誰かに「頑張れ」と言うことの難しさ
山奥のシェアハウスを舞台に、過去の傷や生きづらさを抱える若者たちが不器用ながらも支え合い、“自分らしい生き方”を取り戻していく姿を描く日本映画専門チャンネルのオリジナルドラマ『がんばって、がんばらない』(7日21:00~ほか)。仕事を“がんばりすぎた”末に心を壊した日奈役で映像作品初主演を果たすBEYOOOOONDSの平井美葉と、 “がんばれない”自分への焦りを抱えてシェアハウスにやって来る大悟を演じる高野洸が、インタビューに応じた。作品を通して「がんばること」と向き合った2人。
○“頑張りたいけど頑張れない”役に重なった自身の経験
台本を読み、まず「温かさ」を感じたという平井。「日奈の過去に共感する部分があり、自分が演じさせていただく意味のようなものを感じました」と、主演を任された喜びを振り返る。
日奈は、仕事を頑張りすぎたことで心を壊し、山奥のシェアハウスで穏やかな日々を送る女性。平井自身も、「一時期、心と体が同じ方向を向いていないような感覚がありました。大好きなパフォーマンスに対しても、不安な気持ちになったり、怖くなったりして。“頑張りたいけど頑張れない”という感覚は、すごく共感できました」と、日奈の苦しみに通じる経験を明かした。
一方の高野も、登場人物たちの持つリズムや、物語を包む柔らかな空気にひかれたという。大悟がシェアハウスへ来るまでの過去は、劇中で細かく描かれていない。それでも、目の前のことに素直に取り組めず、考え込んでしまう姿から、「視野が狭まっている状態なのではないか」と想像を膨らませた。
○「頑張る」という言葉への解釈が深まる
タイトルに使われる「がんばる」という言葉について、平井は「生きていく上で、頑張ることからは逃れられない」と受け止めるが、それはポジティブな意味だけでなく、時には人を苦しめる言葉にもなる。だからこそ、今作が提示する「がんばらない」という選択肢に心を動かされた。
「頑張ることも、頑張らないことも、自分が選べる権利なんだということ。この作品を通して、『頑張る』という言葉に対する解釈が深まりました」(平井)
高野も、「頑張れ」は自分自身には気軽に言える一方、誰かに向けて口にするのは難しいことがあると指摘。それでも、さまざまな意味や受け取り方を含め、「素敵な言葉だと思います」と捉えた。
初の映像主演、初の女性役…監督から教わった芝居の“余白”
ドラマ初出演の平井は、女性役を演じること自体も初挑戦。「これまでハロー!プロジェクトの舞台で演じさせていただいた役は、すべて少年や青年だったんです。どう演じればよいのか本当に分からなすぎて、監督に相談しました」と打ち明ける。上坂龍之介監督からは、台本に描かれたやり取りだけでなく、「自分がその場で感じたことを言ってもいいし、あえて何もしなくてもいい」と助言を受け、その先にある“余白”を大事にするよう伝えられたそうだ。
高野も、登場人物が急がず、ゆっくりとした空気の中で過ごすことを意識。すべての出来事に明確なリアクションを返すのではなく、感情を内側に残すような芝居を心がけた。
そんな2人の撮影初日は、渓流近くの非常に寒い場所でのシーン。平井は、共演者たちを前に緊張し、「本当に芸能人だ!」と圧倒されていたという。
寒さと緊張で震える平井は、積極的に声をかけてくれた高野に「優しくて、ありがたいと思いました」と感謝。高野も、カイロを仕込んでいても震えるほどの寒さだっただけに、「話しかけて場を少しでも温められればと思って。
一対一での芝居を不安に感じていた平井にとって、高野は頼もしい共演者だった。
「私が芝居で投げたものを受け取ってしっかり返してくださる。それを日奈として考えて、また返すことができたので、すごく演じやすかったです。先輩として引っ張ってくださり、多くのことを学ぶことができました」(平井)
高野は、平井の芝居について、「日奈はいろいろなものを抱えているけれど、人前では明るく振る舞っている。それがすごく感じられて、素敵だなと思いました」といい、気配りや周囲への優しさが、演じた人物像にもにじんでいたことを印象深く語った。
○電波も届かない山奥で縮まった“シェアハウスの住人”の距離
物語の中心となるシェアハウスの撮影は、実際の古民家が使用された。電波もあまり届かない山奥の環境が、出演者たちの距離を自然に縮めていったようだ。
休憩中は安井謙太郎が押し入れから見つけたトランプで遊び、こたつを囲んで話し、部屋にあったギターを手に取るなどしていたという。あまりの盛り上がりに、別の場所で撮影していたスタッフから「本番回っていますよ!」と注意されたことも。
撮影期間は決して長くなかったが、平井は「シェアハウスの住人たちとしての距離感を、そこでつかめたような感覚がありました」と振り返る。
高野は、余裕のないスケジュールの中でも、「全員で乗り越えようという温かい気持ちがありました」と回想。
多忙な2人が見つけた、それぞれの休み方
多忙な日々を送る中で、2人はどのように気持ちをリフレッシュしているのか。平井は、プライベートでもボイストレーニングや体のメンテナンス、トレーニングに時間を費やし、「基本的には、ずっと仕事のために生活しています」と話す。思い立ったときには、スマートフォンの電源を切り、自然の多い公園を散歩することも。それでも、最もリラックスできるのは、BEYOOOOONDSのメンバーと過ごす時間だといい、「みんなと話しているときが、すごくリフレッシュできます」と声を弾ませた。
対する高野は、「ひと息つく時間」を大切にしているという。「カードゲームをすることが多いです。自己満足のためにやっている時間ですが、勝負に勝ったときの楽しさや気持ちよさがあります。ゲームに救われています」とのことだ。
新メンバーを迎えるにあたって学んだ“人との距離”
本作の撮影後、BEYOOOOONDSには新たなメンバーが加わることになった。初めて直属の後輩を迎えるにあたり、平井ら先輩メンバーは、どのように新メンバーと接するべきか話し合ったという。
それぞれ経歴が異なる中で、その差を無理になくそうとするのも違う。
「頑張れ」という言葉をむやみに人へかけることが難しい時代でもある。そんな中、平井は元野球選手・イチロー氏の「普段の半分の力しか出せなくても、その時出せる100%を出す」という考えに感銘を受けたという。公演ごとにコンディションが異なる中でも、そのときの自分に出せる力を尽くすという考えは、大きな支えになった。
高野も、様々な場面で年長者や先輩の立場になる機会が増えているが、「教える側も頑張っている」とした上で、「お互いに思いやりを持って、それぞれのリズムを感じながら、適度に頑張りすぎないことが大切だと思います」と強調した。
“がんばること”も、“がんばらないこと”も選んでいい。誰かと同じ速さで進む必要もない――作品が描くメッセージは、演じた2人自身の現在にも、重なっていたようだ。











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