■「100万円でいくら増えるの?」が一番気になる
個人向け国債という言葉を聞いても、なかなか身近に感じられないかもしれません。実際、多くの人が気になるのは「安全性」よりも、「結局いくら増えるのか」という点ではないでしょうか。


例えば100万円を運用するとします。実際の利息は半年ごとに支払われますが、仮に適用金利が年0.5%なら、1年間で受け取る利息は税引前で5000円です。年1%になれば1万円になります。

100万円ではそれほど大きな金額に見えないかもしれませんが、300万円なら3万円、500万円なら5万円です。退職金やまとまった預金を運用する場合には、金利差の影響も無視できません。

もちろん、将来の金利がどうなるかを正確に予想することはできません。ただ、金利がほとんど付かなかった時代と比べると、「利息を受け取る」という感覚を実感しやすい環境になりつつあります。

■個人向け国債は国にお金を貸す仕組み
個人向け国債は、日本国が発行する債券の1つです。私たちは国にお金を貸し、その見返りとして利息を受け取ります。企業にお金を貸す社債や、銀行にお金を預ける定期預金とは少し仕組みが異なります。

個人向け国債にはいくつか種類がありますが、現在もっとも利用されているのが「変動10年」です。変動10年は名前の通り満期まで10年ありますが、金利は半年ごとに見直されます。
そのため、今後さらに利上げが進んだ場合には受け取る利息が増える可能性があります。

最近になって個人向け国債が話題になることが増えたのも、この仕組みがあるためです。

■定期預金と何が違うのか
個人向け国債を考える際、多くの人が比較するのが定期預金です。定期預金は銀行にお金を預ける商品です。一方、個人向け国債は国にお金を貸す商品です。

また、金利の動き方にも違いがあります。例えば1年定期預金で年0.5%の金利が付いた場合、その1年間は原則として同じ金利が適用されます。

一方、変動10年は半年ごとに金利が見直されます。将来金利が上昇すれば受取利息も増えますし、反対に金利が低下すれば利息も減少します。

ただし、変動10年には最低金利0.05%が設定されています。金利が下がる局面でも一定の利息は受け取れる仕組みです。

■途中でお金が必要になったら?
「あれ?10年間、お金を動かせないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
確かに満期は10年ですが、個人向け国債は発行から1年経過すれば中途換金が可能です。ただし換金時には直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を乗じた金額が差し引かれます。

もちろん、すぐに使う予定のお金を預ける商品ではありません。住宅購入資金や数年以内に使う予定の資金よりは、老後資金や当面使う予定のない余裕資金との相性がよいでしょう。

一方で、「預金だけでは少し物足りない。でも株式投資は値動きが気になる」という人にとっては、検討しやすい金融商品の1つです。

■金利が上がる時代だからこそ選択肢になる
長く続いた超低金利時代には、個人向け国債の利息に大きな期待を持つ人は多くありませんでした。

しかし、日本銀行による金利引き上げによって、状況は変わりつつあります。当然ながら、株式投資のような値上がり益を狙う商品ではありません。それでも、国が発行する債券であることや、金利上昇時に利息の増加が期待できることは大きな特徴です。

まずは100万円を運用した場合にどの程度の利息になるのかを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。数字で考えてみると、個人向け国債が以前より身近な存在に感じられるかもしれません。


文:田代 昌之(金融文筆家)
新光証券(現みずほ証券)やシティバンクなどを経て金融情報会社に入社。アナリスト業務やコンプライアンス業務、グループの暗号資産交換業者や証券会社の取締役に従事し、2024年よりフリー。ラジオNIKKEIでパーソナリティを務めている。
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