特別な思いを抱き合うふたりの女性の関係を描いた小説である。デビュー作『あなたの四月を知らないから』を読んだ時、登場人物の個性や感情の細やかな描写が心に響く作家だと思った。

二作目となるこの小説でも、その魅力を味わうことができる。

 物語は、主人公・藤原六花(リッカ)の中学時代から始まる。リッカは、同じクラスの女子生徒・舘村曜(ヨウ)に特別な感情を抱いていた。3年生になり別のクラスになってしまったが、毎日メールでやりとりをする関係である。久々にふたりで過ごす放課後、甘やかな思いに胸がいっぱいになっているリッカに、ヨウは3ヶ月後に転校すると告げる。

 あっさりとした態度にショックを受けたリッカは、寂しさから同級生の男子と付き合うことに決める。そのことが原因で友達との関係がこじれ、ヨウに打ち明けることもできず距離ができてしまう。だがヨウは、クラス内で孤立してしまったリッカを守ろうとしてくれていた。「いちばん大事な友達」という言葉を残してヨウは去っていき、数年後には連絡も取れなくなってしまう。

 15年の月日が流れ、ふたりは再会する。リッカは故郷を離れ、東京で小さな会社のデザイナーとして、尊敬できる上司のもとで働いている。リゾートバイトを転々としていたというヨウは、コロナ禍の影響で仕事も住む場所もなくし、大きな問題を抱えていた。

 「感覚が、好みが、見ているものが、ヨウとわたしはごく自然に一致する」

 そんな思いからヨウへの特別な気持ちを高まらせ、周囲に流されない強さに憧れ、自分もそうありたいと願うリッカ。その強い思いは会わなかった15年間を埋め、苦境に陥ったヨウを助けたい、一緒にいたいという感情に繋がっていく。リッカとヨウ、それぞれの人生に、そしてふたりの関係に、さまざまな出来事が起こっていく。

 リッカの目と耳に入る光景や音、何気ないヨウのしぐさや声、身体で感じるさまざまなこと。それらを著者は繊細に表現し、変わらない思いと複雑な思いの間で揺らぐ心を、読者に体感させてくれる。誰かを大切に思い、幸福を願い、一緒にいたいと感じるその気持ちを、決められたいくつかのカテゴリーに分類する必要があるのだろうか。読み終えて、そんなことを思っている。

(高頭佐和子)

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