買い物はいつもの店、移動は慣れた道、話す相手も気心の知れた人ばかり——。安心できる一方、決まったルーティンの中で、新しい経験から遠ざかってはいませんか?

精神科医の和田秀樹さんによると、自分が想定できる範囲でしか生きていないと、刺激を失った脳はどんどん衰えてしまうといいます。


では、日常にどのような変化を取り入れればよいのでしょうか。和田さんの著書『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)から一部抜粋し、新しい経験や想定外の出来事を、脳の若返りにつなげる方法を紹介します。

■前頭葉は「楽をさせる」と衰える
なじみの店、なじみの道、なじみの商品……そんな存在は心強く、また、気持ちも安定させてくれるものです。

ただ、頭をよくしたいと思ったなら、ぜひ、慣れ親しんだ世界を飛び出して、新しい経験を日々に取り入れるという姿勢を大事にしてください。

親しみを感じる環境はほっとできるものですし、それはそれで大事にしていただければと思いますが、前頭葉に楽をさせることで、それが衰えてしまいます。

私たち人間は、意識しようとしていまいと、楽なほうに流されてしまうもの。

けれど、だからといって気心知れた人とばかり接したり、安心できる環境にばかり身を置いたりしていると、柔軟性や応用力は磨かれず、クリエイティブな力も伸びていきません。

自分が想定できる範囲でしか生きていなければ、新たな刺激を受けられなくなった脳は、どんどん衰えていってしまうのです。

■未知の何かに触れて脳にエネルギーをチャージ
たとえば、いつもと違う道を通ってみる、これまでとは違う音楽や本のジャンルに触れてみる、毛嫌いしていないで、若者が親しんでいる文化にも触れてみる。そういったことでも十分です。

前頭葉は新しいものに反応しますから、未知の何かに触れるたびに、どんどん脳にエネルギーをチャージすることができるでしょう。

新しいことへの挑戦は、時に不安も伴うと思います。


でも、ちょっと勇気を出してその一歩を踏み出してみることで、脳の若返りのチャンスを得るとともに、今まで知らなかった自分にも出会うことができるのです。

■想定外のことが起きるたび、脳は若返っていく
人間は長い進化の過程において、「なかったことをやろうとすること」によって前頭葉を発達させてきました。

体の大きさや頑丈さといったものに関しては他の生物に劣っている人間が、自然界で生き延びるためには、知恵を働かせ、どんどんやり方を変えていく必要があったのでしょう。

そういった性質を持つ前頭葉は、「想定外のこと」「予測不可能なこと」が起きたときに、その真価を発揮します。

つまり、予期していなかったハプニングなどに対応するとき、人の前頭葉は刺激され、鍛えられるということです。

ですから、変化やハプニングを恐れず、毎日を冒険するつもりで過ごしてみてください。

行ったことのない場所に行ってみたり、読んだことのないジャンルの本にトライしてみたり……思い切って新規開拓してみましょう。

■固定化されたルーティンから飛び出す
ずっと同じところに留まっているのは、いわば「精神的な引きこもり」です。ですから日常のなかに、意図的に想定外のことを増やしてみてください。

「自分の予想がつかないこと」は刺激的で心をドキドキさせてくれるものですが、同じように脳も刺激を受けるのです。

変化することは面倒なものですし、安全な場所に留まっていたいと思うのは当たり前です。

でも安穏に生きたいと願い、固定化されたルーティンのなかに閉じこもっているばかりでは、脳の若返りのチャンスは得にくくなってしまいます。


そして望まないトラブルが起きたときも、「脳が活性化されるチャンスを得たのだ」と前向きにとらえてください。

あなたが予想外の出来事に懸命に対処しようとしているそのとき、脳は大喜びしているはずです。
著者:和田秀樹(精神科医)
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。著書に『80歳の壁』(幻冬舎新書)など多数。
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