スーパーではゆっくり買い物をしてしまい、ドン・キホーテではつい予定外の商品までカゴに入れてしまう――。その背景には、店舗が流すBGMのテンポが関係しているかもしれません。
○心拍数すらコントロールする「ドン・キホーテ」のBGM
あなたは今日、どんなリズムで歩いていましたか。
街を歩くとき、店に入ったとき、私たちの脳は無意識のうちに聞こえてくる楽曲のテンポ(BPM)に合わせて、心拍数や歩行速度を調整しています。これは「行動同調」と呼ばれる、抗いがたい生物学的な反応です。
しかし賢い経営者たちは、ただ心地よい音楽を流しているわけではありません。彼らはビジネスモデルに合わせて、あなたの脳にブレーキをかけたりアクセルを踏ませたりして、利益を最大化しているのです。スーパーやデパートでスローテンポの曲が流れているのには理由があります。
マーケティング学者のロナルド・ミリマンの実験によれば、スローなBGMを流すと客の歩く速度が遅くなり、売上が約38%増加しました。ゆっくり歩くことで視線が商品棚に留まる時間が長くなり、理性的な判断の範疇で「ついで買い」が増えていくのです。BGMは滞在時間を引き延ばすブレーキとして機能しています。
一方で、薄利多売のファストフード店ではアップテンポな曲が流れています。ゴールは「回転率を上げる」ことだからです。
人間の脳は、外部から一定のリズムを与えられると、心拍や呼吸といった生体リズムを自動的にそのテンポに合わせて同期させようとします。つまり、店側はあなたの耳を通じて、自律神経のコントロールパネルに直接アクセスしている状態なのです。
では、ドン・キホーテのようなディスカウントストアはどうでしょうか?
ここでの狙いは「興奮」です。アップテンポでループする音楽と圧縮陳列による情報の洪水は、脳の処理能力に負荷をかけます。すると理性を司る「前頭前野」の働きが一時的に鈍り、感情的な発散によるドーパミン主導のモードに切り替わります。衝動買いのハードルを下げるために、あの騒がしいBGMは不可欠なのです。
じゃあどうする?~BGMの意図に気づき自分のペースを死守する~
・店に入ったら立ち止まって「耳」をすませる
「ゆったりさせている」「急かしている」など、店の意図に気づくことが防衛策になります。
・ノイズキャンセリングイヤホンを活用する
買い物中は自分の決めたプレイリストを聞くか無音状態にして、店舗側の行動同調の罠から脳を守ります。
○『最新科学が解き明かした お金と脳の残酷な真実』(菅原道仁/秀和システム新社)
本書は、人気脳神経外科医である著者が、最新の脳科学の知見をもとに、私たちの脳がいかにしてお金の罠に陥るのかを解説する一冊です。浪費、投資、節約、依存といった日常のリアルな場面において、脳内でどのようなエラーが起きているのかを紐解き、自動的にお金が貯まる実践的なアプローチを提示します。











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