2024年9月、私立大学を取り巻く厳しい状況を示す数字が発表されました。日本私立学校振興・共済事業団によると、2024年度の入学者数が入学定員を下回った私立大学の割合は、過去最高の59.2%に達しました。
加えて、財務省が2026年4月に財政制度等審議会の財政制度分科会へ提出した資料では、2040年までに私立大学を少なくとも約250校減らす必要があるとの試算が示されました。また、学生10万人当たりの高等教育機関数を欧米主要国などの平均水準に近づける場合、約400校減らす試算も示されています。地方や小規模の大学の中には、学生募集や経営面で厳しい状況に置かれているところも。
皆さんの中には、「定員割れするような大学は淘汰されて当然」「少子化が進んでいるのだから大学の数も適正な規模まで減らすべきだ」と考える人もいるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。
「今後の日本には人気のある大規模大学や有名大学だけが残ればよいのだろうか。学生を集めることに苦労している大学を、私たちは消えるに任せておいてよいのだろうか」(本書より)
こう疑問を投げかけるのが、今回紹介する『崖っぷちの私立大学 偏差値で測れない価値をどう見抜くか』です。
本書では、10年をかけて200校以上を歩いた記者が、各地での取材とデータをもとに、地方大学や小規模大学が持つ価値や可能性を改めて問い直しています。
地方では、富山県の高岡法科大学が2025年度以降の学生募集を停止しました。また、三重県松阪市にあった三重中京大学は、2010年度から学生募集を停止し、2013年に閉学しています。
そして首都圏においても、少子化の影響を受けて厳しい状況に置かれている私立大学は少なくありません。特に、学生募集の停止や共学化に踏み切る女子大学が相次いでいることは、各大学の発表や報道でも伝えられています。
こうした大学淘汰の現状を伝える一方、知名度は全国区ではないものの、さまざまな教育の工夫や面倒見の良さによって、学生たちが驚くべき成長を見せる「知る人ぞ知る」大学も本書では取り上げています。
ほぼすべての授業が英語でおこなわれる国際教養学部を有する宮崎県・宮崎国際大学、進学校の進路指導教諭を対象とする「面倒見が良い大学」の調査で、21年連続全国1位となった石川県・金沢工業大学、1年次からゼミや少人数形式の授業を実施している東京都・武蔵大学などです。こうした大学の特色や取り組みを知ると、「知名度の低い小規模大学に存在価値はあるのか?」と考えていた人も、見方を改めるかもしれません。
さまざまな事情から高校までに十分な学習機会を得られなかった人もいれば、高校生のうちに勉強の楽しさを実感できなかった人もいることでしょう。大学で教職員らがじっくりと相談に乗り、学びを支えることで、少しずつ自分に自信を持てるようになり、初めて学ぶ喜びを感じる学生もいると本書では紹介されています。そしてそれは、小規模大学が持つ価値や可能性の一面と言えるかもしれません。
18歳人口の減少がさらに加速すると見込まれる「2035年の崖」を前に、政府や社会は小規模大学や地方大学に対してどのような対応をとるべきなのでしょうか。本書を読むと、偏差値では測れない大学の存在意義や価値について、改めて考えさせられるのではないでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]