タイガー魔法瓶はこのほど新製品の土鍋ご泡火炊き JRT-A100を発売した。同製品は、同社が20年にわたって培ってきた土鍋炊飯器の技術をさらに進化させた最上位モデルだ。


●タイガーの土鍋は3度の焼成で3カ月かけて完成
 タイガー魔法瓶が土鍋炊飯器の初号機を発売したのは2006年。2012年には土鍋×圧力モデルを発売し、2023年には創業100周年の記念モデルも発売している。
 土鍋は、時間も手間もかかる工程を経てつくられる。一般的に手作りの陶器は、一品ごとに形状や重さが微妙に異なる。しかし、炊飯器の内鍋として量産するには、サイズや重量を均一にする必要がある。
 そのため製造工程においては、世界中から十数種類の土を厳選し、その日の温度や湿度に合わせて配合を変えて素材となる土づくりからスタートする。
 土ができると機械で土鍋の形に成形し、1200度以上の温度で一度目の焼成を行って乾燥させる。次に釉薬を塗布して二度目の焼成後、乾燥。さらにIHの熱を土鍋全体に伝えるため発熱体を土鍋に転写し、三度目の焼成を経て、ようやく完成。一つの土鍋ができあがるまで、実に約3カ月もの時間がかかるのだ。
 これらの手間をかけた土鍋と同社の技術を組み合わせたのが、土鍋ご泡火炊きである。土鍋ご泡火炊きの特徴は三つあると同社では解説する。

 一つ目は圧倒的大火力。金属鍋よりもはるかに高い約300度で米を炊き上げる。高温で炊くことにより、短時間で米のアルファ化を促進し、食感を保ちながら米の甘みと粘りを引き出すという。
 二つ目は金属鍋の約4倍の高い遠赤効果により、米の芯まで熱を伝えて旨味を引き出す。三つ目は米を傷つけにくい優しい泡立ちと、しっかり対流を生む力強い泡立ちだ。泡が米を包み、傷つけずに炊き上げるので粒立ちのある食感になる。
これらの特徴により、土鍋ご泡火炊きで炊いたご飯は甘みと粒感を感じられるという。この炊きたてのご飯のおいしさこそが、同社が土鍋炊飯器を20年間つくり続けてきた理由であり、技術を進化させてきた理由でもあるのだ。
●土鍋圧力IHのA100は85種類の銘柄炊き分けに対応
 土鍋ご泡火炊きの最上位モデルで、土鍋炊飯器20周年記念モデルの新製品がJRT-A100(以下、A100)である。加熱方式は土鍋圧力IHで、本体サイズは幅28.4cm×奥行36.7cm×高さ22.4cm。最大炊飯量は5.5合だ。
 土鍋は割れやすいというイメージを持つ人がいるかもしれないが、同社では土鍋の割れと内側のコーティング剥がれに対して5年保証を付けている。
この長期にわたる保証は、土鍋の製造における同社の自信のほどを表しているといえるだろう。
 炊飯メニューは白米、玄米、雑穀、麦ごはん、エコ炊き、早炊き、銘柄炊きなど全20種類。銘柄炊きでは79銘柄に対応し、6地域による炊き分けも加えることで、計85通りの炊き分けが可能だ。
 A100のカラーは、上品で落ち着いた黒色の墨黒(すみくろ)と月光のような薄い青みを含んだ白色の月白(げっぱく)の2色である。
 A100が20周年記念モデルとして目指したのは、料亭でコースの締めくくりを飾る土鍋ご飯の甘みと食感。手間暇をかけて炊き上げた料亭の土鍋ご飯には、4つの「炊き技」ポイントがあるという。
 一つ目は吸水から火入れのタイミングで、二つ目は高火力で一気に炊き上げる昇温工程。三つ目は吹きこぼれるくらいの高火力による炊き上げで、四つ目は蒸らし工程だ。
●料亭の土鍋ご飯の味と食感を技術の力で再現
 料亭で提供される土鍋ご飯は、職人が培ってきた経験と知識を生かして炊き上げられる。その属人的な炊き技を技術で再現したのが、A100である。
 一つ目の火入れのタイミングでは、土鍋の底面に「センサースポット」を導入。本体底面のセンサーが土鍋内部の温度をより検知しやすくするため、高度の加工技術で土鍋中央の底面をあえて薄くし、センサーの検知精度を高めた。
熱を検知する精度が高まったことで細かい温度管理が可能となり、職人の火入れのタイミングを再現するという。
 二つ目の昇温工程は、土鍋の形状を進化させて対応。昇温工程で重要なのは温度上昇による熱対流で、土鍋全体にしっかり熱を伝えるとともに、米を多方向に撹拌させることである。A100では土鍋の厚みが均一ではなく、場所によって厚みが異なる「旨み対流形状」を採用し、理想的な熱対流を発生させている。
 さらに土鍋底面に配置された波紋形状も新たにピッチ間隔を最適化し、土鍋内部で激しい対流を発生させる。
 三つ目の高火力による炊き上げでは、最高温度約300度の「300°C WレイヤーIH」を採用。2層構造のIHコイルによる大火力で、米の一粒ひと粒にしっかりと熱を伝える。
 高火力による吹きこぼれは故障の原因となるため、従来は火力を弱めて吹きこぼれを防止していた。A100では新たに内部の調圧構造を変更した「おねばポケット」を搭載し、火力の維持と吹きこぼれ防止を両立させ、理想の炊き上げを実現している。
 四つ目の蒸らし工程は、「とろ火IH制御」で対応。これは300°C WレイヤーIHを“間引き制御”することで、従来のIH制御では困難だった弱火での連続加熱を実現したもの。炊き上げ後に蒸し炊きを行い、米の甘みを引き出すという。

 さらにこのとろ火IH制御は、保温時の温度を上げすぎず、乾燥も最小限に抑えた「匠おひつ保温」として炊飯後の保温にも採用。温度と湿度を制御することで、保温時の黄ばみやベタつき、においを抑えて、ふっくらとおいしく保温する。
●デザイン性と操作性や使い勝手にもこだわる
 A100は炊飯機能だけでなく、デザイン性や操作性にもこだわって開発された。本体は上品なカラーと高級感のある質感で、キッチンスペースのインテリアともなじむデザインだ。
 操作パネルは、IPSディスプレーを採用したスムーズタッチディスプレー。IPSディスプレーは斜めから見ても色が変わりにくく、視認性に優れるという特徴がある。この視認性の良さとタッチレスポンスによって、メニューを選ぶ際にはスマートフォンのように直感的で軽快な操作が可能だ。
 上ぶたの正面にはエモーショナルランプが配置され、予約時は緑、炊飯時は赤、保温時はオレンジと3色に点灯し、遠くからでも作動状態がひと目で分かる。
 また、メンテナンス性にも配慮されており、取り外して洗浄するのは内ぶたと土鍋の2点のみ。内ぶたはマグネット式で簡単に着脱でき、食器洗い乾燥機での洗浄にも対応している。土鍋が収まる本体のフレーム部分はステンレスで、掃除はサッと拭くだけだ。
 細部にいたるまでこだわって開発されたA100は、発売から20年を迎えた土鍋炊飯器の最高到達点だと同社ではいう。
とはいえ、やはり炊飯器は実際に炊いた米を食べてみないと、そのおいしさが伝わらない。
 そこで、同社はこの秋から二つのプロジェクトをスタートさせる予定だ。一つは東京・大阪を中心に、飲食店とコラボして土鍋炊飯器で炊いたご飯を提供する施策。もう一つは全国規模でポップアップストアによる土鍋ご飯の試食イベントで、これらを通して土鍋ご飯のおいしさを伝えていくという。
 また、A100の購入者を対象に、1万5000円相当のVISAギフトカードをプレゼントする早期購入キャンペーンを実施している。購入期間は7月21日までで、応募期間は7月28日まで。キャンペーンの詳細は同社のキャンペーンページで確認しよう。
●高価格帯ゾーンの出荷台数構成比は増加基調で推移
 国内のジャー炊飯器市場に目を転じると、日本電機工業会の出荷統計で2025年度の出荷台数は前年比約101%と前年を上回ったものの、2021年度以降の大きな流れでは減少傾向にある。一方、出荷金額は逆に増加傾向を示している。
 実際に出荷金額を出荷台数で割った平均出荷単価は、2020年度から拡大基調にあり、2025年度の平均出荷単価は2万4453円で過去最高を記録した。この平均出荷単価を押し上げている要因が、5万円以上の高単価製品の伸長。2020年度の同価格帯の出荷台数構成比は27%だったが、2025年度は37%と5年間で10ポイントもアップしているのだ。

 この高単価製品の伸長は、タイガー魔法瓶が展開する高価格帯のご泡火炊きシリーズの販売実績でも裏付けられており、2025年度の同シリーズの販売金額は前年比132%と伸長。同年度の販売金額ベースによるシェアは業界2位の29.1%で、2026年1~4月の累計販売台数シェアでは1位になったという。
 そこで、同社の岡本正範ソリューション本部長に高価格帯製品の今後の展望などを聞いた。
――炊飯器の高価格帯需要について、中長期的にはどうなるとみていますか?
岡本氏(以下、敬称略) 高価格帯はこれからも伸びていくと考えています。おいしいご飯を食べたいと思ったら、以前は高いお米を買うことが正解でした。しかし、最近は炊飯器が注目されるようになってきました。
 令和の米騒動を通して、炊飯器によってご飯のおいしさが変わることが認識されてきました。おいしいごはんを食べたいから、ちょっといい炊飯器を選ぶという人が増えているのではないかと思います。
――確かに高価格帯の炊飯器は、おいしさにこだわって開発されていますね。
岡本 はい。逆に高いお米を買っているのであれば、よりおいしいご飯を食べたくなります。そのような考えは確実に浸透してきていますので、高価格帯ゾーンの需要は今後も増えていくとみています。
――各社とも切磋琢磨して製品開発に取り組んでいますが、今の炊飯器市場の競争ポイントはどこにあると考えていますか?
岡本 機能や性能、操作性やお手入れ、デザインなど、競争ポイントはさまざまですが、大前提として、いくら比較しても実際に炊いたご飯の味は分かりません。そこで購入製品の候補に挙がるためには、ブランドとリピートが重要と考えます。
 購入を検討した際に候補になりうるブランドとしての認知度、そして使ってみて良かったという経験ですね。そのためには本当においしいご飯が炊けるという、お客様を裏切らないものづくりをしていくことに尽きると思います。
――確かに試食の機会がない限り、ご飯の味は分かりません。では、そこでタイガー魔法瓶の強みはどのようなところとお考えですか?
岡本 炊いたご飯の味は製品のハードの部分とも関連しますが、炊飯工程のプログラムと関連するソフトの部分が当社の強みと考えています。例えば、製品には数多くのコースメニューを搭載していますが、いかにエラーをなくすかが大事です。
 当社にはソフトに携わる数多くのスタッフがいて、組織としてしっかり機能しています。プログラムをつくってもエラーがないように検証するには地道な作業が必要で、年間約5トンのお米を炊いて検証作業を行っています。
――検証のために5トンですか?
岡本 そうです。非常に地味な作業ですが、お客様を裏切らないために行っています。このような作業も含めて、ご飯の味を左右するプログラミングやソフトの面には自信を持っています。
 タイガー魔法瓶では2026年の事業戦略に次の三つを掲げている。一つは、高付加価値製品の創出と国内トップシェアの奪取などによる炊飯器事業の収益拡大。二つ目は未来に向けてこだわりを持ったものづくりの推進で、三つ目はおいしさの追求と消費者ニーズに合致した製品施策と情報発信による炊飯器メーカーとしての使命の遂行である。
 同社のこだわりが結集したA100を、ホームページや家電量販店などの店頭展示でチェックしてみよう。

【注目の記事】
タイガー魔法瓶、職人の技で究極の理想だけを追い求めてつくった「炊飯器」
約4割の家庭に放置家電あり 「粗大ゴミ回収隊」調査
パナソニック、炊飯器マスターが教える、意外と知られていないおいしいごはんの炊き方
編集部おすすめ