定年まで働き続けたのだから「退職後くらいは少しゆっくりしたい。その後で次の仕事を考えればいい」と思っている人もいるのではないでしょうか。


しかし、1万人以上の体験談を聞いてきた大塚寿氏によると、定年後の予定を決めないまま空白期間をつくると、次の一歩を踏み出すエネルギーを失い、仕事探しが億劫になるリスクがあるといいます。シニアの再就職が狭き門であることを考えれば、「休んでから考える」ことには思わぬ落とし穴があるのです。

では、定年後に休む期間も含め、これからの働き方をどう計画すればよいのでしょうか。大塚さんの著書『定年5年前からの「やってはいけない」』(PHP研究所)から一部抜粋し、無計画な空白期間をつくらないための準備と、後悔しない「稼ぎ」と「生きがい」のバランス設定について解説します。

■無計画な空白期間がセカンドキャリアを妨げる
定年後の仕事や「やること」が決まっていて、定年直後の一定期間を「ゆっくり」過ごすのはいいとして、「ちょっとゆっくりしてから考える」と空白の時間をつくると、いい結果を生まないでしょう。

そもそもシニア世代を積極的に採用しようという企業は非常にレアで、Indeedの調査では「60歳以上歓迎」の求人の割合は、コロナ禍初期の2020年7月をピークに大きく減少し、2022年からは求職数全体の0.1%前後で推移しているそうです。

マンションの管理人、警備員、清掃員、交通誘導員、ドライバーなどはいくらでも求人はありそうですし、少子化の直撃を受け、若い人が採用できずシニアに頼らざるをえない業界も少なくないので、この0.1%前後という数字を鵜呑みにはできません。

しかし、現役時代にやってきたことの延長で、就職エージェントやハローワーク経由で仕事を探すとなると、かなりの狭き門であるのは事実です。

■定年後のことは「定年前の5年間」で考え尽くす
そうした環境で、いったんゆっくりしてしまうと、次の一歩を踏み出すエネルギーを失ったり、仕事探しが億劫になったり、無気力になりがちなのが定年直後の落とし穴です。

“ノープラン、ノーライフ”ではありませんが、無計画で定年退職するのはよい結果をもたらしません。

「定年後のこと」は定年前の5年間で考え尽くし、「ゆっくりする」期間もあらかじめ計画に入れておくことが落とし穴の回避策です。

ここでは、定年後の人生設計について、ざっくりした方法や考え方をお話しします。


■「稼ぎ」と「生きがい」の比率を決めてみる
まず、定年後の人生設計の3要素「方向・方法・エネルギー」の「方向」の核心に触れておきましょう。

おすすめしたいのが、「ライスワーク対ライフワーク比率」を仮決定することです。

どんな働き方をして、どのくらいの金額を稼ぎたいかには個人差があります。置かれた環境、事情や価値観など十人十色です。

ハッピーなセカンドライフを過ごすには、他人に左右されず、自分の目指す方向をはっきりと定める必要があります。

▼しっかり手堅く稼ぐたとえば、子どもの巣立ちと定年のタイミングが合わないなら、フルタイムでガッツリ稼ぎたいでしょうし、50代のピーク時の年収で60代を全うできれば最高というのが本音でしょう。

▼趣味や生きがいを大切にする逆に、預貯金や資産もあり、生活のためのライスワークではなく、誰かの役に立ったり社会とのつながりを維持するためのライフワーク系の仕事に重きを置きたい人もいるでしょう。

また、1カ月のまとまった期間でヒマラヤにトレッキングに行きたいとか、バイクのツーリングやキャンピングカーで全国を旅したいという人は、フルタイムではなく融通のきくバイトを選択するのもアリです。

ガッツリ稼ぎたいのか、やりがいや生きがいに軸足を移すのか。セカンドライフをどのように設計するのかが重要です。

■「100対0」ではなく柔軟に考える
ポイントは、「100対0」といった二分割思考にせずに、「80対20」や「60対40」とウエイトを柔軟に考えることです。

数年おきに修正することを前提にしてもかまいません。
最初はざっくりと、直感で決めてもよいので、「ライスワーク対ライフワーク比率」の仮決定をしてみましょう。

「趣味と実益を兼ねる」ように、ライフワークでしていたことが、ライスワーク以上に大きな稼ぎを生み出す、うらやましいケースもあるかもしれません。

「<ポイント>
人生設計の3要素「方向・方法・エネルギー」の「方向」は、「ライスワーク対ライフワーク比率」の仮決定から導きだそう。」

著者:大塚寿(作家・エマメイコーポレーション代表取締役)
1962年、群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。現在は、オーダーメイド型企業研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役、オンライン研修「営業サプリ」を運営する株式会社サプリCKO。1万人を超えるビジネスパーソンへのインタビューを行い、著書多数。
編集部おすすめ