本人メンバーがいなくとも地道なJ-POP活動をした過去と、日本語曲を歌う意味
矢野:彼らは130回以上も日本で公演をしてきたとゆりこさんから聞きましたが、今でも日本のファンと市場を大事にしているんですよね。
ゆりこ:間違いないと思います。私は今回のツアーのソウル公演を配信で見たのですが、本国のライブでも日本語曲を3曲も披露していました。しかも2013年に日本で出した『Breaking News』も! これは単なる日本から来たファンへのサービスではなく、彼らにとって日本で出した曲も大事な持ち歌であるという意識の表れだと受け止めています。ベルーナドーム公演では『LUCKY STAR』『3 2 1』を歌いながらトロッコに乗って、近くまで来てくれましたね。
矢野:ふと疑問に思ったのですが、K-POPグループってやはり戦略的に売っていく、ターゲットの国や地域を決めているのでしょうか?
ゆりこ:最近は結成の段階から狙いを定めていると思います。メンバーが多国籍のグループも増え、その構成を見ればおのずと、注力する商圏は見えますよね。世界2位の音楽市場と言われている日本は、安定した「ファンクラブ・ライブ」経済圏。
矢野:日本人メンバーが1人もいないのに……ファンとしてはありがたい話です。
ゆりこ:かつてはツアーで北関東や中国地方、三重、新潟、長野県まで細かく回っていましたから。韓国ではすでに大型会場を埋める人気グループだったにもかかわらず、です。先輩の東方神起から受け継いだものでもあり、そして最近はRIIZEも2024年に地方も含めた広域ツアーを実施しています。
矢野:SMエンターテインメントの伝統なのかもしれません。一過性のブームで終わらせないための。いずれにしても、SHINeeが2026年も日本のファンを大事に思ってくれているのが伝わる公演でしたね。
■韓国デビュー18周年の新境地、新作『Atmos』が示す、唯一無二のスタイルと進化
ゆりこ:最後に、ベルーナドーム公演でも披露された新曲『Atmos』についてお話ししましょう。最初の印象は、すっごく「SHINeeっぽい!」と思いました。前の『HARD』が実験的アプローチといいますか、“新しい形”を提示した作品だとすると、今回はSHINeeらしさへの回帰。
矢野:冒頭のリズミカルな音から一気に世界観に引き込まれ、気付いたらSHINeeらしさ、SHINeeの雰囲気のとりこに……。幻想的で美しく、同時に涼やかで爽やかさも感じました。個人的には2番のサビでミンホさんのセクシーな声にハマっています。そして、MV内で「0525」と彫られたキーホルダーが出てくるのですが、SHINeeの韓国デビュー日は2008年「5月25日」なんですね。なんと僕の誕生日とまったく一緒でとても驚きましたし、こうしてSHINeeのファンになったことに不思議なご縁を感じます。
ゆりこ:やっぱり、SHINeeという存在が「おしゃれ」なんですよね。異論は認めますが、K-POPシーンに「おしゃれ」「スタイリッシュ」という概念を持ち込んだ元祖はSHINeeだと思っています。
矢野:何と言ってもデビュー曲『Replay』の衝撃たるや。10代のアイドルのデビュー曲としてはおしゃれ過ぎて、“玄人感”が満載。最初からなかなか攻めていましたもんね。ゆりこ:一方で、一部のファンからは今回のカムバックについて、「プロモーションや稼働が少ない」という指摘もチラホラ。今回は韓国の音楽番組も『SBS人気歌謡』の1番組しか出演しませんでした。ファンからすると「もっと応援させて!」というところでしょう。しかし、メンバーの事務所が異なることや、おのおのが抱えるトラブルがようやく落ち着いたばかりだということ、さらにベテラングループとして末永い活動のための最適化を考えると、そこは致し方ないのかなとも感じます。個人的には4人そろって元気にライブを見せてくれて、新曲を出してくれるだけで御の字! という境地です。
矢野:いろいろな危機を乗り越えて、誰にもまねできない音楽を出し続けてくれることが、まさに奇跡と言いましょうか。「The Trilogy Ⅱ、Ⅲ」もあると分かっているので、待てますよね……と、締めくくりたかったのですが、またここで別の疑問が湧いてしまいました。よくK-POPファンの間では「音楽番組で1位を獲ることが大事」「チャート1位を獲らせよう」という声が上がりますよね。やっぱり今でも「1位」には大きな意味があるのでしょうか?
ゆりこ:なるほど、「K-POP業界における1位の価値」についてですね。私も最近気になるニュースを見たので、そのネタも合わせて別の機会に解説します!
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:音楽・エンタメライター。雑誌編集者を経た後、渡韓し1年半のソウル生活を送る。帰国後は、K-POPや韓国カルチャーについて書いたりしゃべったりする「韓国エンタメウオッチャー」として、雑誌やWebメディアなどでの執筆活動や、韓国エンタメ情報ラジオ番組『ぴあ presents K-Monday Spotlight』(TOKYO FM)でパーソナリティーを務めるなど幅広く活躍中。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやビジネス記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)&MOA(TOMORROW X TOGETHERファン)。
この記事の執筆者: K-POP ゆりこ
音楽・エンタメライター。雑誌編集者を経た後、渡韓し1年半のソウル生活を送る。帰国後は、K-POPや韓国カルチャーについて書いたりしゃべったりする「韓国エンタメウオッチャー」として、雑誌やWebメディアなどでの執筆活動や、韓国エンタメ情報ラジオ番組『ぴあ presents K-Monday Spotlight』(TOKYO FM)でパーソナリティーを務めるなど幅広く活躍中。
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