テレビアニメ『名探偵プリキュア!』で、長く謎に包まれてきたキュアエクレールの正体が、心優しきパティシエ・帆羽くれあであることがついに明かされた。「キュアエクレールの正体は誰!?」という予想企画は、子どもたちから声優仲間にまで広がり、演じる長谷川育美は答えを知りながら、その秘密を守り続けてきた。

今回、くれあと特別なつながりを持つキュアアルカナ・シャドウ/森亜るるか役の東山奈央と対談。前編では、正体発表までの反響をはじめ、“本当に優しい女の子”から凛々しいプリキュアへとつないだ芝居、初めての変身口上で知った難しさ、そして演じるほどに愛おしさを増したキャラクターとおとも妖精たちの魅力を語ってもらった。

【写真】『名探偵プリキュア!』帆羽くれあ&森亜るるか登場シーン(10枚)

■子どもたちから声優仲間まで夢中に 広がる反響と“キュアエクレール予想”

――放送開始から約半年がたちました。作品や演じるキャラクターについて、周囲からはどのような反響が届いていますか?

東山:プリキュアショーを観に行かせていただくと、お子さんたちがそれぞれの“推しプリキュア”の格好で来てくれているんです。プリチュームを着ていたり、しまむらさんのTシャツでおめかししていたり。思い思いの姿で楽しんでくれているのを見るたび、作品がしっかり届いていることを実感して、すごくほっこりします。これからキュアエクレールの格好をした子も増えていくのかなと思うと、それも楽しみですね。

キュアアルカナ・シャドウについては、お子さんが「さあ、迷宮へ誘いましょう」と、ウィスパーボイスでまねしてくれるというお話を、たびたび耳にします(笑)。友人のお子さんの動画を送ってもらうこともあるのですが、あまりのかわいさに、もだえています。

長谷川:私がキュアエクレールを演じていることは、その時点ではまだ発表されていなかったのですが、「4人のうち、いったい誰なんだ?」と予想が盛り上がっていて、友人からもたくさん連絡をもらいました。

ある友人は子どもを持つお母さんで、ずっと「キュアエクレールは長谷川なの?」と聞かれていたのですが、もちろん答えられないので、「いや、言えないよ」と返していました。すると、「私は長谷川だって信じているからね」とまで言われて(笑)。


そして第23話の放送直後、その友人から「私のきらめきに従った」というセリフテロップの付いた場面写真とともに、「私は確信した!」という熱いメッセージが届いたんです。それでも私は、「いや、まだ分からないよ」と返していました(笑)。お子さんと一緒に見てくださっているお母さんたちをはじめ、本当にさまざまな方から反響をいただきましたね。

業界内でも、声優仲間や、これまでお世話になったスタッフさんから「プリキュアなんですか?」と聞かれることがたびたびあって。そのたびに、「いやあ、どうでしょうね……」と濁していました(笑)。

先輩プリキュアの皆さんからも聞かれました。高橋ミナミさん(「高」の正式表記ははしごだか)は、別の現場で顔を合わせるやいなや、すぐ私の隣に来て「プリキュアなの?」と。大久保瑠美さんからも聞かれましたが、ずっと「いやあ……」と隠し続けていました。

これだけ注目していただけることはうれしかったのですが、反響が大きい分、隠し通すのは本当に大変でした。私だって言いたかったんですよ!(笑) 毎回ドキドキしながら「どうでしょうね」と返していました。でも、それだけ業界の方々からも注目されている作品なんだと、改めて実感しましたね。

――そこまで大きな注目を集めたキュアエクレールの正体ですが、長谷川さんと東山さん以外のキャストにも伏せられていたそうですね。


東山:そうなんです。そんな中、ウソノワール役の日野聡さんは、ずっとキュアエクレールになりたがっていて(笑)。

長谷川:本当にずっとです。キュアエクレールの正体がまだ明かされていない頃から、「いや、まだ俺の可能性がある。俺かもしれない」って(笑)。

東山:「仮面を取ったら、俺の中からキュアエクレールが出てくるから」とおっしゃっていました(笑)。キュアエクレールではないと分かってからも、「いや、でもまだシュシュタンが……」と。全然諦めてなかったんですよ(笑)。

■「心のきらめき」に従って くれあからキュアエクレールへつないだ芝居

――くれあがキュアエクレールへとつながっていく人物であることを踏まえて、これまでのお芝居で特に大切にしてきたことはありますか?

長谷川:私は最初から、くれあがキュアエクレールになることを知っていました。でも、くれあ自身にはその記憶がなく、ひとりのパティシエとして日々を過ごしていたんです。だから、キュアエクレールとしての記憶を取り戻すまでは、まず“本当に優しい女の子”であることを大切に、素直に演じていました。

キュアエクレールとして目覚めてからは、そこにプリキュアとしてのたくましさや凛々しさが加わりました。
ただ、根底にあるくれあらしさは変わりません。彼女は「心のきらめき」に従って生きる、とてもまっすぐな子。自分の気持ちをきちんと言葉にして、相手へ届けることができるんです。

だから私も変に深読みせず、くれあの言葉と感情を信じて、一緒に「心のきらめき」に従っていく。そうすれば、自然とくれあ、そしてキュアエクレールになれるような感覚がありました。役づくりで深く迷うというより、彼女のまっすぐな心についていくような感覚でしたね。

――変身シーンでは、口上も披露されました。実際に演じてみて、どんな難しさを感じましたか?

長谷川:変身シーンを演じている皆さんも同じだと思うのですが、変身に入るまでの気持ちの持っていき方が、実はものすごく難しいんだと最近になって分かりました。

これまでは皆さんの変身シーンを、「楽しい! 見られてうれしい! かわいい、かっこいい!」と、呑気に楽しんでいたんです(笑)。あまりにも自然に演じられているので、その難しさに気づいていませんでした。でも、いざ自分が担ってみると、「オープン!」と言うまでの心の運び方が本当に難しくて。

変身に至るまでの物語や、キャラクターが抱えている感情は毎回違います。
その流れから、どのくらいのテンションで「オープン!」へ向かえばいいのか。一方、映像には毎回共通して使われる変身バンクがあります。完成された映像から大きく外れないようにしながら、その回で積み重ねてきた感情もきちんと乗せなければならない。そのバランスに、「変身の口上って、こんなにも考えるものだったんだ」と驚きました。

初めての変身では、私自身も気合が入っていましたし、キュアエクレールにとっても、ようやく復活して「ウソノワールを倒すぞ」と気持ちを高める場面でした。初変身ということもあって、最初の「オープン!」にかなり力を込めてしまったんです。

そこで、実際の絵を見せていただきながら、「この映像に合うくらいの気持ちまで調整してください」とディレクションをいただき、少しずつ合わせていきました。初めて変身バンクを演じたときに、変身のお芝居の難しさと奥深さを痛感しましたね。

一方、「きらめきタイム」は、変身バンクに比べると少し自由度があります。凛々しく言うときもあれば、優雅に、華やかに表現するときもある。その回ごとに少しずつ変えているので、ぜひ、そうした違いにも耳を傾けていただけたらうれしいです。

■演じるほどに愛おしくなる くれあとるるか、それぞれの素顔

――ここまで物語を重ねてきて、お二人がそれぞれ「この子が好きだな」と感じるのは、どんな瞬間ですか?

長谷川:正体が明かされる前から、プリキュアであることを抜きにしても、くれあの人としての魅力はたくさん描かれていました。
私のほうがくれあよりもずっと年上なのですが、「この子、人間として出来上がっているな」と感じるくらいで(笑)。

もちろん、これまでの経験や育ってきた環境が、彼女をそうさせた部分もあると思います。それにしても、「くれあってすごいな」と何度も驚かされました。

特に印象に残っているのが、第17話で、落ち込んでいるあんなに言葉をかける場面です。一つひとつ悩みを聞き、それを自分の中で受け止めてから、パティシエである自分の言葉に置き換えて伝える。「ケーキだったら……」と例えながら、あんなの心にきちんと届く言葉を選んでいるんです。

ただアドバイスをするのではなく、相手が受け取りやすい形にして手渡す。もう一歩先の伝え方ができることに、「なんでこんなことができるの? 何なんだ、この子は!」と思うくらい、すごさを感じました。

そんな積み重ねがあったからこそ、キュアエクレールになってから見えてきた、少し抜けているところが、またいい味を出しているんです。「それはずるいよ!」って(笑)。あれだけしっかりしているのに、そんな一面まである。そこで、もう余計に好きになりましたね。


東山:るるかは本当にミステリアスで、口数も少ないのですが、だからこそ「もっと彼女のことを知りたい」「今、何を考えているんだろう」と、いつも気になる存在です。

マシュタンとの掛け合いにも、すごくほっこりします。マシュタンはしっかり者で、るるかに対してお姉ちゃんのように振る舞うこともありますが、たまに少しおっちょこちょいなところがあって(笑)。そんなとき、るるかが「マシュタン……」とたしなめる。あの二人の関係も、本当に唯一無二だと思います。

お互いを大切にしていることが、いろいろな場面から伝わってくるんですよね。マシュタンはるるかを信じ、その決断に黙ってついてきてくれる。その信頼が、るるかにとってどれほど心強かったんだろうと思います。

同時に、張り詰めているるるかに対して、マシュタンからは「私がるるかを守るんだ」という思いも伝わってくる。二人の間に流れる温かさに触れるたび、ミステリアスな姿の奥にある、るるかの優しさが見えてきて、ますます好きになりますね。

――くれあのおとも妖精・シュシュタンには、どんな魅力を感じていますか?

長谷川:シュシュタンもかわいいですよ。もう、本当に赤ちゃんで(笑)。見た目は赤ちゃんなのに、すごく賢い。その組み合わせに、くれあのおとも妖精らしさを感じます。

あんなに小さくて、「でシュ、でシュ」と話しているのに、いろいろな知識を教えてくれるんです。しかも、「こういうこと、知ってまシュ!」と、意気揚々と披露してくれる。その姿を見るたびに、「賢いね、かわいいね」となります(笑)。赤ちゃんらしい愛らしさと賢さをあわせ持っているところが、とても魅力的です。

東山:少し話がそれますが、シュシュタン役の礒部花凜ちゃんは、『ゴープリ』(『Go!プリンセスプリキュア』)でオープニング主題歌を歌っていたんですよね。日野さんも同作で敵の幹部を演じていて、私も妖精役で出演していました。11年前には、まさかこんな未来が待っているなんて思っていませんでした。主題歌を歌っていた花凜ちゃんが、今はキャストとして同じアフレコ現場にいる。こうして11年越しにご一緒できていることが、なんだかうれしいですね。

(取材・文:吉野庫之介)

 テレビアニメ『名探偵プリキュア!』は、ABCテレビ・テレビ朝日系列全国24局ネットにて毎週日曜あさ8時30分から放送。

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