「将来が不安だから、今はなるべく使わず、貯蓄や投資に回したい」——。そう考えていませんか? ところが、未来に備えることばかりを優先すると、「今」を犠牲にし続け、かえって不安が増えてしまうこともあります。


ファイナンシャル・ウェルビーイング研究者の櫻井かすみさんによると、大切なのは「消費」「投資」「人のため」のバランス。不安に追われて動かす「不安通貨」ではなく、今の充実、未来への安心、人とのつながりを満たすお金の使い方が、幸福度を高めるといいます。

この記事では、櫻井さんの著書『不安通貨 貯金や投資で消えない「お金の不安」を最新科学で解決』(Gakken)より一部抜粋し、幸福度が伸びやすい「消費5:投資4:人のため1」の黄金比を紹介します。

※本書では、生活費や最低限の固定費を除く「自分で自由に使えるお金」を、青(経験)、緑(時間)、赤(贈り物)、黄(成長)、紫(未来)の5つの「幸せ通貨」に分類しています。

■幸福度が最も伸びる「消費5:投資4:人のため1」の黄金比
まず大切なことからお伝えします。この「5対4対1」は、どこかの論文にそのまま書いてある数式や方程式ではありません。

これは、幸福学、心理学、行動経済学の複数の実証研究を重ね合わせたときに、最も幸福度が伸びやすく、かつ不安が生まれにくい支出構造として導かれた実践モデルです。

言い換えるなら、科学の共通点を日常の生活に落とし込んだ比率です。

■「消費5」は今を生きる満足を確保する
まず「消費5」。これは今を生きる満足を確保する比率です。

消費とは、日常を快適にし、人生を味わうための支出です。経験、旅行、楽しみ、生活の質を高めるもの。
5色で言えば、青(経験)がここに当たります。

幸福学では、経験への支出や時間を買う支出が、長期的な幸福度を高めることが一貫して示されています。消費が不足すると、人は生きている実感を失いやすくなるのです。

逆に消費が過剰になると、慣れや浪費によって満足感が下がります。今を満たすための消費も5割程度が、幸福感を持続させやすい水準です。

■「投資4」は未来の自分に安心を積み立てる
次に「投資4」。これは未来の自分に安心を積み立てる比率です。

ここで言う投資とは、金融商品の利回りを追いかけることだけではありません。貯蓄、投資、保険といった金融関係だけでなく、学び、スキル、健康——将来の選択肢を増やすために使う支出のすべてが含まれます。5色で言えば、黄(成長)、緑(時間)、紫(未来)がここに対応します。

幸福学では、経済的な安心感は幸福度を上げ続けるものではない一方で、不足すると確実に幸福度を下げるということが繰り返し示されています。投資がゼロだと、不安は消えない。


しかし投資が過剰になると、将来のために今を犠牲にし続ける状態になり、不安通貨が増殖してしまいます。このバランス点として、全体の4割程度が安定しやすいと考えられます。

■「人のため1」は幸福を最大化させるブースター
最後は「人のため1」。これが幸福を最大化させるブースターです。

人のために使うお金、つまり社会的支出は、主観的幸福度を向上させる要素として科学的に確認されています。5色で言えば、赤(贈り物)がここに対応。

エリザベス・ダンらによるサイエンス誌の研究では、同じ金額でも、自分のためより他人のために使ったほうが一貫して幸福度が高まることが示されています。重要なのは金額の大小ではなく、収入水準にも関係がないということです。

ただし人のための支出が多すぎると、自己犠牲や疲弊につながりかねません。全体の1~2割程度が、自分も相手も満たしやすい現実的な比率です。

ここで言う「人のため」とは、寄付だけを指すわけではありません。後輩にご飯をおごる、家族のために何かを準備する、友人へのちょっとした贈り物。
日常の中で「誰かのために」使うお金のすべてが含まれます。

■「5:4:1」は必ず守るルールではない
この「5:4:1」は、単なるお金の配分ではありません。未来への安心、今の充実、人とのつながり、この3つを同時に満たす設計です。

重要な注意点として、この比率を必ず守らなければならないというルールはありません。

あくまでも、幸せ通貨が循環しやすい構造を示した目安。人生や価値観によって、「6:3:1」になる時期もあれば、「3:5:2」になる時期もあります。

大切なのは、どれか1つに偏りすぎていないかどうかを自分で確認し、トライアンドエラーしながら自分で配分を決めていくことです。
この書籍の執筆者:櫻井かすみ プロフィール
ファイナンシャル・ウェルビーイング研究者、ママ金融教育家、ファイナンシャルプランナー。株式会社トウシナビ代表。投資詐欺や貯金ゼロなどを経験した後、資産形成を実践。現在は大学院で「お金」とウェルビーイングについて研究している。著書に『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本』『母が子に伝えたい大切なお金と社会の話』(いずれもGakken)などがある。

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