夏休みや年末年始など、多くの人が利用する新幹線。長時間を同じ車内で過ごすからこそ、一人ひとりが周囲に配慮しながら過ごすことが求められる。
しかし、なかには、自分勝手な言動で周囲を困らせる乗客に遭遇することもある。
 今回は、新幹線で非常識な乗客に困惑しながらも、思わぬ結末が待っていたという2人のエピソードを紹介する。

「座席が邪魔なんだよ!」突然怒鳴り始めた男性

「邪魔なんだよ!」新幹線で座席を蹴ってくる後ろの男性…恐怖に...の画像はこちら >>
 2年前の夏、お盆休みに帰省するために新幹線に乗っていた高木真希子さん(仮名・20代)は、混雑を見越して窓側の指定席を予約することに。読書をしながら、ゆっくり過ごそうと思っていた。

 発車してからしばらくしてリクライニングを倒そうとした、その直後……。背中に「ガンッ」という強い衝撃が走った。

「後ろの人の荷物が当たったのかなと思ったんです。でも、その後も何度も背中を蹴られるような衝撃が続きました」

 振り返ると、後ろの席に座る男性が、前の座席を足で押していたという。高木さんは冷静に「すみません。座席を蹴るのはやめていただけませんか」と声をかけた。

 ところが男性は突然「うるせぇな! 狭いんだよ! 座席が邪魔なんだよ!」と、車内中に響くような大声で怒鳴り始めたのだ。周囲の視線が一斉に集まり、高木さんは恐怖で身を縮めるしかなかった。

強面男性が放った一言に起こった拍手

 重苦しい空気が流れるなか、体格のよい男性が立ちあがった。男性は怒鳴ることもなく、落ち着いた声でこう言ったそうだ。


「いい加減にしろ。見ていて気分が悪い。子どもじゃあるまいし、そんなことをして何が楽しいんだ。大人しく座っていられないなら降りろ」

 するとさっきまで怒鳴っていた男性は一転して静かになり、次の停車駅で降りたという。

「その強面男性の言葉には迫力がありました。車内のみなさんもホッとしたような雰囲気になって、小さく拍手する人もいましたね。男性が声をあげなかったら、どうなっていたかわかりません」

 高木さんは「勇気をもって助けてくれたことは、今でも忘れられません」と振り返った。

車内では大声…女性が目撃した“当然の結果”

 出張で新幹線を利用していた佐藤由紀さん(仮名・50代)は、発車して間もなく、前方の席から外国人らしき男性の大きな話し声が気になったという。

「仲間同士で少し話しているだけなら我慢しましたが、ずっと大きな声で話し続けていて、車内中に響いていました。英語で『Be quiet, please』と言おうかとも思いましたが、相手は男性でしたし、トラブルになるのが怖くて結局言えませんでした」

 周囲を見渡すと、多くの乗客が迷惑そうな表情を浮かべていたものの、誰も注意しようとしなかった。

 佐藤さんは「海外から日本へ来てくれるのはうれしいです。ただ、新幹線などでは周囲への配慮もしてほしいと感じました」と話す。

改札で困っていても誰も足を止めなかった

 目的地に到着し、新幹線を下りた佐藤さんは驚いた。


 車内でずっと大声で話していたのは複数人ではなく、ひとりだったのだ。おそらく電話していたのだろう。

 そして、その外国人男性は、自動改札の前で駅員に身振り手振りを交えながら何かを訴えていたようだ。結果的に佐藤さんと同じタイミングで改札を出たが、その男性は出口がわからない様子で周囲を見回していたという。

「困っているにもかかわらず、車内で迷惑そうにしていた人たちは、誰も声をかけませんでした。もちろん、私もそのうちのひとりです」

 本来であれば、困っている人を見かけたら助けたいという気持ちがあった。それでも佐藤さんは「車内であれだけ周囲への配慮がなかった姿を見てしまうと、自然と声をかける気持ちにはなれませんでした」と振り返る。

「少しでも気づかう様子があれば、きっと誰かが助けていたのだと思います。普段の言動は、巡り巡って自分に返ってくるものなんだと思いました」

 そう思いながら駅を後にした佐藤さんは、「少しだけ胸のつかえが消えました」と話した。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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