ゴミで悪かったな。
題名を見ただけで、嫌な思い出と怒りが同時に込み上げてきた。
物語は、大手広告代理店の就職面接のための控室から始まる。そこに集まったのは、ほぼ内定が決まった良家の子女ばかりだ。人生を甘く見ているとしか思えない戯言を交わし合う若者たちに、軽くイラつきながら読み進めていくと、大変なことが起こる。控室にやってきた男に渡された飲み物を口にした学生たちが、次々に嘔吐して倒れたのだ。
ほぼ同時刻に、都内にある電力会社で三十代の男性社員が侵入した不審な男に刺されるという事件が起きる。男は一度逃走したものの、通行人の女性を人質にしてビルに戻り、立てこもった。
「おれはな! 一九七三年の九月生まれだ!」「おれたち世代から奪ったもの、全部返せ! 返してくれよ! これがおれの要求だ!」
そんなこと、やっていいわけがない。返せっていったって、もう時間は戻らないんだよ。そう思う一方で、氷河期世代の味わってきた理不尽を凝縮したような犯人の演説に、共感せずにはいられないのだ。そうそう、もっと言ってやれ!という気持ちが沸いてくる。そんな自分に嫌悪感と恥ずかしさも沸いてきて、心の中が忙しい。
二つの事件にはもちろん関わりがあり、犯行には複数の人物が関わっている。彼らの辿ってきた人生が少しずつ明かされていく。何が目的で事件を起こしたのか。いくつものどんでん返しがあり、登場人物たちの意外な一面に驚かされ、緊張がほぐれる瞬間がない。そして、冒頭からは想像できなかったラストが読者を待っている。
氷河期世代にはもちろん、誰かのことをよく考えもせずに「自己責任でしょ」「能力が低かっただけ」と嘲ったことのある人にも、ぜひ読んでほしい小説だ。
(高頭佐和子)